第12話 黒魔術

「そういえば美沙ねぇ、生徒会何か仕事があるんじゃないの? みんな集まってるし」


 生徒会メンバーが集まっているということは何か会議とかするんじゃないのかと疑問に思った。



「あぁその通りだが、今、小森が書類を印刷していてな、それを待っているんだ」


 美沙ねぇは机に座り、足を机に乗っけた。


 小森とは智恵美と同じ学年の生徒会書記の人だろう。


 こんな生徒会に入るなんて心の底からお悔やみ申し上げる。



「会長! いいですか!」


 当然、かすみさんが手を挙げた。



「どうした、かすみ?」


 真面目な顔でかすみさんは言った。



「今この部屋に巨悪な魔力が近づいているのが確認できました! 対処した方がいいと思うのですが!」


 真面目な顔で言ってるから大変なことなんだろう思ったが……また始まった……、



「そうか……かすみどうすればいい?」


 それに乗っかるバカ1号……。


「とりあえずこの魔術書を読んで結界を!」


「なになに……これみんなで読むの〜? 楽しそう!」


 智恵美はかすみさんがどこから出したか分からない黒い冊子を受け取った。


 何も理解してないバカ2号……。



「さぁ皆さんも!」


「いや……俺はいいかな?」


「ボクもちょっと……」


「ワタシも……」


 三人共、かすみさんのノリにはついていけない素振りを見せている。


 まぁその気持ちはわかる、この年齢になって厨二病みたいなことはしたくないだろう。



 ……残念ながら無視はできないんだよ、みんな……。



「皆さん……やらないんですか?」


 かすみさんはウルウルと涙をこぼしそうだ。


 すると美沙ねぇがそれを見ると、


「そうか、お前たち協力しないか……そうなると学校中にお前たちの悪評を流してこの学校の居場所を無くせることもできるんだが……」


「副会長! その魔術書今すぐ貸してください!」


「なんだか、ボクの魔力が高くなった気がします、副会長!」


「ザキ……! ザキ……! イマナライケルキガシマス! フクカイチョウ!」


「みんなやる気があってよろしい!」


 みんながやる気になっている間、僕は気づかれないようにそーっと逃げようとしたが、



「大地どこへ行くんだ?」


「ちょっとトイレに……」


 美沙ねぇに見つかった。



「さっき行ったよな……大地くん?」


 クソ! 透め! 加担しやがって!


「いや〜、僕には黒魔術とかは苦手みたいで……」


「そうなるとお前の悪評を……」


「残念だね、その手法は使えないよ! 美沙ねぇ!」


 ……だって僕の評判はもう地に落ちてるから。



「新しいプロマイドを配ることになるが……」


「副会長! 結界はどのくらいの強度が理想ですかね?」


 僕は副会長の冊子を持って準備を始めた。










 僕の名前は小森こもり哲也てつや


 この学校の二年生で生徒会書記だ。


 クラスのみんなからは生徒会の仕事って大変だよね? とか言われるがより良い学校を作ってるためと思ったら苦でもない。


 今も副会長から頼まれて必要な書類を印刷してきたところで急いで生徒会室に戻っている途中なのだ。


 残念ながら、今の生徒会は腐敗している、会長は僕に無理難題な仕事を押しつけたり、二年生で同級生の会計、西野智恵美さんはバカで会計もろくにできない、そんな人たちに囲まれた環境だが、唯一、僕の安らぎともいえる人がいる!



 それが副会長!


 あの人は僕の憧れの人でもある、仕事が迅速かつ丁寧にやっていて、会長みたいにガサツで怖い人ではなく、優しくそれでいて面倒見がいい女神みたいな人なんだ!


 実際、彼女に憧れて僕も生徒会に入ったし、あの何を考えているか分からない表情から突然出る笑顔は僕の活力ともなっているのだ!



 今でさえ生徒会は腐敗しているが、いつかきっと、みんなで仕事を協力しあってより良い学校を作っていける理想の生徒会に僕はしてみせるんだ!


 生徒会室が見えた、僕は扉を開ける!



「すみません、遅れました! コピーに時間がかかってしまって……」


 扉を開けると生徒会室は真っ暗になっていて、一つのロウソクを中心に黒装束を着た人たちが謎の呪文をひたすら唱えていた。



「「「「我、汝を召喚してここに結界を創る! バエル……バイモン……ベレト……」」」」


 僕は扉を閉じる。


 あれ?ここ生徒会室だよな?


 いつからここ黒魔術の祭壇になってたんだ?


 僕はもう一度扉を開ける。



「「「「クロセル……アロセル……ムルムル」」」」


「どうなってんですか!! これぇぇぇ!!」

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