トレジャーハンターの少女

第18話 トレジャーハンターの少女

 少女はファーランド大陸内のとある遺跡を彷徨っていた。この遺跡は一週間前の地震によって偶然入り口が発見された、ほぼ前人未到の謎の遺跡。

 正規の調査隊が組織される前に、中に何があるのか知りたいモノ好きな金持ちから探索の依頼がギルドに出ていたのだ。少女はすぐにその依頼に名乗りを上げ、2人の仲間と供に探索をしていた。


 ほとんど知られていない遺跡と言う事もあって、彼女はこの探索途中で仲間とはぐれてしまい、仕方なく1人知らない場所で出口を探して歩き続けていたのだった。


「ふええ~。またさっきと同じ場所だあ。正しい道はどこにあるのォ~」


 少女は探検の素人ではない。トレジャーハンターとしては駆け出しなものの、今までにもいくつものダンジョンを攻略して、攻略者の資格も得ていた。それでも今までの冒険は既に誰かが攻略済みの場所であり、マップさえもない遺跡の探索は今回が初めてだったのだ。


 彼女――アコ・ディラースは知られている場所ならばほぼ完璧に探索出来る才能を持っている。ただし、何も知らない場合は逆にトラップを発動させてトラブルメーカーとなってしまう迷惑な個性を持っていた。

 今アコが同じ場所をぐるぐる回っているのも、そう言うトラップを無意識の内に発動させてしまったからなのだ。


「一体どこから私はやってきたんだろう?」


 基本細かい事にこだわらない彼女も、10回以上同じ場所に出てしまうと流石にその異常さに気付く。このトラップ、歩く度に道が変わっていく壁が稼働する系のトラップなのだけれど、パニックになってしまったアコはその単純な仕組みにも気付けない。

 何度も通り抜けた目印を付けた壁面の前で疲れ果てた彼女は、その場でストンと座り込んでしまった。


「こう言う時は基本に立ち返らないとね、うん」


 無闇に動き回るのを止めて少し落ち着いた彼女は、顎に手を当てると遺跡に入る前後くらいからの事を慎重に思い返す。

 そう、ギルドで探索クエストを申し込んだその辺りにまで記憶の中を遡っていったのだ――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る