第13話 効果はいまひとつのようだ

「なんだ? 小森か……」


 黒装束を着た一人が顔を見せた、会長だった。



「会長何やってるんですか!?」


「何って……結界張ってるんだが?」


「えっと……日本語って知ってます? 主に日本列島で使われてるんですけど……」


「あれ〜小森くんだぁ、遅かったね!」


 また黒装束を着た人が顔を見せる智恵美さんだった。



「智恵美さん、会議はどうしたの?」


「いやぁ〜 こっちの方が面白そうでさ! 会議はやめちゃった!」


 僕は少しイラっとした、こっちは急いで書類をコピーして走って帰ってきたのにこの人たちは遊んでたからである。


「すみません〜もう終わって大丈夫ですか?」


「会長、終わっていいですよね?」


 すると次々と何人かが黒装束を脱ぎ出した。



「いや! あんた達誰!? もはや生徒会役員でもないし!」


「あぁコイツらは今日生徒会室に遊んできてくれた奴らだ」


「……何遊びに来させてるんですか……生徒会室は遊び場じゃないですよ……」






 僕たちが黒装束を脱ぐと書記の小森さんが来ていた。


 この人が小森さん……可哀想に……。



「とりあえず、会長! 会議の途中でしたよね? さぁ始めましょう!」


「えー、せっかく大地が来てるのに会議とかなぁーやる気にならないんだよなー」


 小森さんは少しイライラしている。


 額に血管が浮き出ている。



 ダメですよ……小森さんこの人達に常識は通じないですから……。


 と僕は密かに小森さんを応援しつつ存在を消していた。



「さぁ皆さん、座りましょう! ほら智恵美さんも!」


「えぇ〜、遊んでたいのに〜」


 再び小森さんはイラっとした。


 すると、小森さんの限界がきたのか立ち上がって手を机に叩いた。



「いい加減にしてください! 会長も智恵美さんもこんな状態だから生徒会がどんどん腐敗していってるんですよ! 会議も全然進まない、仕事が進まない! ほとんど副会長がやってるんですよ! 知ってましたか!? あなた方が遊んでいる時、誰かが迷惑してるんです、だからしっかり生徒会の一員としてふさわしい事してくださいよ!」


 小森さんは正論をぶつけた。


 ごもっともな事だと思う。


 ただしそれはぶつける相手が普通の人だったら効果はばつぐんだったのだろう。


 でもね小森さん、ノーマルタイプがゴーストタイプに攻撃しても効果がないんだよ?



「あぁん? お前今なんつった!?」


 美沙ねぇは机の上でジ◯ジ◯ポーズをしている。



「お前、今ウチの弟がどうしようもねぇシスコン野郎とか言ったか、コラ!?」


「「いえ、言ってないですけど!?」」


「さっきから聞いてればこのクソ童貞野郎、いつからお前は正論を言える立場になったんだ? 生徒に意見を聞こうってなってアンケートとったのに男子にしか聞いてねぇじゃあねーか、なんだお前、この学校には女子はいないのか? もしくは女子と認識してるやつはいないのか? 女子ともロクに話せねぇクソ粗チン野郎が粋がってんじゃねぇぞ! 分かったらその汚ねぇブツを使う女でも見つけてきやがれ!」


 美沙ねぇは小森さんにドキツイ悪口を放った。


 小森さんは体をプルプルと震わせ、



「そこまで言わなくてもいいじゃないですかぁーー!」


 と生徒会室を出て行った。



「もう美沙ねぇ、いつもキレたら悪口言いすぎなんだって!」


「……だってアイツが……かすみ! ……すまんが小森を慰めに行ってやってくれ……」


「了解!」


 かすみさんは敬礼して、生徒会室を去って行った。


 透達が小声で言ってきた、



「……なぁもしかしてお前の悪口はあの姉貴から引き継がれてるのか?……」


「……なんか兄弟だな……って思ったよ」


「……あんなもんまだ序の口だよ……本当にヤバいやつはもっと恐ろしいから……」


 僕は智恵美をチラッと見た。



「いやぁすまなかったな! 変なところ見せてしまって!」


「……いえ、今のところ変な所しか見てないので……」


「……よくウチの学校って潰れませんよね……」


 透と歩がビビりながら小声で言っている。


 すると美沙ねぇは僕を掴んで頭を撫で始めた。



「生徒会はともかく、弟とはこれからも仲良くしてやってくれ! こんな奴でもいい奴なんだ!」


 智恵美も僕と腕を組み、



「そうだよぉ! 大地はね! いい子だから!」


 と笑っている。



「ちょっとやめてよ美沙ねぇ! 智恵美!」


 みんなの前で特にコイツらの前でこんなことされるのは恥ずかしくて死にそうだ。



……そろそろいつものが来る!



「ったく! もういいって言ってんだろ! いつまで人の頭撫でてるんだよ! ハゲるはボケ! それとさっきから美沙ねぇ、胸当たってるんだよ! 無駄にデカくなりやがって、毎度毎度「大地〜デカくなったか確認して」って言ってくるけどな! そんな毎日大きくなるわけねぇだろ、風船か! お前の胸は!

あとお前もだよ! 智恵美! 何だかんだみんなの前で僕のお姉さん感、出したいのか知らないけどな! 九九も出来ない、生徒会会計がどの世界にいるんだよ! 漫画の世界にも滅多にいないぞ! そんなんでお姉さん感出すなよ! あと毎度毎度、捕まえる時の拘束の仕方もっと優しくしろよ! なんであんな早くて重いんだよ! お前はス◯ークか! 頼むから軍人にだけやれよ! プロマイド作るバカや、近所の人にやれ僕がシスコンとか、やれ僕がお姉ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよね!っ言ってるみたいな噂を勝手に流すバカ、ロクな姉貴がいねぇんだよ! ……フゥ……フゥ……」



「「……大地……」」


 美沙ねぇと智恵美は呆然としている。


「大地! お前、悪口言っちまったら惚れられちまうぞ!」


「大丈夫だよ……透……」


 そんなこと分かってる……そしてこの人らには効かないことも……。




「大地すごい肺活量だね〜! 私もできるかな?」


「大地、また私の真似か? 嬉しいぞ!そんなにも私の事が好きなのか! もーっと愛してやるぞ?」


「え……これって?」


 透達が唖然としている。


 そう、この人らには僕の全力の悪口は通じない、なぜならこの人達にとってどうでもいいとか、一種の愛情表現だと勘違いしているのだからだ。

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