第35話もちろん罰はある
「宿題を今日提出できなかったヤツは、後でそれぞれ提出に行って謝るんだぞ。あと、もちろん宿題を忘れた罰もあるからな、放課後帰らずに教室に残っているように。」
ホームルームを終えると先生はそれだけ言って教室から出て行ってしまった。罰があると聞いて主に提出できなかった人たちだが、教室が一気に騒がしくなる。宿題を集める際に提出できなかった人は一人一人確認されて名前を控えられている。逃げ場はないのだ。
今日は始業式で授業があるのは午前中のみ、生徒たちには久しぶりの友達との再会や、いつもより部活動の時間が取れるラッキーデイなのだが、罰で放課後の自由を奪われた者たちは、まるで鳥かごに捕らえられたようなものだ。そこらじゅうで絶望の声が聞こえてくる。
ていうか、けっこう宿題忘れてる人がいるみたい。そして、その中にはもちろん姉帯さんと新妻さんのふたりも含まれていた。絶望に打ちひしがれているふたり。
「終わった。儚い計画だった。罰ってなにさせられるんだろ。」
「うぅ、弟月くん。今日はお姉さんと結を見捨てて先に帰っていいからね。」そうは言いつつ泣きまねをしながらチラチラとこちらを見てくる姉帯さん。あざといカワイイ。
「ぼくも残るよ。ね、元気だして姉帯さん。」
「弟月くん。明日香は気にしなくていいから、無理しないでいいんだよ。」一緒に残ることを申し出ると新妻さんが気を遣ってくれる。優しみに溢れる新妻さん。普通にカワイイ。
「大丈夫、あの時ぼくが起きていればこんなことにはならなかっと思うしね。」
「いいの?弟月くん。」
「うん!罰が何かわからないけど、頑張って終わらせてその後でお疲れ様会でもしようよ。」
「いいわね!お姉さん今日はクレープが食べたいな。」
「ちょっと明日香!そこはわざわざ残ってくれる弟月くんが決めるべきでしょ。弟月くん、パフェがいいよね。」
「ちょ、結!それ誘導⁉」
ぼくの言葉になんとか元気を取り戻してくれたふたり。よかった。やっぱりふたりは笑顔が一番だね。ふたりが元気だと一緒にいるぼくまで元気が湧いてくるみたいだ。
まぁ、ぼくたちのやり取りを見てクラスの男子の負の感情はより一層高まったみたいだが…。
ぼくはなんとかクラス中から集まる冷たい視線に耐えて放課後まで過ごすのだった。
放課後。
教室にはぼくと姉帯さん、新妻さん。他にも宿題を忘れた男女数名、全員で10名弱ほどが残っていた。帰らずに待っていると担任の先生がやってくる。
「お、ちゃんと全員いるな。感心感心。罰が嫌で逃げてたらもっとひどい目にあっていたからな。」先生は物騒なことを言っていた。まぁ名前を控えられているので逃げる人はいないと思うけど。
「先生、それより罰って何をするんでるか?」たまらず生徒の一人が質問する。実際、朝から罰があるとだけ聞かされて内容を知らなかったのだ。放課後までじらされてみんないっぱいいっぱいだった。
「おお、それな。第一公園。あるだろ?学校のすぐ近くの。お前たちだけであそこの清掃だ。」
「…え?」
先生はさらっととんでもないことを言った。聞かされた全員がポカンと口をあけている。もちろんぼくも。第一公園。学校からすぐ近くにある大きな公園。大きな公園だ。この辺では一番大きい公園で、帰りがけの学生や近隣の人々の憩いの場だ。何度も言うがかなり大きい。池とかもある。それをこの10名弱で清掃⁉
「いやいや!絶対無理でしょ!」
「何時間かかるかわかんないですよ⁉」他の人たちが反論するが無理もない、無茶もいいとこである。
「落ち着けって、何も全部やれなんて言ってない。一人ゴミ袋一つ。これを満杯にゴミを拾ったら終了だ。それくらいならできるだろ。」そう言って先生は大き目のゴミ袋を掲げる。
一人一袋分のゴミ、袋は大きいが公園全体をするよりは、かなりマシである。みんなもそれくらいならと納得ムードに。
「よーし、それじゃあ袋と軍手を渡すから行ってこい。あぁ、ゴミ拾ったら先生のところに見せに来いよ。そのまま帰ったヤツはもっとひどい目にあうからそのつもりでな。」
さらっと最後に怖いことを言って先生は教室から出て行った。
「やるしかないか、チェックされてるならしっかり拾わないとね。」
「あぁ~でも面倒くさい。弟月くんからのご褒美があれば、お姉さん頑張れるとおもうんだけどなぁ。」
出ました!チラチラ横目で見てくる姉帯さん!あざとカワイイ。
「ご褒美、あまり大したことはできないけど、何がいいのかな?」
「ちょっとタイム!協議に入りまーす!結!」
「わかってる。ここは慎重に…。」
こうしてふたりの厳正なる協議?の結果、お疲れ様会でぼくが、ふたりにパフェをアーンで食べさせてあげることが決まったそうです。
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