第39話 最終決戦?

 僕たちは島崎さんたちからカードを奪い取り、今や僕たちだけで約160枚になった。

 多分普通に考えたらかなりの枚数だろう。


 グラウンドの端から歩いてきて電子掲示板についた。

 カードの総数を見ると、


1組 280

2組 170

3組 256

4組 190

5組 109

6組 128



 となっており、我らが3組は遂に1組の次にあたる2位に躍り出た。

 そして今さっき大量の5組のカードを奪い取ったため案の定、5組のカード数は減少して最下位になっている。


「うーん、やっぱり1組が強いね……。これからどうする、透?」


 透は時計を見ている。


 するとアナウンスが鳴った。



『イベント開始から2時間半経過しました。


残りの時間、30分です、皆さん最後まで頑張りましょう!』


「アナウンスの通り、時間がない……次の勝負で確実に一位を取りに行きたいな」


「じゃあ……1組で一番持ってる人と戦えばいいんじゃない?」


 歩が1組のカード数を見ながら提案する。



「……いや、1組には勝負を挑まない。大地、ルールは覚えてるか?」


「このイベントの?……確か、一体一でカードを奪い合うんだよね。で勝負とかで負けた方が全てのカードを相手に渡すだったよね?」


「そうだ……。そして今の1組のカード数……あれは調査によると殆どが一人のカード枚数らしい」


「え!?あの数殆どが一人!?」


「元々1組の生徒はこのイベントには積極的に参加してないらしくてな、殆どが何もしずに休憩しているらしい」


 たしかにグラウンドの隅にはカードを一枚持ったままで勝負とかせずに休憩している人たちがちらほらといる。



「そしてただ一人、学年首席が勝負に積極的に参加して全勝……あのカード枚数になったらしい」



「……じゃあその子に勝負を仕掛ければ……」


「だからルールを確認しろと言っただろうが……まずそいつと張り合うだけのカードを持ってじゃないとあっちは勝負にすら受けてくれない筈だ。それで負けたらどうする?俺たちは二位は愚か下手したら最下位まであるぞ?」


 たしかにあの数のカード数と同じくらいのカードを用意して奪われたら負けは確実になってしまう。



「……ってことはどうするの?」


「少しカードを残した状態で勝負をする。例えば……80枚とかぐらいか、そのぐらいで勝負してくれる奴を探すんだ」


 なるほど、負けても半分は残るから一種の保険みたいな役割か。


 80枚ぐらいだったら普通に一位に追いつける。


 一組の子は一人であの数を持ってるから誰も寄り付かなくて勝負ができないしカードは増えない。


 反対に僕たちはカードを分けることができるから勝負ができるってことか。


 いい作戦だ!



「時間も思ったりより経っているはずだからみんな割と持ってるはずだ。各自でそのぐらいのカード数の奴を探してみよう」


「「「うん!」」」


 僕たちは透の作戦通り、無難な80枚ぐらいの奴を探し始めた。




 僕は、透に一つ思ったことを聞いてみた。



「そういえばさ、思ったんだけど自分のカードを仲間に渡して自分が0枚になったらさ、カードを一枚また貰って、また渡して、貰うみたいなセコい手は使えないのかな」


「……その手ならもう試した。だが、残念ながら相手に奪われてないとカードは貰えない」


 早!……さすがは性格の悪さが滲み出る男、青野透!



「なんだか一瞬バカにされた気がするんだが?」


「いやそんなことはないよ……。でもさ、相手に奪われたかとか見られてないから分かりようがなくない?」


 すると透は一本の木を指差した。



「あそこに監視カメラがある。あれで一応確認してるとよ」



 なるほど……抜け目はないということか。



「大地たち!見つけたよ!」


 歩が手を振っている。

 僕たちが見つけていた約80枚の人がいたらしい。


「よし!大地行くぞ!」


「うん!」








「柳瀬くんがまた見つけてくれたんだけど、その子、連戦連勝してて約80枚ぐらいなんだ」


 たしかに少し人だかりができている。

 時間が無い分、みんなその子に対戦を挑んでいるのだろう。



「今もやってるよ!ほら、あそこ!」


 歩に指さされた方を見てみるとそこには……。



「「最初はグー!ジャンケン……ポイ!」」


 男子生徒とジャンケンをしている幼馴染……加恋がいた。



「いや、加恋じゃん!なんかまた新しいキャラだと思って心の準備してたのに!」


 なんだかんだこの流れはまた新しい人かなって思ってて色々なツッコミとか考えてたんだけどなぁ……。



「やったぁ!!また加恋の勝ちよ!」


「くそ〜!」


 どうやら加恋がジャンケンで勝ったらしい。

 周りの4組の人たちが喜んでいる。



「……かれこれこのイベント中、勝負はジャンケンだけやっていたらしい……そして全戦全勝で今のカード数になったらしい」


「加恋ちゃん、ジャンケン強いね……ん?大地どうしたの?」



「いや……なんでもないよ」


 柳瀬くんから聞いた事実に僕は少し困惑していた。



「ん?大地じゃないどうしたの?」


「げっ!?なんでアイツらいるのよ」


 勝負に勝った加恋が僕たちに気づいたようだ。

 あと僕を毛嫌いしている江ノ島さんも。



「なんだか順調そうだな?加恋ちゃんカード数が増えてるみたいで」


「まぁね!みんなに4組の勝ちはお前にかかってるって任せられてるから!」


「どうせアンタ達はロクにカードを集められてないんでしょ?アンポンタンなんだし」


 ひどい言われようだ。



「実はそうなんだよ、純子ちゃんボク全然枚数増えなくてさ……」


「歩くん!私のカード渡しましょうか!?」


 江ノ島さんはポケットから何枚か急いで歩に渡そうとした。


 歩に渡すなら僕も欲しいな。



「あっ江ノ島さん僕も欲しいな……」


「黙りなさい……アンタはぶっ殺して引導を渡してあげるから」



 この対応差……涙が出てくる。



「それより私たちに近づいてきたってことは何かあるんでしょ?」


 加恋が透を見る。



「バレたか〜、実は加恋ちゃんが持ってる枚数と俺たちが持ってる枚数が同じくらいだから勝負はどうかな〜って思って……」


 透はあくまでそれ以上持ってるとは言わずシラを切るつもりらしい。

 その方が勝負がオーケーされやすいと思ったのだろう。



「ふーん、そういうことね……」


「加恋やろうよ!今日の加恋ジャンケンで35連勝してるんだし!」



 35連勝!?なんだそのバカみたいな連勝記録!?


 多分A◯B48だったら今頃ジャンケン選抜でセンターになっているだろう。



「ここで勝てば一気に順位上げれるわよ!」


 少し加恋は考えるポーズをとって、



「……分かったわ、やるわ!」



 勝負をのんだ。



「俺たちが勝負を挑んだんだから勝負内容はそっちで決めていいぞ?」


「そんなの決まってるわよね?加恋!」


「ええ!ジャンケン一発勝負よ!」



 上手く勝負に乗らせることができた。

 これで勝てば僕らは一位になることができる!


 負けても半分程は残ってるため致命傷にはならないだろう。






 すると人だかりの中から一人の男がこちらに近づいてきた。

 そう、そいつが近づいできたということは何か、何かが起きる前兆なのだ。



 そいつの名は……



「あれ?加藤君?どうしたの?」


「何の用だ?ゴミクズ?」


 透は出会い頭に暴言を吐いた。

 やっぱりまだ許してなかったみたいだ。



「いやぁ青野達に謝ろうと思ってさ、カード増やしてみせる!って調子のいいこと言ってさ、全然増やせなかったんだ……でもよ!聞いたぜ?お前らあれからカード160ぐらい増やしたんだろ?やっぱりすごいよなぁお前ら」


「バ、バカお前!」


 加藤君は言ってしまった。

 僕たちが隠していたことを大勢いる中で……。



「え?俺なんかまずい事言った?」


 この何も考えてないポンコツのせいで状況は悪くなってしまう。



「ちょっとアンタ達どういうことよ!?加恋と同じぐらいの枚数って言ってたじゃない!」


「160枚って私の倍ぐらいあるわよね?」


 まず最初に実はもっとカードを持っていたという事実が確認される。


 次に起きるのは……。




「なんだよ!3組のやつら半分だけ賭けるのかよ……加恋ちゃんは全部の枚数賭けるっていうのに!」


「なんかかっこ悪いよね〜保険かけてる感じで……」


 オーディエンスの反応がガラッと変わること。

 枚数が明らかになったことで4組は全部賭けてるかっこいい存在、僕らは保険をかけて、半分だけ賭けてる嫌なやつらとなる。



「どうすんのよ?加恋は全部賭けてるんだからアンタ達も全部賭けなさいよ!」


 80枚と160枚の賭けそんなもの呑めるわけないに決まってる。



「ふざけるな!そんな俺たちに不利な勝負するわけないだろ!」


「そうだよ!対等な枚数じゃないんだし!」



 僕と透は何が何でも勝負は避けようと説得した。

 しかし……。



「よーし!俺、加恋ちゃんにカードを託すよ!」


 4組の生徒が自分のカードを加恋に渡した。



「えっえぇ……!?」


 渡された加恋も驚いている。



「俺のも使ってくれ、4組は頼んだぞ!」


「私のも!加恋にしか頼めないんだから!」


「頑張ってね!」



「えっちょっちょっと!?」


 続々と今までの光景を見ていた4組の生徒達は加恋にカードを渡し始めた。


 そして加恋のカード約150枚!


 それは加恋が今まで連勝してきたという事実から生まれた結果なのだろう。




「見なさい!加恋の元にこんなに枚数が集まったのよ!信頼の証ね、これで対等よ!アンタ達が勝負を挑んできたんだから文句ないわよね?」


 江ノ島さんが自慢げに言う。



「くそッ!」



 透は唇を噛んでいる。

 この状況は透が一番なって欲しくなかった状況なのだから。


 勝てば一位、だが負ければ確実に順位は最下位になってしまうという状況、さらには自分達から挑んでおいて枚数が増えたらやっぱ辞めます……とはできない。



 こうなってしまっては勝負を受けざるおえない。


「加恋もいいわよね?」


「……うっうん……」



 加恋は少ししょぼくれた、いや緊張しながら受け答えをしている。



 ……僕はこの状況に自分でも恐ろしく嫌気がさしていた。




 いきなりクラスの命運を託されたほどの枚数を渡される事は加恋は想像してなかっただろう。

 自分が負ければクラスの負け、しいてはクラスのみんなから非難される可能性だってあるかもしれない。


 信頼で得た証?


 違うだろ、みんな責任を転嫁させてるんだ。


 もし負けても責任はアイツ一人だけになるんだから……




 そんな状況にムカついたからなんだと思う……僕が柄にもなくあんな事を言ったのは、



「こんな勝負受けるわけ……」



「いいよ……僕が加恋と勝負する」


「おっおい!大地!?」



 透が青ざめている。



「言ったわね!さぁ加恋やっちゃいなさい!」


「うっうん!やってやるわ!」




 ……なんだかこんな状況、昔にもあった気がするような……。









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