第11話 生徒会室に

 なんだかんだウダウダと言って時間をかけて生徒会室には近づかないようにしていたがついにこの時が来てしまった。


 扉の前には生徒会室と書かれた札が貼ってある。



「おぉ……割と豪華な扉だな」


「中もすごい豪華なんだよ! 椅子とかふかふだし!」


「そういえば智恵美さんはなんでそんな詳しいんですか?」


「ん? だって私、生徒会会計だよ?」


「え!? そうだったんですか?」


 そう、コイツはこんな奴だが学校を牛耳る生徒会のメンバーなのだ。


 これから会うであろうもう一人の姉貴も……。



「……入学式で生徒会は前に出たんだけどなぁ〜」


「入学式ではいろいろありまして……」


 透が僕と歩を見る。


 僕ら二人は目をそらした。



「うん! 知ってる! 大地から聞いてるから!」



 智恵美はニコッと透に笑った。



「じゃあ入ろっか!」


 智恵美が地獄への扉を開けた。



 扉を開けるとすぐに見えたのは机に積まれた大量の書類とその机に足を乗っけている人物だった。



「智恵美からメールをもらって待っていたが……遅いぞ……」


「ごめんね美沙ねえ〜 大地がウダウダ言っててさ」


「まぁいい……」


 僕は唾をゴクリと飲む。


 今でさえ、透達にこの姉の本性を見せるのが嫌な自分、ここからいち早く逃げたいと思っている自分がいた。



 ダンっと机を手で叩き、その人物は立ち上がった!



「大地ーー」


 その人物は仁王立ちをして高々と叫ぶ!




「今からセ◯クスするぞ!」


「……え?」


「……は?」



 みんなが入ってきて早々、その人物は弟に性交渉をした。


 みんながボーッとするのは分かる、僕だって慣れてなかったらドン引きしているだろう。



「……はぁ……ツッコむ気にもならないよ、美沙ねぇ……しないから」


「ん? なんでだ? 愛し合ってる二人ならするのは当然だろう……何も今に始まったことじゃないし?」


「ちょっと! 何もうやった感出してるの!? みんな違うから一回もやってないから!」


 僕が美沙ねぇと近親相姦?


 羨ましがってる奴がいたらぶっ殺してやる。



「おっおい……大地、この人は?」


 透が今までの状況にビビっていた。


 他の二人も圧倒されている。



「えっえとこの人は僕の姉貴で……」


「おっ? なんだ客人がいたのか?」


 美沙ねぇは今みんなの事を気づいたように話し始めた。



「自己紹介をしよう! 私は西野にしの美沙みさ、三年生でこの学校の生徒会長だ! 好きな食べ物は大地が食ったもの、好きな映画は大地が見たもの、好きな……」


「はいはい、もういいから!」


 後半はほとんど関係ない話だった。



「そんな扉で立ちっぱなしもなんだもっと入ってテーブルに座るといい!」


 生徒会室の中には客人を迎えるための大きなテーブルがあった。


 そこに僕たちは座った。



「……久しぶりね、大地くん」


 隣から声をかけられた。


「かすみさん……いたんですね……久しぶりというか昨日、家に来てましたよね」


「? 誰のこと?……もしかして私の幻影を見たの?」


「いえ、がっつり、あなたに触れることができましたけど……」


「……まさか組織が私に無断で幻影を作ってたとは……対処しないと」


 もうだめだ……この人に構ってると日が暮れる。



 真島まじまかすみ……生徒会副会長、美沙ねぇの右腕だ。


 スポーツ万能、成績優秀なところはいいが群を抜いた厨二病を患っている。


「それより、今日の会長は会議が長引いて魔力が高まっているわ、気をつけて……」


「そっそうなんですか……」


 僕はもう一度唾をゴクリと飲んだ。


 また変なことにならなければいいのだが……。





「ところで君たちは大地とはどんな関係なんだ?」


「あーっと、友達です、この転校生の子と学校案内してたら智恵美さんに生徒会室に来ないかと誘われて……」


「来たっていう感じです」


 透達は我が姉の出している見えない威圧に怯えながら真面目に答えた。



「あなたもそんな感じ?」


 美沙ねぇはアリーナの方を見る。


「ハイ!ソウデス!……ちょっとはポイント稼ぎするか……」



 アリーナは最後に小声で何か言った。


 すると美沙ねぇから発しられていた威圧がなくなったのが分かった。



「そう! なら良かった……もし友達じゃーー」


「デモデモ! ダイチサンハ、ワタシニヤサシクテ、カッコイイヒトデス!」


 その瞬間、シュッ!という音がしてアリーナのすぐ顔の近くをボールペンが過ぎ去った。


 ボールペンは壁に突き刺さっている。



「じゃなかったらコロシテルところだったから……」


 美沙ねぇは壁に突き刺さったボールペンを立ち上がり、抜いた。


 アリーナは完全に思考が停止してボーゼンとしていた。


 透と歩はこちらを見て目で合図してる。



 透はなになに……?


「……お前の……姉貴……やばい奴……」


 ふん、だから言ったじゃないか行かない方が良いって、僕は止めたぞ?



 どれどれ歩は?


「……今……連絡来た……プロマイド……10枚……売れた」



 そろそろアイツには目にもの見せてやらないといけないらしい。



「そうだ、君たちにもこれを渡しておこう、プレゼントと言っちゃあなんだが……」


 美沙ねぇは、三人に小さい写真のような物を渡した。



「これは私が作った傑作なんだが……」


 僕は写真を見た。そこには綺麗な肌色で恥ずかしいのか少し顔を赤らめている……10歳の時の僕の裸の入浴シーンが撮られていた。


「……大地入浴シーン〜10th anniversary〜だ!」


「ちょっと美沙ねぇ!? 何渡してんだよ!?」


 カードゲームのちょっとした記念カードみたいな説明して美沙ねぇは自陣満々だった。



「布教用にプロマイドを作ってみたんだ、結構な力作なんだぞ?」


「知らないよ誰が得するんだよ! そんなもの!」


 まさか、まだ身近にプロマイドを作ってるやつがいたなんて……。


 歩の方は見たくはないがどうせ歩は少し笑っているだろう。



「まさかと思うけど美沙ねぇその写真、他の人に配ったの?」


「実はまだそんなに配ってないんだ……」


 よし! まだチャンスはあるとにかく奪い返して、配るのを止めなければ!


「……今のところ配ったのは、パパ、ママ、近所の人たち、先生、生徒会メンバー、クラスの人たち、他校の生徒会……まだまだ配りきれてないんだよ」


 僕は頭をガンッと机にぶつけた。



「終わったぁ! もう終わりました! 僕の人生詰みました! もうお嫁さんなんてもらえないんだ!」


 お爺ちゃん、ごめん、身内に社会的に抹殺されたよ。



「安心しろ……大地、顔を上げろ?」


 美沙ねぇは優しく僕に語りかける。


「美沙ねぇ……」


「お嫁には私がなってやる……」


「最悪だよ! そもそもアンタが原因なんだけどな!」


 この人頭狂ってるんだった。

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