第25話 僕のカードの取り方

「ねぇ君!あっち向いてホイで決めない?」


「いいよ!」


「「ジャンケン、ポイ!」」


「あっち向いてホイ!」


 男子生徒は上に指差し、もう一人の男子生徒は顔を上に上げていた。



「やった!」


「クソ〜!」


 生徒はカードを渡した。



 すると電子掲示板を見てみると4組のカードの枚数が一枚減って、5組のカードの枚数が一枚増えている。

 また誰かのカードが動いたのか枚数が変わった。



 このように本格的にカードが動き出した。


 ある人たちは徒競走で競ったり、またある者はルーレットで当たった人といった具合だ。



 かくいう俺も今さっき、6組のやつからジャンケンで勝ちカードを手にした。




「おーい、透!調子はどう?」


 後ろから歩が俺を呼んでいる。



「歩か?カードはどんな感じだ?」


「調子は良いよ!見てみて!10枚に増えたんだ。」


「早いな!どうしてそんな増えたんだ?」


 俺でさえまだ二枚なのに……。



「ボクのファンの子がどうぞって渡してくれてんだ!」


「……本当は?」


「……ファンの子に渡してくれないと一生ゴミみたいな扱いをするって言ったんだよ……」


 恐ろしいというかゲスみたいな行動をコイツはよくするなと俺は内心思った。



「ただ……このイベント最初はあまり肝心じゃないよね?」


 歩は俺を見て確認をする。


 たしかにこのイベントは序盤全くと言って良いほど肝心じゃない。何より終盤にポイントがある。なぜなら……



「おい!1組のカード枚数が急に20枚増えたぞ!?」


「ギャー!5組の枚数が20枚減っちまった!」



「……始まったか……」


 そうこのイベント勝ち続ければどんどんと枚数が増えていく、であるなら一人がものすごい枚数に増えていくということだ。


 今さっき、一度に20枚が動いた。

 どこかで20枚以上の戦いが動いたということだ。


 つまりこの戦い、後半に枚数が多くなっているやつのカードを奪えれば逆転を狙えるということだ。


 だが実際断るという選択肢があるため、上手く戦いに誘い込むしかないが……。




「……そういえば、大地はどこ行ったんだ?」


「大地なら気合入れてみんなに色々戦いとか挑んでたけど」


 ーーったく、最後に逆転を狙っていくんだからそれやる体力ぐらい残しとけよって言おうと思ったのに……。



「あっあれ!大地じゃない?」


 歩が指を指した方には顔にビンタの跡がつけられ、制服のそこら中が千切られている。大地がいた。


 まるで戦争から帰ってきた。英雄の如く歩いている。



「……大地、お前どんな戦場に挑んできたんだ?」


 この数十分で何が起きたんだ? コイツの身に?



「ふっ……ちょっとマリ◯フォードに行ってきて、兄を助けに……」


「いやお前、どこのゴム人間だ」


「ねぇねぇ!大地!見てよ、ボクカード10枚に増えたんだよ!すごくない?」



 すると大地は歩のを褒めるどころか俺たちの目の前にカードを出した。その数、約30枚ほど!?



「それどうしたんだ!? 大地!この短時間でその数!」



「透……とうとう僕は変化したみたいなんだ」


「何!? 大地よ……可燃ゴミが不燃ゴミに変わってもゴミはゴミのままだぞ?」


「……待って、それは僕はゴミのままだと言いたいの!?」


「それでさ、ゴミはどうやってそんなにもカードを増やしたの?」


「今のゴミという発言はこのイベントが終わったらケリをつけてやるからな待ってろよ?……コホン、まぁ言うよりも実践した方が分かりやすいかな」



 すると大地は近くにいた女子の元に向かっていった。



「あの、すみません?」


「ゲッ……変態……ゴホン!……何かしら?」


 大地は少しショボくれた顔を見せたが切り替えて女子に向かって喋りかけた。



「あのさ、君ってまだカードが一枚ってことはただのチキンかバカみたいだね!」


「好きでえぇす!もっと言ってくださいぃぃぃ!」



 すると女子は急変して大地をご主人の様に見ている。まるで忠犬のような姿勢をとっている。



「じゃあ言って欲しかったらカード頂戴?」


「はい!もちろんです!」


 女子は大地にカードを渡した。


 そして大地は自身満々な顔をして俺たちに近づいてきた。



「こんな感じで悪口を言って、カードを貰ってるんだ。」


「なるほど……だがお前照れ隠しでもないのに悪口言えるんだな?それはそれで驚きだ。」


「あんまり言いたくないんだけどね。照れ隠しの時よりも抑えられてたでしょ?」


「確かにさっきの悪口は序の口レベルだったな。本腰入れたら声優殺しのセリフの量だし」


「でもさ、それ使ってるの加恋ちゃんにバレたらマズくないの?」


「卑怯とかズルとか言って、間違いなく後でボコボコにされるだろうな」


「ふん……何言ってるんだい二人とも、敗者の言い分は勝者の耳には一つも入らないんだよ?」


 おっと……ここにもゲスな奴が一人いたみたいだ。


 俺の周りにはどうしてこんなにもクズが集まるのだろうか?




「それよりそれ、どうするんだ?」


 俺は大地の足元を指差す。


 そこには大地の足をスリスリとしているさっきの犬……もとい女子がいた。



「あぁ……これも最近見つけた対処方があってね……ねぇ君?」


「ハイ!……ハァハァ……」


 女の子は顔を赤らめながらベロを出して必死に大地の足を舐めている。


 この子大丈夫だろうか?もう人間に戻れない気がするが、



「君ってさ、さっきから思ってたんだけど可愛いよね」


 すると女子は急に立ち上がり、大地の顔面に思いっきり拳をぶつけた!

 それもグーで!


「なんか冷めたし、あんたのその顔見てたらムカムカしてきたわ!」


 女子は倒れた大地に馬乗りし、ワン、ツーと拳を叩き込む!



「や……マジで……これ以上は……っ!」


 しばらくの間、大地は滅多打ちにされると、



「二度と見せんなよ、そのツラ!……ぺっ!」


 さらにボロボロになった大地に唾を吐き、女子は持ちカードがゼロになったためカードを受け取りに行った。



「……こんな感じで僕が褒めたりすると女の子たちはめっちゃくちゃ僕を嫌いになるみたいなんだ……」


「……大地お前……苦労してるな」


 こんな俺でもこの現状は涙なしで見られなかった。



「……あのパンチ……世界狙えるね」


 歩はそうでもなかったらしい。



「歩……サンドバックって知ってる?」


 今まさに歩に殴りかかろうとしている大地を止め、俺たちは少し作戦を練ることにした。

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