第40話 思い出話Ⅰ
僕の加恋に対する第一印象は「お節介なやつ」だった。
生まれてからずっと家が近いという理由やらなんやらで一緒にいる時間が多く、大体僕がすることにいつも口を挟んでくる。小さなお母さんが出来たみたいだった。
いつも何かと一緒にいたからかもしれないが小学生になり加恋が習い事をし始めると一緒にいる時間が少なくなって少し寂しくなったのはよく覚えている。
……いっ今は違うからね!?
◯
「加恋、明日の宿題ってなんだっけ?」
「んもう、いつも覚えとけって言ってるでしょ!教科書の11ページの練習問題よ!」
「わかった〜ありがと〜」
「いつもいつも私が教えてるけど自分でも覚えなさいよ……」
「頑張って覚えようとしてるんだけどなぁ……」
大地は考えたポーズをとる。
いつも学校では明日の予定、宿題を予定帳に書く時間があるがその時間は大体遊んでいるのである。
「そういえば今まで私が教えてばっかで大地から教えてもらったことなんて一個も無いわね」
「んんん……そう?」
「たまにはアンタから何か教えてもらいたいわね〜」
「なんだよ……人を下に見た感じなぁ〜 あっ!そうだ今からよっちゃん家でみんなで遊ぶけどお前来るか?」
「……ごめん、ピアノの練習があるから行けないや……」
「そっか……じゃあまた誘うな!」
「……うん」
大地と加恋は家が近く、いつも一緒に帰るのが日課だ。今日も途中まで一緒に帰り二人はそれぞれの家に帰った。
◯
「ただいまぁ!と同時によっちゃん家行ってくる!」
大地は家に入るや否やランドセルを捨て出て行こうとした。
「大地!待ちなさい!」
すると玄関で待っていたのか、美沙が大地を呼び止めた。
「ん?なに?美沙ねぇちゃん」
「今日は姉ちゃんと人生ゲームする約束だったでしょ?」
「え!?そんな約束してないよ!?」
大地は首を傾げる。
「したのよ……今」
「えーでも昨日も一昨日も遊んだじゃん」
確かに昨日、一昨日と様々なゲームを美沙と大地は夜通しやっていた。
そのせいで大地は授業中に寝てしまい、教師には怒られる始末なのだ。
「明日も明後日も遊ぶわよ?」
「僕、他の子とも遊びたいよ!」
「ダメ!大地は私としか遊んじゃダメなんだから」
美沙は玄関で仁王立ちをして大地の行く先を塞ぐ。小学校六年生にしては美沙は既に身体は大地よりも大きかった。
「ふーん、分かったよ、美沙ねぇちゃん。じゃあ僕遊びに行ってくるね」
大地はぬるっと横を通り過ぎようとした。
「うん、行ってらっしゃい……ってちょっと待ちなさい!なに流れで行こうとしてるの!」
「……バレたか……」
「まさかいつも遊んでた……あのクソ加恋のとこに行くつもり!?最近遊んでないからって油断してたわ……行かせないわよ!」
今再び、美沙は大地の袖を引っ張り、止める。
「……アイツとは遊ばないよ……他にやる事あるらしいからね……」
大地は少し寂しげな顔をして袖を引っ張っている美沙の手を払う。
「あら、そう……」
思いのほか、大地が思いつめた顔をしたため美沙はあっさりと手を離した。
「……今だ!」
「あっ!待ちなさい!大地!」
大地は玄関を元気良く飛び出し友達の家へと向かっていった。
家を飛び出すと近くの家から少し下手くそな、しかし少し心地いいと感じるピアノの音が聞こえた。
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