第30話 情報提供

「皆さん、こんにちは!青野透の妹の青野遠子です。よろしくお願いします!」


 遠子さんは全員の顔を一度しっかり見てから深々とお辞儀をした。



「へぇ〜!青野アンタ双子だったんだ!紹介してくれたら良かったのに!」


「アリーナさんですよね!気軽に遠子って呼んでください!」


「ううう……」


 アリーナが急に涙を流して、遠子さんに抱きついた。


「えぇぇ!!どうしたんですか?アリーナさん!?」


「やっと……まともな人と話せる機会ができたと思うと涙が止まらなくて……ごめんね急に抱きついて」


「そうだったんですか!?」


「……もはやクラス全体がアホだからこういう機会、久しぶりなの……」


「……そのアホの一人でもあると思うんだけど……」


「大地アンタ後で秘孔ついてやるから」


 え?僕、既に殺す宣言されたんだけど。



「透、そういえばボクと大地にも紹介してなかったよね?」


 そうだ、そうだ!こんな可愛い妹がいるなら紹介してくれても良かったのに!



「まぁ紹介する気は微塵もなかったからな」


 透は少し場が悪いような顔をしている。あまり知られたくなかった様子だった。



「すみません、兄が失礼な態度を取っていて、しかし家ではみなさんの事聞いてましたよ!

こんな兄と一緒に学校生活を送ってくださりありがとうございます!今後ともよろしくお願いします」



 再び遠子さんは頭を下げた。


 なんていい子なんだ!本当に透と同じタイミングで生まれた子なのか?180度くらい性格とか振る舞い方が違うけど……。


 僕は透の顔をじっと見る。



「ん? どうした大地俺の顔になんかついてるか?」


 二人が同時に生まれてないとするなら……そういうことか。


「……透は捨て子……」


「ぶち殺すぞ?」




「そういえば、皆さん、ここで何をしてるんですか?」


「えっと……5組がカードを急激に増やしてるからそれを奪おうとして、今、場所を見つけてるんだよ」


 僕はちらっと柳瀬君を見る。まだ見つけきれてないようだ。



「5組の人たちならあっちで固まってましたよ? 何かしてる感じでしたけど?」


 そういうと遠子さんはグラウンドの隅っこの方を指差した。



「そうか助かったぞ、遠子」


「まぁお互い頑張りましょ」


「じゃあひとまず向かうぞお前ら!」


「「「おぉぉぉ!」」」


 というか今回、柳瀬君全然意味なかったんじゃない?



「アリーナさん、頑張ってくださいね!」


 遠子さんはアリーナの手を握り熱い握手をした。



「ええ!頑張るわ!遠子も頑張って!」


 アリーナもしっかり握った。



 僕たちは遠子さんの指差した方へ急いで向かっていった。


 そういえば、ずっと遠子さんの後ろに隠れてた子、誰だったんだろう?ずっと僕の方見てたんだけど……。



「はぁ……コラ青野!早く遠子を紹介してくれても良かったんじゃないの?」


「あぁ……。そうすれば良かったかもな……」


 なんだろう透が苦笑いをしている。



「そうだよ!もっと早く僕に紹介してくれたら付き合う可能性もあっかもしれないのに!」


「……いやそれは完全に不可能だな」


「即答!?……そりゃさ無理なのは分かってるけど……」



「いや、大地が悪いというわけじゃなくてな……」


「ん?どういうこと?」


「……やめだ、この話は!」


 透はそう言うと話を途中でやめた。






「なんのメモ書いてるの?」


 隣で歩いている綾子は何かものすごいスピードでメモをしている。



「ん? 大地君が私と目を合わせた回数とあのクソ貧乳ハーフが大地君の事を目で追ってた数……」


「そのメモどうするの?」


「目で追ってた数から目を合わせた数を引いて残った回数、大地君の目を潰そうと思って!」


「ちなみに数は?」


「16-5で11! 11回潰さなきゃね!」


 この子は泣きっ面に蜂ということわざを知っているだろうか。



「じゃあその愛しの大地君にはなんで一言も喋らなかったの?」


「私達は心で繋がってるから口で喋らなくても分かるの!」


「ヘェ〜じゃあ大地君はなんて言ってたの?」


「今すぐ私以外を嬲り殺して君にハグしたいよって……幸せな光景が広がるわ」


「残虐すぎない!? 返り血浴びてる状態でハグしてる光景は多分幸せじゃないと思うのは私だけ!?」


「……もう愛が止まらないらしいは……彼!」



「しっかりしてよ……?それでも貴方一応学年首席なんだからね?」


「遠子も良かったの?落ち着いてる様子だったけどあの貧乳ハーフに手出すんじゃないのかなって思ってた……」


「透がいたからね、一応アイツの面子も考えたら手は出さないよ?常識はあるし……」


「兄貴がいなかったら?」


「ーー即刻、アリーナちゃんを縄で縛ってあんなことやこんな事を……おっとよだれが」


 さまざまな情景が浮かぶ……グフフ。



「貴方もしっかりした方がいいわよ?」


「それより私たちもカード集め、頑張りましょ?」


「えぇぇ……大地君をもっと見てたいのに……」


 私達はカード集めを再開した。


 おっと今のうちにアリーナさんと握手した方の手をクンカクンカしておかないと!

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