第4話 告白
昼休み――僕は同じクラスの矢田順子に呼び出され、屋上への階段を上っている。
僕自身は矢田に興味はない。が、あまり良い噂を聞かないことだけは知っている。彼氏が何人もいるだとか、パパがいるだとか、夜の蝶をしているだとか……。
――気が進まないよなあ……。
屋上へ出る扉の前で僕は立ち止まっている。
なんとなく、志穂にも申し訳ない気がして足が前に出なかった。
「わっ……!」
「!!」
いきなり扉が開き、矢田が目の前に現れた。
――うわ……気まずい。
思わず彼女に背を向けた。
「ちょっとお……、奥森」
僕の前に回り込んで矢田は唇をとがらせた。
「せっかく告ろうと思ったのに」
僕はその言葉に顔が熱くなるのを感じた。
志穂から言われた時はなんともなかったのに……。なんでだ?
「まあ、ここでもいいか。誰も来ないしね」
矢田が階段の下を覗き込んでから僕へと向き直る。
「改めて……。 奥森、アタシと付き合わない?」
矢田が小首をかしげてこちらを見ている。
「ごめん」
「やっぱダメかー」
矢田は僕にくるりと背を向けてぽつりと呟いた。
「悪い。じゃあ、そういうことだから」
矢田の横を通り抜け階段に向かう。ふった相手の顔を見る趣味も僕にはない。
「待って」
「……何?」
僕は振り向かずに言った。
「あのさ……、自分がふられたからってわけじゃないけど……」
「…………」
「神田さん」
何故か、僕の心臓はドキンと大きく脈打った。
「ふったのに、一緒にいたり、幼馴染みだからって友達でいるのって彼女辛くないのかなって」
思わず僕は振り返った。
「ヤダー、すごい顔してるよ、奥森……」
僕は……、志穂に酷いことをしていたのか? ずっと……ガキの頃から一緒にいて、それが当たり前で、それは志穂が僕を異性として好きだからと言っても変わらない――。それは僕が志穂の気持ちを聞いて、それに応えられなかった時に志穂のほうから言ってきたことだった。
「普通さあ、ふられたら気まずくて一緒にいられなくね? 奥森、酷なことしてる自覚ないんだね」
僕にはもう目の前にいる矢田のことは見えていなかった。
――志穂に酷いことをしている……。
気がつけば教室の前にいた。そして……。
「志穂……」
早鐘のように鳴る心臓を感じながら、きょとんとこちらを見る志穂へと近付いていた。
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