派手なギャルと地味なぼく ~目立たないけどあの子、なんか気になるんだけど~

美濃由乃

第1話 ぼく 地味で目立ちません


春のうららかな日差しの中 ようやく慣れてきた通学路を歩いていく。


もくもくと一人で…。


ぼくの名前は弟月おとずき 佳奈よしな

ここ 翔輝高校しょうきこうこうの1年生。


「着いた~。」


4月の入学式から もう一か月がたった。

クラスでも仲の良い友達ができ始め、

仲良しグループが形成されてきている。

そんななか ぼくはというと…。


特定のグループには入れずにいた。

クラスには同じ中学の人なんていないわけで、


これって ボッチ なのかな…。



クラスは明るい感じで 特にいじめられているというわけではまったくなく、

「おはよう!」 や 「また明日~ 」なんて

挨拶も普通にしているし、みんなと話しもしてるんだけど…。



どうやら 僕はあまり印象に残らないようで


「おはよう、えっと…」「またな~、あれ?」

って感じで顔も名前も覚えてもらってないみたい


低身長、細身、髪も黒色で普通な感じと

まぁ目立たないかなとは自分でも思う、思うんだけどね…。



少し寂しいけど、まだ高校生活は始まったばかり!

自分から目立つようなことをするのは恥ずかしいけど、

ちょっとずつでいいんだ みんなと仲良くなれるように

自分にできることをやっていこう! コツコツと!


さぁ教室に着いた、元気に挨拶して

少しでも印象に残るようにしないと


「あ、おはよう!」

ドアのすぐ近くの席の男子生徒に挨拶をしてみる。

大事なことは元気よく!相手の目を見て、はっきりと言うこと!


「おう、おはよ~、えっと、おはよう?」





…うん まぁこれからだよね。

明らかに あれ、誰だ? って顔してたけど…。




とりあえず、自分の席に着こうとすると、すでに別の人が座っていた。



サラサラした長い明るめの金髪。

鋭そうな眼付は怖そうにも見えるけど、笑顔が魅力的で

そんな印象はまったくない。

香水なのかわからないけど、漂ういい香り。

少し着崩した制服、短いスカートからは

スラッとした細い足が大胆に見えていた。



ザ・普通の僕からはなんだかカッコよく見える派手系女子

その人は新妻にいつ ゆいさん


目立たない系の僕は、まったく話をしたことがない新妻さんは、

その明るさと外見から男子の間ではよく話題になっていた。


新妻さんの席はもっと前の方だったはずで、ここではない。

どうして僕の席に座っているのかというと、



どうやら僕の隣の席の これまた派手系女子

姉帯あねたい 明日香あすかさんと話をしているみたいだった。


姉帯さんは女の子なのに 僕より身長が高くて(うらやましい)

他のクラスの女の子たちより なんというか いろんなところが目立ってる。

茶色のセミロングの髪に 優しそうな顔つきの大人のお姉さんみたい、

新妻さんと同じく男子の話題によく登場する人なんだけど、


隣の席にいる僕は なんだか話しかける勇気がなくて

普通に挨拶するだけで、会話という会話はしたことがなかった。



二人は仲良しみたいで、よく一緒にいるところを見かけていた。

他の女子たちとは少し距離がありそうなのかなぁとか、勝手な想像。



新妻さんと姉帯さんがせっかく楽しそうに話しをしているところを悪いと思ったので

鞄だけ置いて、委員会の仕事に行くことにした。

派手な二人に話しかけるのはちょっと勇気がいるけど

挨拶だけはしていこう! 誰だって友達になれるかもしれないから!




「おはよう!」


意を決して姉帯さんと僕の席に座っている新妻さんに向けて挨拶をしてみた。


「おはよう」

「ん?おはよう、…どうかした?」


ふたりは挨拶を返してくれたけど、いきなり話しかけられて新妻さんは不思議そうにしていた。

僕は慌てて返した。


「えっと、ごめんね、鞄だけ置きたくて」


「え?あぁ、ここ席?えっと…」


ようやく、意図が伝わったようで、新妻さんも納得していたが、やはり

僕の名前は覚えてもらってはいないようで言葉につまっているようだった。


「あ、ぼく…」


想定内のことなので、苗字だけでも名乗っておこうとすると、

予想外のところからフォローが入る。


「ちょっと、クラスメイトの弟月君だよ、覚えてないの?」

「ん~、ごめ~ん。」


と隣の席の姉帯さんが新妻さんに教えていた。


そんな中、僕はというと、

隣の席の人に名前だけでも覚えてもらっていたことに、高校生活一の喜びを感じていた。

まだ誰も僕のことを覚えていないと思っていたのだ。

もう心の中で おめでとう! おめでとう!という声が響き渡る。



一人心の中で舞い上がっていたが、

これ以上邪魔をしては悪いなという理性が働き、

早々に立ち去ることにする。


「全然大丈夫だよ、じゃあ話の途中にごめんね」


「あれ、席いいの?」


席をあけてくれようとしたのか、腰を浮かせながら

新妻さんが首をかしげていた。


「うん、委員会に行くから大丈夫だよ、それじゃあ」





案外優しそうだった派手系女子ふたりと話せたことを、

些細なことなのだが、うれしく思いながらも委員会の仕事に向かう。


うん!なんとか普通に話ができたと思う!よかった!

全然友達になったとかじゃないけど、今の僕からしたら

まだ話ができなかった人と話せたのは、大きな一歩!


この調子でコツコツと友達のいる楽しい学校生活を目指すぞ!


よし、委員会のお仕事も頑張ろう!


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