第17話 ホームルーム

比戦学園……僕らが通っている高校だ。地元じゃ割と頭が良い方の高校で人気がある。


 この高校は実は他の高校よりも少し力を入れていることがあったりする。


 それは学校の方針でもあるのだが、競争力を磨く事である。



 歴代の校長の意向で毎月に一回と言っていいほど賞品が出るイベントが催されるのだ。


 賞品といえば、例えば、図書券、商品券、学校の何かの権利や多種多様である。


 イベントは自分たちの知力、体力を使ってやるものでこれまたいろんな種類のイベントがあるらしい。


 僕らはまだ入学して間もないのでまだイベントはやった事がないのでなんとも言えないのだ。


 しかし、ついに今日僕たちにとっての初めてのイベントを知ることになる!








 朝のホームルーム……


 いつもならこの時間はみんな騒いで、櫻子先生の「静かにしろ〜」という声でみんな静かにし始めるのだが今日に限ってはみんなもう静かになっている。


 その理由の一つとしては教卓に立っている櫻子先生の雰囲気だろう。


 いつもならけだるげそうな感じで入ってきて、少しセクシーな服をみんなに見せているのに、今日に限ってはしっかりとしたスーツできちんと着こなしている。

 顔もいつものめんどくさそうで可愛らしい顔してると思ったら、鬼の形相でみんなを見ている。


 目の錯覚かもしれないが櫻子先生からは少しばかりオーラが出ているのだ……。


 朝のホームルームのチャイムが鳴ってから数分間、ずっと沈黙の時間が続いている。


 みんなこの沈黙の時間に耐えられないのだろうか、ある人はキョロキョロしたり、ある人は貧乏ゆすりをひたすらしている。


 誰か、誰かこの沈黙を破ってくれ……とみんな願っている。




「櫻子先生〜そんな怖い顔してどうしたの〜いつものセクシーな服装でもないしさ、俺それが毎日の楽しみだったのに〜」


 その沈黙を破った救世主は、僕らのクラス、3組の生粋の空気の読めないヤツ……加藤だった!



 学年でも一目置かれている加藤……またの名を『空気破壊者』その名の通り、どんな状況、空気でもそれをぶち壊す言動をするため有名になった。


 噂になっていたのが以前、中学の時、担任の先生の猫が死んで、朝のホームルームが葬式みたいになっていた時にその先生に向かって「先生、次はどの猫飼うんですか?……もしかして青い猫型ロボットですか〜?ーーぷぷっ!なんつって!」としょうもないボケを言った挙句、空気は崩壊。


 誰もクスリとも笑わないとんでもない状況になったと聞く。

 ちなみに担任の先生はその影響で数日間学校を休み、しばらくしてから犬を飼い始めたと聞いた。



 そんな加藤が櫻子先生が放っているこの重い空気を切り開いてくれた。

 方法はともあれこれをきっかけに空気を少しでも変えられれば……!



「……加藤、その生意気な口黙らせてやろうか?」


 櫻子先生の沈黙が破られた!


 しかしながら、プレッシャーは増すばかりだ。



「え!? 本当ですか!? 櫻子先生にお口を手で押さえてもらえるのかな!?」


 加藤はブレない。

 普通だったらあそこは黙るのが一番の術だが、さすがと言っていいほどのバカっぷり、生粋の空気が読めないヤツはメンタルが高かったようだ。

 加藤のメンタルは常人にはブレイクできないのでも有名だった。



「……巨乳教師の筆◯ろし……新人アナウンサーがーーして××あげる……幼馴染が……」


 櫻子先生は呪文のようにすらすらと何かのタイトルを読み上げている。



「なっ!?」


 涼しい顔をしていた加藤が青ざめた顔をしている。額には大量の汗をかいており、目なんて踊っている。



「……これら全部お前から没収したエロDVDだ。これら全て没収品として家族の人に渡してもいいんだが?」


 ギロッと櫻子先生は加藤を見た。



「加藤ぉぉぉぉぉ!!」


 突然、バタン!っと加藤は机にうつ伏せになった。



 見ると目は白目を剥き、泡を吹いている。櫻子先生の脅迫が加藤のメンタルを壊したらしい。

 クラス全員に知られ、家族に渡すという脅迫だ、流石の加藤も耐えられなかったらしい。


 あの加藤もねじ伏せる櫻子先生……恐るべし。



「……さてうるさいハエも黙ったし、話すぞ……」


 櫻子先生は再びクラス全体を見渡した。


「お前たち、もう知ってると思うがもうすぐ何かがあるよな?」


 全員櫻子先生から目をそらし、口を開かない。



「……西野、分かるか?」


 クソ、目をそらしたのが一番遅かったみたいだ。



「えっと……オールスター感謝祭とかですか?」


「お前を赤坂5丁目で亡き者にしてやろうか?」


 櫻子先生から殺気が出ている。



「……青野どうだ?」


『ちっ俺かよ』っと言わんばかりの表情で透は立ち上がる。


「うーん……あっ櫻子先生の誕生日とか?」



 空気が一瞬で変わった!


 加藤が切り開いたお陰で少しは和らいだと思っていたが今の質問によって殺伐とした空気と化した!



 その理由は櫻子先生には年齢の話はタブーだからである。

 年齢非公開とされているがその真実はもう割と年をくっているといわれていて、つい最近それを聞きにいった田島くんは今では丸刈りでメガネをかけた昭和の人みたいになっている。

 入学して最初の頃はチャラそうだな〜と思ってたのに!



「……青野……お前にも地獄を見せる必要があるな……?」


「ひぃぃぃ!」



 透はビビリながら着席した。



「ここまでは茶番だ、おい! 柳瀬! コイツらに教えてやれ!」


「……はい!」


 立ち上がった眼鏡の男子生徒は、ウチの学級長、柳瀬君だ。

 成績優秀で人望がある、僕たちとは真反対な存在だ。

 彼ならこの正解の見えない状況を覆してくれるに違いない!



「もうすぐ……」


 僕たちは柳瀬君を見た。


 ゴクリと唾を飲む。


 柳瀬君のメガネが光る。




「もうすぐハ◯ター・ハ◯ターの連載が再スタートします!」


「「「なんだってぇぇぇ!!!」」」


 これはどえらいことだぞ!


 また一巻から読み直さなくては!


 まさか櫻子先生も読者だったなんて……。




「ちっがぁぁう!! 全然違う!」


 櫻子先生は大声で騒いでいたみんなを黙らせた。



「はぁ〜ここまで私のクラスがバカだったとは……お前たち最近の私の話は聞いてなかったのか? もう少しで林間学校があるんだよ……」



「「「なんだってぇぇぇぇ!!」」」


 クラス全員が驚愕していた。



「なんで全員驚いているんだ!? 二週間前ぐらいから言っていただろ!?」


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