第5話 状況を把握しよう

 女の子は透の胸ぐらを離し、またベンチに座った。


「おいおい、大地、お前なんか変な薬でも飲ませたか?」


「今言えば、罪は軽くなるよ」


「え!? 何でそんな性犯罪者みたいな扱いするの!?」


 二人は顔を合わせて、真顔で


「「違うの?」」



 僕って信頼ないの? 僕は泣きそうになりました。



 歩が突然電話をし始めた。



「歩、誰に電話してるの?」


「ん? こういう事態を処理してくれる専門家」


 すると突然屋上の扉が開き、息を荒げながら加恋が入ってきた。


 そして加恋は僕の肩を持って、



「アンタ何やってんの! 性犯罪なんて起こしたら家族のみんなや他の人達が悲しむよ! さ! 一緒に出頭しましょ!」


「いやなんで俺が性犯罪、犯したみたいになってんの!?」


「え? だって歩くんが大地が屋上で女子高生に薬を嗅がせて調教して犯罪を犯してるって聞いて……」


 僕たちは歩を見ると、歩はよそ見しながら口笛を吹いていた。



「歩〜!」


「緊急の方が加恋ちゃんすぐ来てくれるかな〜 ……って思ってさ」


 歩は言い訳をし始めた。



「なに……嘘なの? はぁ……心配したぁ〜」


 加恋は大きなため息をして座り込んだ。


 失礼じゃないか? こんなこと僕がやるはずがないのに、


「いやいや、加恋、本当に俺がそんなことするっと思ってたの? どんだけ僕のこと危険なやつと思ってるの?」


「……一日に一回は女の子を泣かせる女の敵……」


「それに関しては何も言えません、ごめんなさい」


 どうやら僕は割と危険なやつだったみたいだ。



「ーーでどうして私を呼んだの?」


「いやぁ実は、大地が女子高生をどMに調教しちゃって……」


「大地……アンタ……」


 加恋は拳を構えて臨戦態勢をしながら蔑んだ目で僕を見ている。



「違う、違う! 透の嘘に決まってるでしょ」


「すまんすまん、冗談だ、本当は女子中学生を調教していて……」


「大地……アンタ……!」


「だから違うって! これじゃあ話が進まないよ!」



 場を落ち着かせ、透が今まで起きた経緯を加恋に説明し始めた。







「……なるほど、なんとも信じ難い状況になってるみたいね」


「そうなんだ……助けてよ、カレえもん!」


 歩が助けを求めた。



「ーー人をネコ型ロボットと一緒にしないで…… とりあえずアナタ本当にこの男の事好きなの?」


 加恋はベンチに座ってる女の子に僕を指差しながら聞いた。


「いえ、別に?」


 女の子は読書を続けていた。



「大地?」


 歩は僕を見た。


「……ブス!」


「好きイィィ!」


 女の子は急に読書をやめて、僕にときめいていた。



「こんな感じです」


「……確かにこれはちょっと処理が難しい案件ね」


 加恋は頭を抱えている。



「続いて……透?」


 歩は透を見た。



「その眼鏡あんま似合ってないね!」


「お前のその眼球よりはマシだわ」



「シクシク……こんな感じです」


 透は少し涙目になっている。



「まぁこれはこれでいい気分だわ」


「……確かに」


「なんか俺の扱い酷くない!?」


 透のライフはもうゼロに近かった。



「逆に、褒めてみたらどうなるの?」


 加恋は疑問に思ったのか、そんなことを言った。


 確かにどうなんだろう?



「かっかわいいね……!」


 少し照れながら僕は女の子に言った。



「ふっ……」


「ちょっと! 今この子僕のこと鼻で笑ったんだけど!?」


「まぁそうでしょ」


「童貞感が隠しきれてないからな」


「隠すどころかノーガードよね」


 散々な言われようだ。



「じゃあ私、用事があるので」


 女の子は屋上から去っていった。



「状況を整理しましょ、今の感じ見てみると、どうやら大地の悪口には何か魅力があってそれが女の子を惚れさせてしまう、逆に褒めたり、告白まがいのことをしても何の魅力はないと……」


「大地、お前すんごいことになってるな」


「そういえば、これって他の女の子にもやったの?」


「いや、登校中に一人なっただけで、みんなといる時はこれが初めてかな」


「じゃあ実験の為に他の女の子にもやってみましょう、ちょうど女の子がいるし」


「えっどこにいるの? 男しかいないけど……」


「一度アンタとは白黒ハッキリつけたほうがいいらしいわね」


 加恋が臨戦態勢に入った。



「嘘です、嘘です! 加恋さんがいました!」


「分かってるならよろしい じゃあやりましょう!」


「でも大丈夫? 加恋ちゃん、成功しちゃったらアイツに惚れることになるんだよ?」


「世界のためよ、仕方ないじゃない……」


 え? 僕のこと好きになるのって災害レベルなの?



「じゃあいくよ! ……この暴力雌ゴリラ! ジャングルに帰りやがれ!」


「……、……」


「どう?」


 加恋は立ったままだった。



「加恋ちゃん大丈夫か?」


「……何ともないわ、単純に大地に殺意が湧いただけ」


 どういうことだろう、あの子が特殊だったのかな……。



「これは私の推理なんだけど……大地の悪口に慣れてる人はメロメロにならないんじゃない?」


「おぉなるほど! 確かに、あの子が好きになったポイントは大地の悪口だったし」


「日頃から悪口に慣れてる異性、加恋ちゃんとかは効かないってことか……」


 なるほどそれだったら筋が通る。



「さすが、見た目はボイン、中身はガサツの名探偵!」


「アンタの頭をサッカーボールみたいに蹴ってあげようか?」


 加恋は蝶ネクタイの少年が犯人と間違うくらいの殺気を出していた。

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