第29話 事態悪化

衝撃の事実を知らされ、倒れている有田君をほっておきカードだけ奪い去って僕らは歩いていた。

 この戦いで割と時間を取られてしまいみんなカード取られたり、取り合ったりしてたみたいで全体のカードの枚数は多くなっているみたいだ。



「これで僕と歩のカードを合わせて約70枚ぐらいだし、学年の中でも上位の方じゃないのかな?」


「そうだな……。時間を取られたがその分得た報酬はデカかったからな」


 僕らが歩いていると向こうの方から3組らしき生徒が息を切らして走ってきた。



「大変だ! 青野総司令官! クラスの順位があんた達のいない間に大きく変わっちまった!」



「なに!?」


 僕らは真実を確かめるべく急いでカードの枚数が公開されてる電子掲示板に向かった。



「おいおい、俺たちがやってる間になにが起きてたんだ?」


 電子掲示板を見るとそれぞれクラスのカードの枚数が出されていた。



 僕たち3組は先ほどの2組の有田君を潰し約30枚を獲得したため、数十分前に見ていた時よりも大きく増えて今や95程になっていた。

 それに反比例する形で2組の枚数は減少、55枚ほどになっていた。



 ほかのクラス4組や6組を見てみても僕らには追いつかず取ったり、取られたりとなかなか伸びてない印象だった。


 注目すべきは二つのクラス……1組と5組だった。


1組122枚、5組112枚。


 僕たちはほとんど反則に近い手段を取り、すぐに30枚ほどを得て、有田君に勝負を挑んだ訳でこの枚数を短時間で得ているのに対し、それ以上の枚数を得ていることにみんなびっくりしている。



「どういうことだ!?」


「しっ知らないよ!お前らがあいつと戦っている間にどんどん二つのクラスが増えていて……」


 透が伝えに来た子に問い詰めている。しかし誰も事情は分からなかったみたいだ。




「……分かったぞ、青野、1組の理由は分からないが5組が急に増えたのこれが理由だろう……」


 柳瀬君がカタカタとパソコンを叩き、僕らの携帯に何かを送った。


 送られた写真を見るとそこには文字と胸元を少し開けた5組の女子生徒らしき人が上目遣いで頬を赤めながらこっちを見ている姿が写し出されていた。

 文字には「10枚のカードで一揉み……」という男子高校生にはたまらない魅力的な言葉が書かれていた。



「こっこれは!?」


「どうやら一部分の男子にこれが出回っているらしい」


 これは大変なことだぞ!



「透……これはまずいことだね!」


「あぁ大地!俺たちのカード枚数は95枚……」



「「これじゃあ9回しか揉めないじゃないか!」」


 バシッと綺麗な音がした。


 僕と透はアリーナに全力のビンタを食らった。



「このままだとすぐに追い越せない数字まで上げられちまうぞ」


 すると電子掲示板が動いた。


 3組の95枚が85枚に減り、5組の枚数が10枚増えていた。



「透!誰かがカードを使ったみたいだよ!」



「柳瀬!今から言う言葉を男子全体にLINEで送れ!『これから5組にカードを使って一揉みした者は全3組勢力によって制裁を執行する。あと今使った者……覚えておけよ』」


 柳瀬君がカタカタとパソコンで入力しすぐさまLINEに送られた。



「これで流出は一旦防げただろ」


 こんな簡単に10枚カードが無くなるのは本当に痛い。



「よし、決めた! 取られた物は取り返す!今から5組に乗り込んでカードを取り返すぞ!ーー柳瀬!場所は分かるか?」



「……少しかかる……今絞っているから……」



 さすが、柳瀬君頼りになる!ここまで柳瀬君がいなかったら劣勢になっていただろう。


「あれ?柳瀬君……なんでパソコンの画面にポケモンカードが写っているの?」


 歩が後ろから柳瀬君のパソコンを見ていた。



「ポケモンカードのデッキで何を入れるか絞ってる」


 ……僕の尊敬の眼差しを返して欲しい。





「あれ? 透?」


 僕らが5組の事について話していると二人の女子生徒が近づいてきた。



 一人はツインテールでアリーナと同じように華奢な体ですらっとしたモデル体型だった。

 顔も整ってるし背も女子にしては高く、僕と同じくらいだった。透に話しかけたのがこちらの女子だった。



 もう一人は青みがかかったロングで豊満な胸を持っており、みんなの注目のマトだろうと思うぐらいの美人さんだった。

 何故だか分からないが僕の顔をじっと見ている。




「なんだ?遠子か」


 透は一人の子にめんどくさそうに話しかける。


 ーーというか、二人とも下の名前呼び?

 まさか……彼女?

 いやいや落ち着け、大地、こんな奴に彼女なんてできる訳ないだろう。



「おい、大地、人を親の仇みたいに見るな、何か勘違いしてるだろ」



「そういえば透、アンタ家の鍵持ってる? 持ってたら先入って開けといてね、私ちょっと遅くなるから」



 ……まさかの同棲中!?



「おい、大地地面に拳を打ち込むな、何も生まれないぞ」


 力を!コイツを残虐に殺せる力を僕に!


 ドンッドンッと拳を地面に打ち込む。



「そういえば、透、私の下着見なかった? ワンセットどっかいっちゃったんだよね」



「そんなもんリビングとかに捨てるように置いたんじゃね?……おい大地、なぜバットを持ってる?」



 まさかもうそこまでの仲だったとは、さらばだ透、 今、楽に殺してやるから……。



「しかも今日おとうさんに挨拶してないでしょ? おとうさん怒ってたよ!」


「いいんだよ、別にあいつめんどくさいし……」


 お義父さんに挨拶?

 なるほど……もう結婚を前提にということか急がないと神が怒ってしまうな。



「あぁ神よ……今ここに大罪を犯した者を処罰し貴方様に捧げることを宣言します……アーメン」


「……なんでこの状況で恐ろしいことをお前は言ってるんだ?」


 迷える子羊よ、今天に送ってやるから動くなよ?……綺麗に頭カチ割ってやるからよ。



「待て、大地……金属バットを振り上げるな! 勘違いしてるだろから言っておくがコイツは俺の双子の妹だぞ」


「ほぇ……?」

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