第12話 邸宅内での攻防戦

「ここか、確かにセランの言葉通りだったな」


 彼女は邸宅の前で腕をポキポキと鳴らすと、いきなり剣を引き抜き、そのまま正面から殴り込みをかける。この非常事態を前に、当然デラスの部下達が現れて彼女の暴走を止めようとする。その数は腕利きが10人程度。

 用心棒の時とは数が半分なものの、その腕はかなりの手練であり、簡単に通してはくれなかった。


「テメェ、どこの鉄砲玉だ!」

「俺はお前らのボスを捕まえに来たんだよ!」

「アホか! お前程度うぐっ!」


 手練ではあったけれど、1対1ならその実力はアレサの方が上。油断した1人が倒されたところで、部下達は戦い方を変え、チームワークを駆使してこの不審者を捉えようと躍起になった。

 アレサもまた強い相手と戦える事に興奮し、この戦いに熱中していく。


「さあどっからでもかかってこい!」

「舐めんな! やっちまえ!」

「殴り込みをかけてきた事、後悔させてやらァ!」


 長身の男がそのリーチを生かして斬りかかり、アレサはそれを紙一重で避ける。するとその動きを読んで退避先で小柄ですばしこい男がナイフを持った手を伸ばしてくる。この攻撃を剣で素早く払うと同時に男の腹部に蹴りを入れた。次に大柄な男が雄叫びを上げながら襲ってくるのを目にして、アレサはしゃがみ込むとその足を払ってこけさせる。

 混戦状態はその後も続き、1人の女剣士に男達は翻弄されていった。


「テメェ、やるじゃねーか」

「お前らのボスを倒すために来たんだ。この程度軽くあしらえないようじゃ話にもならねぇよ!」

「言ってくれるぜ! お前ら、本気でやれよっ!」

「おおーっ!」


 その後もアレサは1人ずつ丁寧に倒していき、倒れたデラスの部下の数は増えていく。数の利点がなくなっていく度に彼女の動きは加速度を増し、残り2人の男を倒したのはほぼ同時だった。


「ぐ……。まさかこんな事になるとは……」

「良し、これで終わり。ちょっと手間取ってしまったかな」


 部下も全員倒したと言う事で、アレサはパンパンと手を叩いて気持ちを落ち着けさせる。満を持してデラスの部屋に向かうと、そこにいるはずの小悪党の姿はどこにもなかった。

 誰もいない部屋に違和感を感じた彼女は、すぐにその部屋の窓から下を見る。


 すると、そこには後ろ手に拘束されたターゲットが見覚えのある男に連れられて歩いていた。その男の正体に気付いたアレサは窓から指を指して大声で叫ぶ。


「あーっ! セラン! どう言う事だ!」

「うん。アレサちゃんが騒いでいたおかげで簡単に捕まえられたよ。ご協力、感謝します!」


 彼はそう言うとわざとらしく敬礼してみせる。そう、セランもまたデラスを狙う同業者だったのだ。アレサに情報を流し、混乱させている間にボスを捕まえる計画だったようだ。

 上手く囮に使われてしまい、彼女は感情を爆発させて窓枠を何度も叩いた。


「そんなんアリかよォーッ!」

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