第44話 思い出話Ⅴ

「アンタまた夜更かししてたの?私が迎えに行かなかったら絶対遅刻してたわよ?」


「ごめん、ごめん、また美沙ねぇちゃんと遊んでて……」


はぁーあ……っと大地は大きな欠伸をする。


今日は朝から大地の家まで加恋が迎えに来ていた。


いつも集合する時間に大地が来なかったからである。



「ほどほどにしないとダメだからね」


「分かってるって……」


「あーあ、いっつも私がなにかと助けてるし、大地ももうちょっとしっかりしてくれたらな〜」


「むむむ……ごめんって言ってるだろ?」


「昔、大地約束してくれたのにな〜」


「へ?約束?なにそれ?」


「忘れたんならもう教えてやんない〜」


「え!?なに約束って教えろよ!」


「ふーんだ。ーーところでなんで大地サッカーボールなんて持ってきてるの?」


「ん?あぁ昨日、よっちゃんに持って来いって言われたんだ!なんか最強の必殺技作ってイナズ◯イレブンになろう!って……」


「またなんかバカなこと考えてるんでしょ?とりあえず怪我しないようにね?」


「大丈夫だって!」





キーンコーンカーンコーン……。


授業が終わるチャイムがした。



「よーし!休み時間だ!大地行くぞ!」


「うん!よっちゃん!最高のイレブンを作ろう!」


「まだ二人しかいないけどな……」


「細かいことは気にしない!」


二人は授業が終わるや否やすぐに教室を飛び出していった。



「じゃぁこのノート、学級委員長は運んどいてくれよ〜」


「はい!分かりました!」


先生は教室を後にした。


加恋は言われた通り職員室までノートを運ぼうした。



「うわー!チョークの粉かかるの嫌だな〜誰か代わってくれないかな?」


またあの女の子達が黒板付近で集まっていた。


どうやらその一人が今日は日直で黒板消しをしようとしていたらしい。



「じゃあ加恋ちゃんに代わって貰えばいいんじゃない?委員長だからやってくれるでしょ?」


「そっか〜、ねぇお願いしていい?」


一人が手を合わせながら加恋に頼む。


「えっ……でもそれってあなたの日直の仕事じゃ……」


?」


少し女の子は口調を強くして言った。



「……うっうん……やっておくね」


「やった〜!じゃあよろしくね!」


女の子達は加恋を見てニヤニヤしながら席に戻っていった。





次の授業が終わり……。



「じゃあこのノートは……いつも学級委員長にやらせてるからな、今日は日直がやっといてくれ!頼むぞ〜」


先生はいつも持ってきてる加恋を思ってなのか、ノートを持ってくる人を日直にした。


すると再びあの女の子達が騒ぎ出す。



「今日は日直がやれだって〜」


「まじありえないよね、先生」


「そうだ!ーーねぇ加恋ちゃん!このノートさ、先生の所に持っててくれる?」



女の子の一人が教室を出て行こうとした加恋に声をかける。



「えっ……でもそれ日直が持って行けって……」


「私、足痛めちゃってさ、持ってくことできないんだよね〜」


日直の子が足を痛めているポーズをする。



「加恋ちゃんは足痛めてる子に持って行かせようとするの!?それって酷くない〜?」


「私だったら持ってくな〜」


「怪我人には持たせられないよね〜!」



加恋をまるで悪者扱いのように女の子達は騒ぎ出す。



「えっえっと……そんなつもりじゃ」


「持って行ってくれるよね?」


「うっうん……」


加恋は日直の代わりにノートを一人で職員室まで運びに行った。







「よっしゃあ!大地今から必殺技の続きをするぞ!」


「でもよっちゃん!今から予定帳書く時間だよ?」


「おいおい、大地よ、予定帳書く時間=必殺技を磨く時間だろ?」


「ふっ……よっちゃんにはこの質問愚問だったみたいだね」


二人はまたこの時間に外に遊びに行き始めた。


今は先生が職員室に忘れ物をしたとかで教室にはいなかったからだ。


すると女の子達の一人が加恋の机に近づいてきた。



「ねぇねぇ加恋ちゃん?他の子から聞いたんだけど、加恋ちゃん大地くんの予定帳まで書いてるんでしょ?」


「えっそれは……」


誰かに書いているのがバレたのだろうか。加恋はおどおどしている。



「じゃあさ、私のも書いてよ?」


「そっそれは……」


「え!ダメなの?大地くんのは書くのに?それって不公平だよね〜」


『これを広められたら私が大地だけにしかやらないみたいになってしまう』とそうなってしまうのが怖かったのか加恋は、


「うっうう……いっいいよ……書くよ」


「やった!じゃあお願いね〜」



女の子は予定帳を加恋の机に置く。



それを見ていたのか他の女の子達も……。


「え!じゃあ私のも!」


「私も!」


「私のもいいよね〜」



ドサドサと予定帳が積まれていく。


「…………」




気がつけば、4冊ほど予定帳が並べられ、加恋は急いでその予定帳を全部書いたのだった。








帰り道、よっちゃんは新しいゲームが発売するという事で早く帰り、大地と加恋は二人で帰っていた。



「……それでさ、よっちゃんがボール蹴ったらゴールに当たってさ」



大地は今日やった休み時間に起きたことを加恋に楽しそうにしゃべっている。



しかし加恋はそれに対し空返事をするだけである。



「どうした?加恋なんかテンション低いけど?」


加恋の元気がないのか大地は加恋の顔を覗く。



「うんん!……なんでもないよ!」


加恋はそれに気がつき、バレないようにとすぐに笑顔を作った。



「そっか?加恋はさ、他の人に悩みとか自分の意見、すっと言えないんだからさ、僕ぐらいには言えよ?……出ないとよっちゃんみたいに膨らんでパンクしちゃうよ?」


「うん……」



大地なりに笑って欲しくて考えたボケなのだっただが、加恋はいつものようには笑ってはくれなかった……。



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