第4話 タバコ事件⁉ ~その2~
翌日、登校してから何かいつもと違うことに気づいた。
教室に着くまでの間、すれ違う生徒たちの様子が変なのだ。
なんだか みんなの様子がざわついている ざわ…ざわ… と聞こえてきそうだ。
ぼくはまだ まぁそんな日もあるか 何かあったのかな?とそこまで気にしてはいなかった。
だが、自分のクラスに着いた途端、状況は一変した。
教室には、体格のよい、強面の男性教師がいた。
担任ではない、あまり見かけないが、あれは確か生徒指導を担当している教師のはずだ。
その教師が女子生徒2名に詰め寄っており、他のクラスメイトたちは、遠巻きに、その様子を眺めていた。
一体何がと思い、クラスメイトたちをかき分けて教室の様子を伺うと、
なんと、生徒指導の教師に詰め寄られていたのは、
クラスのギャル
ふたりと教師は何らかの理由で、激しく言い争いをしていた。
何が起きているのかわからず、周りのクラスメイトに状況を確認してみることにする。
丁度隣にいた山田くんに話を聞いてみる。
「あの山田くん、何があったの? なんで生徒指導の先生がいるの?」
「ああ、なんでも今朝うちの教室にタバコの吸い殻が落ちていたらしいんだ。その件で、あのふたりが疑われてるようだぜ。」
「え、たばこ⁉ でもなんで、あのふたりが…。」
「まぁ あの見た目だからな、教師からしたら真っ先に疑いの目を向けたんじゃないか、本当かどうかわからないがな。」
「そんな、それだけの理由で⁉」
「今は誰も真相は知らないからなんともな、お前はなんか知ってる? …えっと、あれ?」
くっ 山田くん ぼくの名前覚えてないな
なんかノリで話をしてたけど、最後に誰だっけこいつ? みたいな顔をぉ
って今はそれどころじゃない!ふたりの疑いを晴らさないと
だって昨日の放課後は帰るまでふたりと一緒に作業をしていた。
ふたりが教室でタバコを吸うことなんてなかったのだ。
そうこうしている間にも生徒指導教師とふたりの言い争いはヒートアップしていく、、
「だから!違うって言ってるじゃん!」
「うるさい!お前たち以外に誰がいるか、タバコを持っていそうな生徒なんてこのクラスにはお前たちくらいじゃないか、入学してそうそう問題を起こすとはな。」
新妻さんはかなりイライラしているようだった。いきなり疑われたら無理もない。
「わたしたちタバコなんて吸ったことないんですけど、、」
「どうだかなぁ 髪は染めているし、スカート丈もかなり短いじゃないか 他にも校則違反しているんじゃないか?そんな派手なナリで、タバコくらい普通に持っていそうだなぁ。」
姉帯さんは冷静なような冷めたような感じで静かに反論していた。
「見た目だけで犯人あつかいですか?なんの証拠もないのに、それってどうなんですかね。」
「証拠なら どうせお前たちが持っているだろう?鞄を持って生徒指導室に来い!そこでみっちり事情を聴いてやるからな。」
「はぁ、だから違うって言ってるじゃん。めんど。」
「なんだと!いいから さっさと来るんだ!」
生徒指導の教師の手がふたりに伸びる 無理にでも生徒指導室に連れていく気だ。
それを見た瞬間、とっさに身体が動いてふたりと教師の間に割り込んでいた。
「え⁉ お、弟月くん⁉」
「弟月くん⁉ 何して、、」
「⁉ なんだお前は? もしや、このふたりを庇う気か?」
「……。」
うわぁ 先生めっちゃ怖い。ほんとに教師なの?この人…。
とっさに出てきちゃったけど、これ凄い目立ってしまってるのでは?
ざわ…ざわ…
「うわ!誰だアイツ?」
「誰かが、間に入ったぞ!」
「誰かは知らんが、なんて命知らずな 南無。」
最後の人は何キャラなのかな?
ていうか、やっぱり誰も僕のこと覚えてないし もういいや、ふたりのことを助けなきゃいけないし、周りは気にせずに開き直っていこう。
「先生、ふたりはタバコを吸ってません! そのタバコは誰か別の人のものです。」
「なんだと ははぁなるほどな このふたりを助けて気に入られようとでも思ったか?まぁ無理もない。お前みたいな地味な奴からしたら、ずいぶん魅力的に見えるだろうな。 だが、やめておけ相手にされんぞ。」
何故か教師から哀れみをかけられる。
「こいつら、男なんてとっかえひっかえしてそうじゃないか。お前みたいなのが夢を見る気持ちもわかるが、夢だけで終わってしまうだろうな。可哀そうに…。」
「……。」
教師は自分が正論を言っていると疑っていない様子でウンウンと頷いていた。
「さぁ、わかったらどけな…」
「違います先生。ぼくは そのタバコがふたりのものではないと証明できる と言っているんです。勝手にいろんな妄想をして、先生は随分と創造力が豊かなんですね。」
「……なんだと。」
生徒指導の教師の言葉に怒気が宿る。
クラス中がピリピリとした感覚に包まれていた。
「このタバコの吸い殻はなぁ、今朝一番に来た運動部の生徒たちが見つけたものだ。つまり昨日最後まで教室に残っていたものが落としていったことになる。そのふたりは昨日、遅い時間に帰るところを部活動をしていた生徒に目撃されている。なんの部活にも入っていないこのふたりが、だ。何かをしていたに違いない!」
怒りながらも自信たっぷりの教師に、思わず笑ってしまいそうになる。というか少し笑ってしまった。
「何がおかしい⁉」
「だって先生、昨日最後まで教室に残っていたのは ぼくですよ。」
「なん…だと…。」
「昨日、ぼくは担任の三和先生に頼まれて球技大会の資料まとめをしていたんです。そして、姉帯さんと新妻さんは、ぼくの作業を手伝ってくれていたんです。だから遅い時間に帰っていた。ふたりが帰ったあと、ぼくは三和先生に書類を渡して、先生と一緒に教室を出ています。その時点で、もちろん教室にはタバコの吸い殻なんてありませんでした。これは三和先生に確認してもらえれば、すぐに事実だとわかりますよ。」
「三和先生もいた だと、、」
他の教師の名前が出たことで、生徒指導の教師は少しうろたえていた。
「先生が言っていた理由だけで、姉帯さんと新妻さんを疑うのは間違っていると思います。信じられないなら先に三和先生にも確認してきたらいいと思いますよ。」
「くっ、三和先生には確認させてもらう。だが!お前たちの疑いが晴れたわけでなはいからな、覚えておけ!」
内心では冷や汗ダラダラで、心臓がドクンッドクンッと早鐘を打っていた。なんとかなったようで、捨て台詞を残して生徒指導の教師は足早に教室から出て行った。
一瞬の静寂…
わあああ!!という歓声に教室が包まれていた。
「何あの教師!横暴じゃない!」
「サイテーだった。」
「最後は焦ってたね ぷぷぷ」
「あいつ、すごいよな! えっと、名前なんだっけ?」
「バカお前、アイツは… あれ?」
どうやら、みんなもあの教師の物言いには腹が立っていたようだ。
ぼくも姉帯さんと新妻さんが悪く言われてカチンときましたよ。
「弟月くん 助けてくれてありがとー!!お姉さんは感激しました!」
後ろから姉帯さんに抱き着かれた。頭の上に柔らかい何かが乗っていた。
すごい重量感である。
「いや、むしろ昨日手伝ってくれたせいで疑われちゃって、ごめんね。」
「そんなことないよ。ああいう教師は見た目だけでウチらのことを最初から疑ってたから早く帰ってたところで、結局疑われてたと思う。」
「新妻さん…。」
新妻さんは少し寂しそうに見えた。今までもこんな事があったのかもしれない。
「でも、弟月くんが信じて庇ってくれて嬉しかった。ありがとう。」ニコッ
「いや、昨日の放課後は一緒にいたんだから当然だよ。それこそ気にしないで」
極上の笑顔 頂きましたー!
まるで天使の笑顔に動揺しつつも何とか返答する。
「でも、あいつ私たちのこと どうしても犯人にしたいみたいだね。」
「明日香もそう思う?なんか目の敵にされてるよね。」
「まだ、安心はできなそうだね…。」
真剣な様子で話しをしていると、何故か周りから痛いほどの視線が突き刺さってくることに気づいた。
恐る恐る周りに目を向けてみると…。
うらやま
うらやましい!!
姉帯さんに抱き着かれてるぞ、あいつ
誰だ、あいつ ウラヤマ
クラス中の男子からもの凄い目で睨まれていた。
そういえば、姉帯さんに抱きしめられたままだった⁉
「そ、そうだ、姉帯さん!早く離れて!」
「え~お姉さんは悲しいな。 いいじゃ~ん」
「いや、周りの視線が、視線が -!」
「ハァ まったく。」
その場はなんとか新妻さんに助けてもらってことなきを得た。
だけど、あの生徒指導の教師 いい加減な理由で姉帯さんと新妻さんを犯人に仕立て上げようとしていた。また言いがかりをつけて、ふたりを犯人にしようとするかもしれない。なんとか本当のタバコの持ち主を見つけないと…。
一人 心の中で真犯人を捕まえる決心をするのだった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
~後ほど~
「もっとさぁ 相手のプライドを考えてうまくやりな」
ぐったりした様子の三和先生に愚痴を言われてしまったとさ
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