第10話 逃走後……
「はぁはぁ……ここまでこれば大丈夫だろ……」
僕たちは体育館から一目散に逃げてきた。
あのままいたら先生に大目玉を食らっていただろう。
「ハァハァ……」
「アリーナ……大丈夫?」
無我夢中で走ったため、みんな息が荒れていた。
「……なんで私がこんな疲れることしなきゃいけないのよ……」
「? アリーナ? なんか言った?」
「……ナンデモナイデスヨ!」
ん? ーーブルブル! ……なんだか悪寒が……
「あれ? 大地?」
その声を聞いた瞬間、僕は透達を置いて一目散に逃げようとした……が!
「なに、逃げようとしてるの?」
智恵美が瞬間的に移動し、僕の体を軍人もビックリするような速さで拘束した。
コイツ、無駄に運動神経高いんだよな……。
「放せ! 脅威が僕に近づいてるんだ!」
「え、本当!? 大丈夫! 私が守ってあげるからね!」
「いや! 現在進行形で脅威に攻撃されてるんですけど!」
「大地、その人は……?」
透達が今起きていることに処理が追いついておらずポカーンとしてる。
クソ! コイツらには知られたくなかったのに!
しかし隠し通せる状況じゃないらしい、仕方ない……。
「……紹介するよ……僕の」
「ーー愛しのお姉ちゃん、智恵美だよ! 最近、僕が姉弟ではなく異性として意識し始めた人で……」
「ちょっとあたかも僕が言った風にしないでよ!」
智恵美は後ろに隠れて少し声を低くして僕の代わりに喋りやがった。
「……大地、そうだったのか……」
「ダイチサン、キョウダイデケッコンハ、ツミデスヨ?」
「……大地がなんでボクに惚れないか理由がはっきりしたよ……」
「いや違うよ!? コイツのことなんて意識してないから! ……あと歩に惚れない理由でもないから!」
また誤解が生まれてしまう。
その前に対処しなければ!
「みんな聞いて! 僕はコイツのことなんか異性として意識してないし何なら嫌いな部類なんだ!」
「そんな……昨日、あれだけ二人の人生について考えてたのに……子供も二人欲しかったのに……ウルウル」
「大地……お前……」
「ダイチサン、キョウダイデアカチャンツクルノハ、ホウリツイハンデスヨ?」
「大地がどうして……僕に興奮しないか分かったよ……」
「いや人生ゲームな! ゲームの話だから! あと歩はマジで黙れ!」
いかん……だんだんみんなの目が僕を引いている目になった。
みにくいアヒルの子も最初はこんな目で見られていたんだろう。
「とまぁそんなこと置いといて、大地達、こんなとこで何やってんの?」
「……話、ガラッと変えすぎだろ……この転校生を学校案内しようと思って……」
「コンニチハ、アリーナデス!」
智恵美がニヤニヤしている。
なんだか嫌な予感……逃げる準備を……。
「あ〜あ、なるほど! じゃあさ、特に回るところないなら生徒会室見に来なよ!」
「ーー散開!」
僕は木の葉の忍びもビックリする速さでスタートダッシュをしてその場から去った……が!
すぐに智恵美に拘束され、
「ほら、大地も行きたがってるしさ!」
「うがぁー! 放せ! 絶対行くもんか!」
アイツがいるとこになんで行かなきゃいけないんだ!
「生徒会室か〜 あんまり簡単に入れなさそうだし行ってみようぜ!」
透がふざけたことを抜かしている。
「うんうん! 美味しいお菓子とかあるよ〜」
「ちょうどお腹空いたし、行こうよ!」
この金髪野郎、こっちを見てニヤニヤしてやがる。
「イキタイデス!」
アリーナも同意した。
「じゃあ決まり!出発!」
僕らは智恵美のせいで行きたくもない生徒会室に向かうこととなった。
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