第23話 説明ってなに

「第一学年の皆さんは校庭に集合してください」


 学校のアナウンスが鳴り、ぞろぞろと生徒たちが出てきた。


 めんどくさそうに欠伸をしている人、友達とおしゃべりしながら来る人、色々な人たちがいる中、ただ一つの集団だけ明らかに雰囲気が違う団体がいた。



「おい、あれ! 3組じゃないか?」


「おいおいなんであんなにやる気出てんだよ」


「全員目が本気だぞ、目合わせたら殺されるんじゃないか?」



 その団体はやる気のなさそうにしている生徒たちの中で人一倍、気持ちが高まっているのがよく分かった。

 一人は完全燃焼と書かれたハチマキを巻いていたり、一人は大きく3組と書かれた旗を持ってぞろぞろと歩いていた。


 いつの間にそんなの用意してたんだ。



 僕は隣を歩いている柳瀬君に声をかけた。


 なんでも他のクラスの情報をまとめているらしい。



「柳瀬君、他のクラスの戦力はどんな感じ?」


 僕はパソコンを持って何か調べている柳瀬君に聞いた。

 柳瀬君のメガネが光る。



「イベントの内容がよく分からないけど、注意すべき危険因子は何人かいる」


 柳瀬君はパソコンを開き、僕に見せ始めた。



「1組……基本的に全員が頭がいい、入学試験での上位が全員集められている」


 柳瀬君は左の集団を指差した。なるほどあれが1組か。


 入学試験の上位が全員集められているって学校の方針かな?



「特に1組の中でも学年首席……東島綾子には気をつけたほうがいい。彼女は異質だ。」


 東島綾子か……覚えておこう。


 見たことないけど首席っぽくメガネをかけていかにも頭がいい感じなんだろうなー。



「2組……能力は平均的だが二人注意したほうがいい奴がいる。一人目は有田典良、コイツは……」


 有田典良どんな奴なんだ……?



「一言で言えばとんでもない変態だ。」


「……なるほどそれは注意しないといけないみたいだね」


「噂によると中学の時、女子更衣室に侵入したこと365回、リコーダーを盗難した数、約30個……」


「待って……なんでそいつ捕まってないの?」


 おかしい、それはもう捕まってもいいんじゃないのか?


 女子更衣室なんて一日に一回ペースで侵入されてるぞ、先生たちは何してるんだ?


「なんでも何度も女子更衣室に侵入したせいで全クラスの女子が教室で着替え始めたが有田はそれには気づかずにまだかまだかと更衣室でいつも待っていたらしい。

しかし体育の時間が始まるといつもすでに女子たちは着替えていて本人は卒業まで不思議に思っていたと聞いた」


 変態通り越してバカじゃん。


「リコーダーに関しては盗まれた女子たちに先生が通報しようかと聞いたところ、皆、盗まれたことにまんざらでもなかったらしい」


 なるほど……学校全体で変態ということか。



「さっきたまたま、有田に会って、「何でお前はそんな変態なことができるんだ?」と聞いたんだが、「そこに女の子がいるからかな?」とキザなセリフを吐いていた」


「うん、そいつにはなるべく近づかないようにしよう」


 親しくしても損しかないように感じる。



「それでもう一人は?」


「もう一人は余計な情報量を増やさないように簡潔に一言で言おう……現役ボクサーのバイだ。」


 うん、情報量多すぎて処理できないや、一言の意味もなかったね。



「名前は服部甲斐……あまり情報がないが相当な曲者らしい。」


「2組は個性が強過ぎない? 3組が霞むぐらいなんだけど」


「……大丈夫だ、西野お前はコイツらのレベルに匹敵していると過言でもない。」



 柳瀬君、今ここにみんながいることに感謝するんだね、いなかったらトドメさしてたよ?


 僕の中にある怒りを抑えて足を止めていたが再び柳瀬君と歩き出した。



「4組はどうなの?」


「全員が運動系だが、特にコイツはすごいってやつはいないな」


 確か、加恋たちのクラスだったな。全員が運動系の部活に在籍してて暑苦しいんだよな〜。



「他のクラスは?」


「5.6組は雑魚だ」


「説明、雑すぎない!?」


 1.2組は割としっかり説明されてたのに後半、雑すぎる!



「これでも喋るのは得意ではないんだよ、どうせ新しいキャラが出たら地の文で説明入るだろ」


「そういう世界観ぶち壊すこというのやめて!?」




 柳瀬君は空を見ている。


 最近柳瀬君がよく分からない気がする、最初は委員長をやるぐらいしっかりしてると思ったのに……。



 そうも言ってるうちにクラスごとにみんな並び始めていた。どうやらそろそろイベントが始まるらしい。

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