第6話 諸悪の根源
「ーーとまぁこれで状況は分かったよね、これから大地は女の子に悪口を言わないこと、こうも簡単に女の子を勝手に惚れさせたら大変な事になっちゃうからね」
「……でも大地が悪口言わないって円周率、最後まで解くぐらい難解だよ?」
あれ? 円周率ってまだ最後まで解かれてないよね…… 。実質、無理って言いたいのコイツ?
「確かにね〜 パラシュートなしでスカイダイビングするくらい難しいよな」
ーー人はそれを不可能と呼ぶ。
「あなた達の言う通り、大地に悪口を言わせないようにするのは本当に難しいことよね」
加恋は僕をチラッと見る。
「……分かったよ。 できる限り僕が女の子に近づかず、悪口言わないように意識してみるよ」
「意識を持つだけでも十分ね」
「大地、俺たちも全力で協力するぞ」
「任せて、ボク達、友達だろ?」
「お前ら……」
僕たちは握手をして友情を確認した。
「とりあえず、お前の顔、紙につけてコイツは変態です、近づかないでくださいって書いてばら撒くわ」
「何するつもり!? 指名手配みたいじゃん!?」
「学校以外にばら撒くなら任せて! ボクのファン達に協力を促すから!」
「まさかの地域絡み!? そんなことに歩のファン使わないで!?」
「懸賞金5ベリーぐらいじゃないの?」
「どっかの一味のトナカイぐらいの価値しかないの僕!?」
僕は本当にこの人たちが嫌いになりそうだ。
授業が終わり、夕方になった。
なんとかあれから意識的に女の子には極力近づかないようにそしてかつ喋らないようにして過ごした。
ただその分みんなには迷惑をかけなかったが、思春期の僕が女の子に意識的に近づかないのは少しと言うよりとても抵抗があった。
というそんな気持ちを誰にも言えることなく、僕は帰る準備をしていた。
そして僕は一人、教室を出た。
透はバイト、歩は何か他に用事があるらしく、先に帰っていったのだ。
いつも通りの道をとぼとぼと歩いていると、
「大地〜!」
「どわぁ!?」
誰かにいきなり後ろから抱きつかれたのだ。
「この感じ……智恵美か!?」
後ろをみると確かに抱きついているのは一つ上の姉の
「正解!ニヒヒヒ!」
智恵美はニヤニヤと笑いながら僕に抱きついたまま離れない。
突然だが僕には三人の姉がいる。
三人の姉は年が近いこともあり多分普通の兄弟よりも仲が良い方なのだろう。
でも僕はこの姉達を許しはしない。
何故か? それは僕の照れ隠しで悪口を言ってしまうようになったのはコイツらが原因なのだから。
コイツらは世で俗に言うブラコンというやつでスキンシップが度を過ぎてるのだ。
例えば、一緒にお風呂に入る、一緒に寝るなど朝飯前である。
子供の頃からそれをやり続けられ、恥ずかしいからやめろと言っても聞かず、最終手段で暴言、悪口を言っていたがそれがこの体質を生む結果となってしまった。
この事が原因の一つで姉貴達にしか言わなかったのにそれが自然と他の女の子にも言ってしまう様にもなったのだ。
「大地は今、帰り?」
「あぁそうだよ! とにかく離れろって!」
智恵美は未だに僕を放さない。
周りの人が僕たちを見て、気まずそうにして目をそらしている。
「なんで〜? お姉ちゃんが愛しい弟に抱擁をしてあげてるんだよ?」
「場所を考えろよ! みんな見てるだろ!」
「え?いいじゃん? 見たい人には見せてあげようよ!」
「誰が見たがるんだよ!」
「友達のえみちゃんは男の子はこういう兄妹のハグとかをビデオで見てるって言ってたよ? ーー下半身裸にして……」
「そう言う事、大きい声で言うなよ! あとその友達とは縁を切りなさい!」
バカな姉貴がそんなことを言ってるせいで周りに人がいなくなってしまった。
「ふぅ……」
やっと智恵美は手を離し、僕は自由になった。
「じゃあ家帰ろっか!」
智恵美は僕の手を握った。
「いや何、自然に手握ろうとしてるの?」
「またまた〜握りたいんでしょ?」
「流石に15、16歳の兄弟が手繋ぎながら家に帰ってきたらご近所さんからの視線が痛いよ!」
「大丈夫だよ! ご近所さんにはもう大地が私のことが大好き過ぎて仕方なくやってるってもう説明してあるから!」
「いや、何の解決にもなってないけど!?」
やはり兄弟と触れ合う時間が一番僕にとって苦痛な様だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます