第19話 アコと仲間2人の即席パーティー
「おーっ! 新しい遺跡の調査クエストだっ!」
アコは張り出されたばかりの依頼書に目が釘付けになる。それはトレジャーハンターを本格的に極めようと頑張っていた彼女にうってつけの依頼。
すぐに情報を集め、今の自分にクリア出来そうな難易度かを真剣に吟味し始めた。
勿論アコ1人でクリアと言うのは不可能に近いだろう。まだ駆け出しの冒険者、知識も経験も何もかもが足りない。一緒に冒険をしてくれる仲間、それも自分の欠点をカバーしてくれる能力を持つ人を探し出してスカウトする必要がある。
アコはこの仕事を自分主導で行いたかったため、今まで一緒に冒険していたメンバーには敢えて声をかけなかった。彼らに声をかければ彼ら主導の探索クエストになってしまうのは目に見えていたからだ。
ギルドの待合室で人間観察をしていると、自分と趣味の合いそうな探索マニアの冒険者を発見する。そう言う人物が目に入る度にアコは目を輝かせてその動向を追いかけた。
合格条件は同じ依頼書に興味を持つか、自分の欠点をカバーしてくれそうかどうかのこの2点。流石に能力や人間性は話し合ってみないと分からない。
何人かのサイレント選別を経て、彼女のお眼鏡にかなったメンバーは片手に数えるほど。それらの人物に積極的に声をかけ、お互いに納得しあって供に冒険に出てくれる事を約束してくれたのは、年齢の近い2人の少女だった。
1人はアコと同じ考古学マニアのシイラで、とにかく話が合ったのが決め手。もう1人は冒険マニアでとにかくダンジョンとか未知の場所を攻略するのが好きなリル。遺跡攻略に必要なスキルを持っていて頼りになりそうなのでスカウト。
2人共アコの誘いに二つ返事で応じてくれた。こうして即席パーティは準備を済ませると、すぐに未知の遺跡に向けて冒険を開始する。
遺跡に着くまでに3人は会話を密にしてお互いの事を理解しようとした。冒険は連携も大事だからだ。そこで各メンバーの長所も短所も理解し合い、長所を活かし、短所をカバー出来る方法を探り合った。
この時点ではまだ自己申告なので、実際はそれとは違う結果も念のために想定しておかなければならない。ベテランパーティーと違って何重にも保険をかけないといけないのは、作りたてパーティのデメリットのひとつだろう。
経験を重ねる事でパーティーの結束も強くなると言うもの。お互いの認識がずれていれば、冒険の結果も最悪なものになる事も有り得る訳で、最初はお互いの相手を理解するのが本当に大事な作業となる。
「じゃあ、シイラもあの遺跡の事は気になってたんだ?」
「当然。遺跡への情熱はアコより上だから」
「へぇ、じゃあ古代のトラップとかあったら解除は任せた」
「古代文明への愛なら任せといて!」
アコとシイラは好みが同じと言う事で話が合いまくる。ただ、あんまり盛り上がるものだから、冒険でトラブルになった時の対処法とかは深く詰める事が出来なかった。この会話が楽しかったために、アコも大事な話し合いがちゃんと出来ていない事に気が付かない。
「私は冒険が好きです。まだマップも出来ていないようなダンジョンってワクワクしますよね!」
「う、うん……」
「特に知られていない遺跡って知られていないお宝や知られていない罠、知られていないモンスターとか……ワクワクして眠れませんっ!」
「す、睡眠はちゃんと取ろうね、うん……」
逆に冒険マニアのリルとの会話では、アコ側が終始押されっぱなしになってしまっていた。ただ、どんな状況になっても余裕で乗り越えてみせると鼻息荒く語るリルのその態度は、これから向かう場所で何が起こっても彼女がいればきっと大丈夫だろうと言う安心感があった。
2人共それぞれ別のパーティーで腕を磨いたと語っていたものの、その実績はしっかりとは把握出来ないまま――。
本来なら彼女達の元冒険メンバーに話を聞いて裏取りをするべきなものの、すぐに冒険に出たかったアコはその工程をすっ飛ばしてしまっていた。雑談をしながらの冒険は楽しく、遺跡までの道のりも体感時間ではほんの一瞬。
やがて3人はいくつもの山を登り、谷を越え、ついに未知の遺跡へと辿り着いたのだった。
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