第一章 6話

スペア王国は、施設がある帝国の南の方に位置し、伝統文化を愛する国である。

昔ながらの町並みや料理は、人々を癒す休息の国であった。本屋には誰も読んだことのないような古書が並び、新聞やランプなども昔ながらの味が感じられる。


また、伝統を受け継ぐ弟子や子供たちは、知り合いや親戚が多く、人脈がとても広い。

そのため、気軽に伺えることから、土地が狭く、田舎のような場所であっても、人は絶えないのである。

陸軍の仲間たちは、そのスペア国の人々の優しさに触れたのか、よく楽しげな話が耳に入ってくるものだ。

ただ、夜に酒が飲めない所が欠点だ。と言っていた。酒を飲むと奴らは鍛えられた体があってか終始乱暴な行動を取る。そのため、近くに居たユージラやセザンヌに手を出すことがよくある。が、相手が悪い。ユージラは大人らしく受け流すし、セザンヌは見向きもしない。私にすればいいのに、とロイによく愚痴を言うのだが、いつも苦笑で終わってしまう。あいつといつもいることに問題があるのだろうか?

ユージラやセザンヌも、スペア国を愛する者の中の一人であり、お土産をよく貰う。...なぜそんなに休暇がもらえてるのか?

理由は至って簡単。戦闘要員と違い、短時間で緻密な作業を主に行う医療系要員と、細やかな作業を素早く行う必要があるサポート要員は、時間をかける必要がないとされ、私達戦闘要員よりも早く一日を終えることが出来るのだ。


私も、そこの珈琲は好きなので、国王の防衛を以外と楽しみにしていたりもして。

食事のみに限るが。


小さなバックに最低限のものを入れ、書類を改めて確認する。



…スペア王国のシルク国王の護衛。

二年前の国王即位の日に、私は彼に会ったことがある。確かあの時は休日にロイと御菓子目当てで来たんだったか。

御菓子を特に愛する国王であったが、細身の体に冷たい青い瞳を持っていた。

ただ、御菓子を食べるときや国民の人と会話をするときの表情は、想像できるようなものでない。

ギャップ、というのがあるのだろうか。


伝統を守るため、ということから警備を軽くしているのはスペア王国の規則であり破ってはいけないものである。それを一番言っているのは王国の国民であった。


なんと、私達の部隊を事前に知っていた国民が、我々帝国に依頼してきたというのだ。

国王でなく国民が依頼するのは異例なことだが、とてもスペア国らしいと思う。

なんて心配性な国民なんだ。


時刻はまもなく就寝時間を迎える。

明日は早い出発となる、二人はもう眠っているようだ。窓の外は少し雲がかかっていて、隙間から星空が見えている。

ここが戦場なら、こんな空は見ることが出来ない。




少し痛む左目を、包帯越しに押さえながら、三編みをほどくや否や、私は深い眠りについた。

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