第23話 シイラとの合流

「シイラ! あなた一体何と戦ってるの?」

「アコ? どうやってここに? さっきまで気配も何もなかったのに」


 そう、そこにいたのは考古学マニアのシイラだった。彼女もまた独自の方法で遺跡を探索しており、その道中で何かをやらかしてしまったらしい。その代償として、遺跡の守り人と戦う羽目になってしまったようだ。

 と、状況は分かったものの、さっきまでボッチだったのもあって、ようやく会えた仲間に嬉しくなったアコはその気持ちを暴走させる。


「良かった、会えたーっ!」

「うわっ、どうしたのっ!」


 剣を構えてガーディアンと対峙していたシイラに向かって、彼女は思いっきり抱きついた。この状況にシイラは困惑する。そうして、そんな隙を見逃してくれる程ガーディアンもまた甘くはなかった。

 自動的に動くこの侵入者撃退用人形は、突然現れたこの異物の方に攻撃対象を変更する。その微妙な気配の変化に気付いたシイラは、くっついているアコを強引に引き剥がした。


「どいてっ!」

「えっ……」


 拒絶されると思っていなかった彼女は、シイラの行動の意図をすぐには理解出来なかった。

 けれど次の瞬間、無防備状態になってしまったシイラに向かって剣が振り下ろされたのを見て、アコは叫ぶ。


「危ないっ!」

「くうう……っ!」


 何とかすぐに体を捻って最小限に抑えたものの、ガーディアンの攻撃を受けてシイラは負傷する。

 それで助けられた事を自覚したアコは、すぐに彼女のもとに駆け寄った。


「逃げよう!」

「えっ、でも……」

「利き手を怪我したら無理だよ。ここは離脱してまた別の道を探そう」


 アコはシイラの手を握ると、この場から離脱するために思いっきり走り出した。どこにそんな力があるのかって言うくらいに。


 一方、ガーディアンの方は守るべき範囲が狭かったのか、ある程度離れるともう襲ってはこなかった。きっとあのエリアのその先には貴重なお宝みたいなのがあるのだろう。

 今回はまだ力が足りなかった。攻略はもっと経験を積んで仲間を揃えてからだなとアコは逃げながら考える。


 必死になって走る2人。その道中でシイラが突然アコの腕を引っ張った。


「ねぇちょっと!」

「何?」

「どこに向かって走ってるの?」

「え?」


 この質問で我に返ったアコは、顔から血の気が引いていく。ガーディアンから逃げる事しか考えていなかった彼女は、ただ逃げられそうな道を直感で選んで夢中で走り抜けていたのだ。

 追いかけてくる敵がもういない事を確認した2人は、取り敢えず走るのを止める。


「ごめん、勘で走ってた」

「だと思った。アコもこの遺跡初めてだもんね」

「てへへ……」


 適当に走っていた事を許されて、アコは何かをごまかすように頭を掻いた。そうして、落ち着いたところでシイラは怪我をした腕の治療をする。

 持参していた魔法の回復軟膏を塗ったところ、すぐに傷は回復した。どうやら受けたダメージも浅かったようだ。彼女はすぐに回復した腕を振り回して調子を確認する。


「うん、いい感じ」

「良かった良かった」


 傷の治った様子を見てアコが軽く手を叩いていると、シイラはとある違和感に気付く。彼女が探索に夢中になってグループから離脱した時と今の状況では、何かが足りなかったからだ。

 シイラは額に手を当てると、素早く顔を左右に動かす。


「それで、もう1人は? 一緒じゃないの?」

「それが……私、トラップにハマっちゃって……」

「あちゃあ」


 その一言で全てを理解したシイラは、自分の額を軽く叩いた。そうして、改めてマジ顔になると、アコに向かって忠告する。


「ここは罠が多いから慎重に進もう。くれぐれも余計な事はしないでね」

「了解っす」


 注意を受けたアコは可愛らしく敬礼して、遺跡の探索は再開された。この時も探索リーダーは最初に話を持ちかけた当人ではなく、無難に探索を進めそうな雰囲気のあるシイラになっていた。

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