えび

 えび。海老。お寿司の定番ネタであり、フライにして良し、ボイルして良しの美味しい食材。食卓にエビが出てくると嬉しいという方も多いかと思います。


 食べ物を絡めたお話をいろいろ書いてきましたが、実は私、このエビが食べられないのです。アレルギーか何かなのか、食べると、「風船を膨らませようと思って吹き込んだものの、膨らまずに逆に口内に戻ってきたゴム臭い空気によって顎の奥の方(耳の後ろのあたり)がキューっと締め付けられたようになる」のです。あと、シンプルに味も苦手です。


 海老はお祝いの席で振る舞われることが多いので、なにかの祝い事や冠婚葬祭の席では困る事になります。必ずどこかに奴がいます。


 子供の頃は、その手の席に行くときには兄が一緒だったので、兄に頼んで海老を食べてもらっていました。傍から見れば、美味しいはずの海老を兄に献上する弟です。おっなんだパワーバランス的に貢いでいるのか? と思われていたかもしれませんが、実のところは、見かねた兄が食べてくれていたのでした。


 大人になれば、海老嫌いも少しは治るのかと思いましたが全然そんな事はなく、逆に敏感になってきました。えびせんですら駄目で、カップ麺に入っている海老などは、お湯を注ぐ前に全部取り除く始末。お土産に頂いた崎陽軒のシュウマイ(大好き)も、海老入りだととたんに食べられなくなるという徹底っぷりです。大丈夫なのは、かっぱえびせんくらいです。それすらも積極的に選ぼうとは思いませんが。


 なぜこんな苦手なのだろう。そう思って振り返ると、思い当たる事件がありました。あれは小学生の頃の話です。給食に、コロッケのような揚げ物が出てきました。私はコロッケが大好きで、ソースをかけ、喜び勇んでかぶりつきました。が、その揚げ物はコロッケではなかったのです。


 その正体は、海老カツ。小さな海老と魚のすり身を練って、フライにしたものでした。海老嫌いの私にとっては騙し討ちです。元々海老がダメな上に、コロッケと思って食べたら海老だったという裏切りのダブルパンチで、その場で吐き出してしまいました。おそらく、あの体験が海老の印象をさらに悪くしたのだと思います。


 海老はアレルギーが出るし、味は苦手だし、おまけに裏切り者。自分の体質と濡れ衣のおかげで、海老嫌いが加速したのかもしれません。


 結婚式に出席する事が多くなると、私の海老嫌いを知っている友人たちは、率先して海老を食べてくれました。中には、わざわざ海老抜きメニューを手配してくれる友人も。本当にありがたい配慮です。さらに、最近では甥っ子たちが喜んで食べてくれるようになりました。


 彼らにとっては、海老はちょっとしたボーナスらしく、海老を上げることで好感度ポイントも溜まります。私にとっては一石二鳥です。甥っ子兄弟のうちの上の方は、ただ海老を貰うのはフェアではないと思っているのか、葛藤しながら彼の好きなから揚げとのトレードを提案してくる事もあります。それはお前が食べていいぞ。叔父はその姿勢だけで満足じゃ。


 そんなわけで私にとってエビは、食べ物というよりも、コミュニケーションを取るためのアイテムのような位置づけになっています。苦手な物でも、使い道(?)ってあるものなのですね。


 ちなみに、エビ同様にカニも苦手です。甲殻類全般が苦手なんですよね。なぜなのでしょう。ひょっとしたら、前世でエビに食べられたとか、カニに鋏まれたとかあったのかもしれませんね。


 さ、それでは今日も一日、始めていきましょうか。

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