第3話 作戦会議


 作戦会議が始まった。大量破壊兵器対策会議。レジスタンスに広がった驚きはギュウニクの比ではなかった。

「止めろって言ったって」

「ウチにそんなリターナーいませんよ」

「というかミサイル止めれるリターナーって一体どんな力なんすか」

 エンテンジさんは頷く。

「皆の言う事も分かる。だが今回の事はアダチレジスタンスだけの問題じゃない。他のレジスタンスにも協力を要請する」

 ざわつく本部内。それもそうだ。レジスタンスはレジスタンス同士で仲がいい……わけではないのだから。

「あてはあるんですか?」

「この緊急事態に協力を断れるヤツはいないと思いたいがね」

「というか一言いいたいんですけど!」

 メンバーの一人、ユキモリが立ち上がった。


「どうした」

「ウチらレジスタンスって名乗ってますけど、最初は植物操れる系のリターナーとか炎を出せる系のリターナー集めて食いつないでいただけの集団だったじゃないっすか! それなのにいつの間にかカズトみたいな戦闘狂まで引き入れて正義の味方ごっこまでし始めた! その次はミサイル!? 正直付き合ってられねーっすわ」

 そう言ってユキモリは立ち去ろうとする。

「おいどこ行く気だ。もうすぐミサイルが飛んでくるんだぞ」

「穴でも掘って地下に逃げますよ,生憎、俺はミサイル止めれるリターナーじゃないけど、穴は掘れるリターナーっすからね」

 ユキモリの異能は地面を操る能力だ。機兵が多い時なんかはその能力で地下から奇襲を仕掛けた事もある。


「そうだよ、ミサイルを止めるより逃げた方がまだ生き残るチャンスがある!」

「ねぇ! ユキモリ、私も連れて行ってよ」

「あ、ズルい! ねぇ私も私も」

 会議はユキモリの一言で空中崩壊した。いつもはビシッと皆をまとめるエンテンジさんも今回ばかりは止めようがないみたいだった。

「それがお前の決定なら……俺は止めない」

 もうほとんど立ち去ろうとしていたユキモリが小さく「どーも」と言った。

 ミナギは力なく頭を垂れている。協力が得られなかった事がショックだったのだろう。エンテンジさんも最早ほとんど人がいなくなった会議室で一人腕を組んでいる。

「あのエンテンジさん」

「どうしたカズト、俺は他のレジスタンスにも避難を促さにゃならん。手短に頼む」

「俺がその大量破壊兵器ってヤツを止めに行ってもいいですか?」

 ミナギがハッと顔を上げた。よし。対するエンテンジさんは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。


「お前本気か!? 一人でなんて死にに行くようなもんだぞ!?」

「それでも俺やってみたいんです。俺のこの拳がどこまで役に立つか確かめたいんです」

 思わず呆れるエンテンジさん。手を顔にかぶせやれやれと首を振る。

「お前の拳でミサイル全部ぶっ壊そうってのか?」

「はい!」

 俺は拳を握りしめて返事をした。エンテンジさんは俺の目を見てどこか覚悟を決めたような表情になり、そのままミナギの方に顔を向ける。

「ミナギさんミサイルの発射ルートは分かっているんだったな?」

「えっ、あっ! はい! でも異界のてっぺんから真ん中に落とすルートですよ? カズトさんが地面に居たんじゃ意味がないのでは……」


「そこは心配いらない。俺は空が飛べる。俺がカズトをミサイルまで送り届ける」

 エンテンジさんの異能は浮遊だ。かなり高くまで飛ぶ事が出来。空から機兵の位置などを探り皆に指示を出す事もある。

「二人だけで本当にやるんですか? 先ほどの方々が言ってたみたいに避難した方が確実ですよ……?」

 そこでエンテンジさんはため息を吐いた。

「俺はともかくコイツ《カズト》は一度言い出したら聞かないんです。一人で死なれても寝覚めが悪い。それにレジスタンス同士が仲が悪い現状。他レジスタンスはこっちの忠告を聞かない可能性もある。ウチだけ逃げても他のレジスタンスにも被害が

及ぶのも……まあ寝覚めが悪いんでね。最後まであがかせてもらいますよ」

 ミナギは目にいっぱいの涙を浮かべて、また頭を下げた。

「よろしく……お願いします……!!」

「ああ、任せろ!」

 俺は拳を天へと掲げてみせた。ミサイルなんてぶっ壊すと意気込んで。

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