第9話 部活体験

 放課後になった……。


 教室はみんな帰る準備をしている。



「よし、じゃあ、とっとと学校回ろうぜ!」


「ミナサン! オネガイシマス!」


 アリーナは頭を下げた。



「最初どこ行くの?」


「うーん、とりあえず、体育館じゃないか? アリーナも部活とか見たいと思うし」


「おっけー!」


 僕らはとりあえず、多くの部活が活動をしているであろう体育館に向かうことにした。


 ちなみに僕たち三人は学校では割と珍しい帰宅部で部活をやってる人たちからは煙たがられている。



「ヘェ〜! アリーナはお母さんがカナダ人でお父さんが日本人なんだ、いつ日本に来たの?」


「エッエト……小学……イッイエ! サンカゲツマエグライデス!」


「それじゃあ、まだ日本語が不慣れだよな〜」



「……ふぅ〜……危なかった……」


「ん? 何か言った?」


 アリーナが小声で何か言っていた。



「ナッナンデモナイデスヨ! タイイクカンタノシミデス!」







「おっ? バレー部がいるな?」


 体育館の入り口に入るとまず最初に見えたのは確か加恋が在籍しているバレー部だった。



「あれ? 大地達じゃん、何してるの?」


 部活の準備をしていた加恋にちょうどあった。


 いつも思うが……練習着がでっかい胸ではじけそうだった。



「転校生のアリーナに学校を案内してるんだ」


「アンタ達が? またなんか企んでるんじゃないの?」


 加恋が僕らを疑いの目で見ている。


「失礼な! ただ単なる親切心でやっているのに!」


「あらそう?」


 加恋は少しも信じてない感じだった。



「そちらが転校生の人?」


「おう! アリーナだ、アリーナ、この巨乳野郎がメスゴリラだ」


 僕は加恋を指差して言った。



「ちょっと、一つも私の自己紹介されてないんだけど!?」


「なんだよ、文句多いな……はいはいこの人が加恋です」


「加恋です! アリーナって呼んでもいい? よろしくね!」


 加恋はアリーナに握手するため手を伸ばした。



「……チッ!……私より胸大きいじゃねぇかよ……」


「ん? アリーナ?」


「ーーヨロシクオネガイシマス!」


 アリーナが加恋の胸を凝視しながら何か小声で言っていた気がするんだが気のせいだろう。



「あっ! アンタ達! 何しに来たのよ!」


 この甲高い声は……



「江之島さん……」


「お前みたいな変態が私の名前を呼ぶんじゃないわよ!」


 登場から酷いな……。



「純子……声が大きいよ」


「仕方ないじゃない! コイツらを追い出すためよ!」


 この甲高い声で僕らを毛嫌いしているのはよく加恋と一緒にいる江之島純子だ。


 加恋と同じくバレー部に在籍していてしかも同じクラスなのだ。


 どうしてこうも僕ら……いや僕をこんなに毛嫌いしてるのかというと、



「江之島さん……まだ悪口言ったこと怒ってるの?」


「まだ? あんなこと言っといてよくそんなこと言えるわね!」



 そう、僕は最初の頃に加恋に紹介されて江之島さんに会ったのだがその時に偶然に偶然が重なってドキツイ悪口をおみまいしてしまったのだ。


 悪口を言われたことが無かったのか江之島さんはその場で号泣、一躍、僕は有名人になったのだ。



「……絶対許さないんだから……」


 江之島さんは僕にとんでもない殺気を出している。



「純子ちゃん! こんばんは!」


「ーーあっ! 歩くん! 来てたの?」


 僕とは打って変わって歩にはとんでもなく可愛い笑顔で接していた。


 ……何この差別……。



「これから部活? 怪我しないようにね!」


「うん! 心配してくれてありがとう!」


 歩と江之島さんはしっかりと両手を繋ぎながら話している。



「純子ちゃん! 俺も心配してるから!」


「うるっさい! クソ粗チン野郎! アンタに心配されたら逆に嘔吐して病院行くわ!」


「……酷い……、あとこの学校って粗チンっていうの流行ってんの?」


「……なによ、なんでこんな可愛い子いるのよ、この学校! 私置いてきぼりだし……」


 アリーナがまだ小声で何か言ってる。



「どうする? ちょっとバレー部、体験してく? 先輩達まだ来ないと思うし」


「いいじゃんやってこうよ」


「はぁ!? なんでアンタ達も……」


「純子ちゃん……いいよね?」


「言いに決まってる! さっアンタ達、準備しなさい!」


「アリーナもやるよね?」


「エッエト……ハイ!」


 意気揚々とアリーナは手をあげる。


「……やったことないわよ、バレーなんて……いや? でもここで上手いとこ見せれれば……」


 アリーナは小声で何か言いながら顔が自信満々になっていった。



「じゃあ3対3の試合ね、アリーナは私と純子と、そっちはアンタらは三人ね」


「へっただの帰宅部がバレー部に勝っちまうぞ?」


「寝言は寝て言いなさいよ!」


 僕らはそれぞれコートに分かれた。



「お前ら、運動経験は? ちなみに僕は中学の時、陸上部」


「俺は中学はパソコン部、その早すぎるタイピングから『滝中のスタープラチナ』って呼ばれてた」


「ボクは中学の時は、黒魔術研究部、高度な魔術を会得してことから『西中のハーマイオニー・グレンジャー』って呼ばれてた」


「オーケー、二人とも運動経験はゼロか」


 まずい、勝てるビジョンが見えないな。



 悔しくも加恋と江之島さんは運動神経抜群で一年生ながらレギュラーだ、少しも勝てる気がしない。



「まぁ任せろ、大地、もしかしたら三人ともスタンドが現れるかもしれないだろ?」


「そうだよ、何のためにリサリサに波紋を教えてもらったの?」


「……初耳だし、僕たちいつからヴェネツィアに行ってたっけ?」


 いかん、集中しなければ、コイツらに構ってたら負けてしまう。



「じゃあ行くわよ! ほい!」


 加恋がサーブを打ち上げた。


 初心者には優しい軽いサーブだ。



「おーらーい!」


 透がボールが落ちる場所にすでにいた、でかした!


 そのまま上げろ!


「ひでぶっ!」


 某世紀末の雑魚キャラみたいな声を上げながら、透は顔面でボールを受け止めた。


 しかし、ちょうど上手いぐらいに上がった。



「はい! ラスト、大地!」


 不慣れながら歩むがトスを上げた。


 そしてネット付近で僕は飛び、タイミングよくスパイクをした。


 ドンっと地面にあたり見事一点入った。



「よしゃあ! 一点だ!」


「やったね!」


「俺ら勝てんじゃない?」


 三人でガッツポーズした。



「ヘェ〜やんじゃない、アナタ達!」



「へっ! 一体いつから俺たちが運動神経ゼロのド陰キャ達と錯覚していた?」


「別にそこまで思ってなかったけど……」


 透の変な自信から透が◯番隊隊長に見える!




 続いて、僕らのサーブ。


 透が下からポーンっとボールを打ち、相手コートに入った。



「ほっ!」


 加恋が上手く、ボールをレシーブした。



「はい!」



 それに連動するように江之島さんがトスをアリーナに、


「ハアァァ!」


 アリーナがネットの近くで叫びながら飛び、タイミング良くボールを打った。


 ボンっとジャストミートしたボールは一直線に上に上がり、ガッシャン! という軽快な音を出した!



 見上げると体育館の電球が割れていた……。



「おぉぉ……」


 僕たちはアリーナを見ると彼女は冷や汗をダラダラかいていた。


 同時に加恋や江之島さんも顔を引きつっていた。



「アリーナちょっとこっち来て……」


 アリーナは僕らは三人の近くに駆け寄ってきた。


 そして僕ら三人は顔を合わせてうなづいた。


 一気に僕たち四人は体育館の外に思いっきり走り出した!


「あっ! アンタたち待ちなさいよ!」


 加恋が逃げる僕らを止めようとする!



「「「アリーヴェデルチ(さよならだ)!」」」


 僕らは急いで体育館を脱出した。

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