第28話 決着

「ふぅ……なんとかジャンケンとか山手線ゲームでカード3枚に増やしたわよ……。大地達、順調かしら?」


 私はアイツらの様子を見るために周りを歩いていた。すると何かやっているのか人が集まっていた。



「何やってるのかしら?」


 人の間をすり抜けて、集団の最前列に出た。


 そこで見たのは……。



「ノーザリー!どうだ!」


「まだまだ、ミークローゼット!」


「いけるぞ! 歩! まだお前の頭のクローゼットには下着が入ってるだろ!」


「アイツのホックを外してやれぇ!」


 ……ひたすら下着ブランドを言い合っている二人の変態とそれを応援してる変態達がいた。



 何やってるのかしら……このバカ達は……。


 私は頭を抱える。



「あっ!アリーナ!こっちに来て一緒に歩を応援しよ!」


「目を合わせないでゴミクズ変態人間以下の微生物」


「いや、酷くない!?」


 いけない!アイツらと話しをしてたら私の評判まで落とされてしまう。

 ここはなんとか誰にも気付かずに去っていくのがベスト……。


 と思っていると青野がいつのまにか近づいてきた。


 青野は私の耳元で呟いた。



「……これから俺の考えた作戦をするんだが、協力してくれるな……?」


「嫌よ……。あんな奴らといたら評判落ちるじゃない……」


「もし、協力したら……大地とのデートを切り盛りしてやる……」


「……」







「真下!頑張りなさい!あの変態の頭のパンツ脱がしてやりなさい!」


「アリーナ!? 応援してくれるの!?」


 さっきまで僕たちを気色悪いものを見ている目をしていたのに。

 ……あとその応援ちょっと意味がわからない。



「事情が変わったのよ!」


 しかしかれこれこのゲームを開始して10分ぐらい経つ……。そろそろ終わるか?




「ラゼ!」


「リサマリ!」


 すると歩が一瞬こちらを見て頷いた。


 それを確認したのか透はアリーナを連れて僕たちから離れた。





「そろそろ限界じゃないのか? 真下?……ルジェ!」


「そっちこそ、レシアージュ!」



 少し、二人とも言うのに時間がかかり始めた気がした。

 そうは言っても1秒とかそのぐらいの話だが……。




「……そろそろ戦いが終わる……」


 柳瀬君が隣で呟いた。


 え?それってどういうこと……。





「シャルタントーマス!」


 歩はニヤッと笑い手を上にあげた。



「メゾンクローズ!……パチっ!」


 ブランド名を言ったと同時に歩は指を鳴らした。


 するとその瞬間、観客の後ろから悲鳴が聞こえた。



「キャャャァァァ!私のパンツが空に飛んでいくわ!」


 その悲鳴の先を見ると確かに観客の後ろの空にパンツが浮いている。


 純白のフリルがついたとても可愛らしいデザインだった。




 ダッ!っと力強く足を踏み込む音がしたと思ったらそこにはそのパンツに向かって高らかに手を伸ばして飛んでいる性獣……もとい有田君がいた。



 その姿はどんな棒高跳びの選手よりも綺麗にジャンプしていた。



 ドタっと有田君は着地した。そしてその手には純白のパンツがしっかりと握られていた。

 するとそれと同時にパンツを鼻の近くに持っていき、クンカクンカしていた。



「ふっ……(クンカクンカ) パンツ(クンカクンカ)ゲットだぜ!」


 匂いを嗅ぎながら某ポケモントレーナーのように宣言した。




「……3秒……」


「はっ!!」


 有田君はその人物の呟きによって我に返った。


 その人物はニヤッと笑い有田君に近づいた。


 その人物とは真下歩……このゲームの勝者だった。



「3秒たったから君の負けだよ……有田君」


「まっ待て! 今のは無しだ!不意にパンツが浮いてたら掴んじまうだろう? ゲームを続けようぜ!」


「いや、君の負けだよ」


 歩はニッコリと不気味に笑っている。




「き、汚いぞ!このパンツに少しついたシミ並みに汚い!」


 有田君……全然うまくないけど。



「はぁ? 頭沸いてんのか? 何が起ころうともゲームは続ける。そしてお前は3秒たっても言わなかった。お前の負けだよ!」



 ドンッと歩は有田君に指を指し勝負が終わったことを告げた。


 いつも優しい口調の歩がここまで口を悪くしてるとは……。



「うぅぅぅ……だが、しかし!誰かは分からぬ女子生徒のパンツを手に入れたんだ!俺は本望だ!」


 と言って有田君はパンツを頭から被り始めた。


 この人、メンタル強すぎだろ……。


 すると透とアリーナが観客の中から出てきた。



「終わったか?」


「うん、なんとか歩が勝ったよ!」


「透の作戦通りだったね……。アリーナも協力ありがとう」


「え? もしかしてあの悲鳴、アリーナの?」


 少し聞き覚えがあるなとは思っていたがまさかアリーナとは!

 こんなことに協力するとはアリーナもこのイベントに臨む意識は高いらしい。



「ん!? ではこのパンツは君のか!すまんが使用させてもらっているよ」



 パンツを被りながらひたすらクンカクンカしてる有田君はアリーナに礼を言ってた。


「別にいいわよ? 私のじゃないし……」




「「え?」」



「そのパンツはさっき、この勝負が始まる前に加藤に履かせたやつなんだ、アイツも快く履いてくれたよ」


 歩はニッコリと笑って残酷な真実を告げた。



 バタッと人が倒れた音がしたと思ったらそこには泡を吹いて天を仰いでいた有田君の死体があった。



 ……ご愁傷様です……。



 こんなエグいことやる歩には少し気をつけないといけないみたいだ。

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