第一章 3話
「諸君!貴様らは…」上官のスピーチが響き渡るが、一体どれ程の人たちがこのスピーチを真剣に聞くのだろうか。
朝の朝礼には訓練兵全員が参加することになっている。私含めた3人も、ここの訓練兵だ
ここ、エデン軍事施設教育場は、帝国最大の軍事施設といっても過言ではない。
皆、様々な分野において訓練を進め、戦場で美しく散っていく仲間であるのだ。
国籍も、人種も様々である。
しかし、それを気にする者などいない。
私達が戦う敵は、少なくとも”人間”でない。
ふと、親友から聞いた昔話を思い出した時、いつのまにか上官の声は止み、辺りは話し声と軍靴の音でいっぱいになっていた。
朝礼が終わると、生徒は各場所に行くようになる。
ユージラは医療、工作要員、
セザンヌはサポート、武器支給要員だから、唯一の戦闘要員であるボルネシアは、ある青年と共に陸軍強化施設の食堂で朝食をとっていた。
今日の朝食は、パンケーキにサラダ、スクランブルエッグで、おまけにヨーグルトがついていた。
甘いメープルをたっぷりとかけ、しっとりとした生地にかぶりつく時間は、嫌いではない。
ここだけを切り取れば、私はただの少女に過ぎないであろう。
しかし、私は軍人。そして前の青年も軍人。
ロイは、私の古き良き友人であった、同じ帝国の人間だからか、話が通じ、陸軍強化施設の仲間として関わりを持っていた。
くすんだ青色の前髪が、目の下まで伸びていて、なぜ前が見えるのかと不安になってしまう。しかし、施設の中では上位を争うほどの素早さと俊敏さを持っていた。
彼も私たちと同じ様に二人の仲間がいるが、その仲間が奇抜な見た目のせいで、空気は薄い。
「ねぇボルネシア、今日の訓練は午前中だけだったよね、?」
パンケーキを口に運びながら、ロイは問い掛けた。さらりと揺れる前髪から細めた目で此方を見ているのが分かる。
「そうだよ。明日は隣国の国王の御誕生日だからね。」
「へぇ... そうなんだ。」
ふんわりと笑う彼から、軍人らしさは微塵も出てこない。始めて戦場に行ったときも、現場を目前とし、ただ笑っていただけであった。
「ねぇ、ロイ、あのさ」
『伝達。伝達。≪≪SVY 部隊≫≫は至急会議室に集合しろ。繰り返す... 』
…雑音が混じる館内放送は嫌いだ。
そして”至急”という言葉が大嫌いだ。
…ロイがふふ、とご機嫌そうに笑う。
「ヨーグルトは頂くよ。」
…先に食べておくべきだった。と後悔する気持ちをぐっと抑えるが、どうせ気づいてるんだろう。
「後で紅茶奢ってよ?」
席を立ち、ヒラリと彼に手を振った。
いってらっしゃい、と手を振り返す彼を横目にその場を後にする。
軍靴とは違い、ヒールの軽やかな音を鳴らす彼女は、皆の視線を集め、…逸らす。
誰も彼女に敵うものはいない、彼女を敵にまわしてはいけないと、誰もが思ってた。
その優雅さと美しさを兼ね備えた彼女は別名
ヒールの女神 と、呼ばれる。
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