第2話 ガールズサイド 〜あの時ギャルは〜


「おっはよ~」

「おはよー!」


「ふぁ~」

「でっかいあくび、眠そうじゃん」

「昨日、ついね」



翔輝高校1年1組の教室で

派手なギャル二人が話をしていた。


一人は 新妻にいつ ゆい

長めのサラサラとした金髪 細身のスラっとした長い足を短いスカートから大胆に出している。


もう一人は 姉帯あねたい 明日香あすか

男子と比べても高い身長に 男子なら思わず見てしまう発育の良い身体。


そんな二人が一緒にいるのだから、男子からはいつも注目の的になってた。



男子の視線というものは、女子からすると大変分かりやすいものであり、


「あすかぁ、今日もあんたの胸は主張が激しいねぇ」

「わたしの胸は何も主張してないよ、普通に結が注目されてるんでしょ」


「……。」

「……。」


「時々、うっとおしいよね。」

「うん、まぁ…。」


乙女の悩みである。




「そういえば結、この前サッカー部のキャプテンに声かけられてたよね、

 あれどうしたの?」

「ああ、あれね。 なんかチャラすぎて引いた。」

「結の見た目でチャラすぎって…。」

「いいじゃん!わたしは誠実そうな男の人がいいの!そういう明日香だって、

 野球部?の先輩に声かけられてたじゃん あれどうなったの?」

「あ~興味ないかなって…。」

「興味ないって、あんた…。」


友人の様子に脱力する結であった。


「じゃあ明日香はどんな人が好みなのよ?」

「わたしは、もっと こう かわいい感じの 」

「あぁ、まぁあんたはカワイイもの好きだしね。」

「そうそう!」




「おはよう!」

二人が女の子らしい会話に花を咲かせていると、元気のよい挨拶が飛んできた。


振り向いてみると、一人の男子生徒が立っていた。


結より若干背の低い、男子の中ではかなり小さいほうだろう。

ともすれば中学生かと思ったが、翔輝高校の制服を着ているので高校生だ。

黒色のあまり特徴のない髪型で、不真面目そうな感じはかけらもない。

一見、没個性な感じもするが、とても温和そうな笑顔には、

他の人にはない安心感を感じた。


「おはよう」

「ん?おはよう、…どうかした?」


「えっと、ごめんね、鞄だけ置きたくて」

結の若干の戸惑いを感じとったようで、男の子は慌てたように言い

鞄をぶんぶんと振っていた。


「え?あぁ、ここ席?えっと…」

自分が今座っている席の人物だと理解した結だったが、

どうやらクラスメイトのような男の子の名前がわからなかった。


「あ、ぼく…」

とっさに、男の子が名乗ろうとしていたが、


「ちょっと、クラスメイトの弟月君だよ、覚えてないの?」

と隣からフォローが入る。


「ん~、ごめ~ん。」

以外に思いつつも、明日香は隣の席だし知ってるか、と

納得し結は席を立とうとするが、


「全然大丈夫だよ、じゃあ話の途中にごめんね」


と男の子は鞄だけかけて行ってしまうようだった。



「あれ、席いいの?」


「うん、委員会に行くから大丈夫だよ、それじゃあ」



気を遣わせたのかな、と思いつつも席に戻る結。

ふと、先ほどの疑問を友人に聞いてみることにした。


「明日香は名前覚えてたんだ。隣の席だから?」


この友人、見た目が派手で男にはかなりモテる。だが、こんな見た目で

男と付き合ったりは自分が知っているかぎり一度もない。

知らない人からしたら絶対に信じてもらえないが、本当なのだ。

まぁ見た目どうこうは自分も人のことは言えないが、

男に興味がないのかと思っていたくらいだ。


「え、だってなんかカワイイじゃん。」


「あぁ、まぁそうかな…。」


一見はただの目立たない系地味男子だったが、

確かに優しそうな笑顔は可愛かったのかもしれない。


「明日香はカワイイもの好きだからね。」


「うん!それに、あの子とは挨拶しか話したことないんだけど、」

「え、隣の席なのに挨拶だけなの?」


「だって、いきなり話しかけてビックリしないかなって思って…。」


「明日香ちゃんの乙女な部分初めて見たよ」


「なにそれ、でね、挨拶は必ずしてくれるんだけど、その時しっかりと

 目を見て挨拶してくれるの」

「あぁ~、それはポイント高いのかな。明日香は出るとこ出てるからね。」


「別に普段は気にしないんだけど、なんか嬉しくない?」

「わかる~。」




なんだかギャルからポイントが高い地味系男子君だった。

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