第35話 解放者
鏡を見て不思議そうにするマスラ。
(何だこの鎧? )
オレンジ色のタイツに肩から腰までを覆うオレンジ色の鎧を着けているが、先ほどまではそんな鎧を着けていない。
じゃらり
いつの間にか腕には手甲が付いており、その手甲には何故か鎖が付いていた。
トルパスが不思議そうに尋ねる。
「どこでそんな鎧見つけてきたの? 」
「俺も分からん」
不思議そうにするマスラだが、すぐに状況を思い出す。
「と、とりあえず早く逃げよう! もうここはヤバい! 」
「そうだね! 」
そう言って出口へ向かおうと出口のある部屋に入ろうとする二人。
彼らが部屋のドアノブに手をかけたその時だった!
ドガシャァ!
部屋のドアが破けてオットーが飛び出してきた!
「うぉ! 」
「ぶぎゃ! 」
巻き込まれて二人も吹っ飛ばされる!
「ぶごへぇ……」
「一体何が……」
二人が立ち上がろうとするが、オットーはすぐに二人の頭を掴んで下げさせる!
ごばぁ!
部屋の中から突然竜の炎が飛び出してきて三人の頭をかすめる。
オットーは憎々しくぼやく。
「畜生め。残った頭髪持っていきやがった」
忌々しそうに部屋の中を睨むオットー。
部屋の中には先ほどの竜人がいた。
「何で……」
マスラが不思議そうにするがオットーがぼやく。
「どうやらあいつの部屋だったみたいだな……」
「……まじで? 」
トルパスが暗澹たる気持ちで呟いた。
もはや出入口すら閉じられた。
(どうすればいい? )
マスラが悩んでいると声が聞こえてきた。
(『解放者』は全ての束縛から開放する能力……)
(えっ? )
マスラはキョトンとするが、すぐに声の主が誰かわかった。
(さっきのやつか? )
(縛めには常に管理者が居る……鍵番、門番、見張り番……)
マスラはじっと死霊青年の声に耳を傾けた。
(解放者はそういった敵を倒すための力でもある……)
(……力? )
(君のその姿は解放者の姿だ)
(解放者? )
マスラは訝し気に聞き耳を立てる。
(その力は弱者を守り、強者を倒し、あらゆる束縛から開放する)
(・・・・・・・・・・・・)
改めて、マスラは自分の両手を見る。
不思議な手甲が付いており、その鎖が輝き始めた!
「やばい!来るぞ!逃げろ! 」
「逃げろって言ったってどこへ! 」
竜人がこちらへ向かってくるのがマスラにも見えていた。
マスラは何の気なしに尋ねた。
(どうやって解放者の力を使う? )
(使い方は君の体が知っている……)
その言葉を最後に死霊青年の言葉は聞こえなくなる。
マスラはすくっと立ち上がった。
竜人がこちらを睨みながらブレスの準備に息を大きく吸い込んだ。
(解放者の力は弱者を守る。すなわち、敵が強ければその力から守ってくれる)
マスラは両手を掲げてみるとその前に先ほどの光の壁が生まれた。
ゴパァ!
竜人の炎が光の壁に当たって霧散する。
「マスラ! 」
トルパスが叫んでいるのには気付いたが今はそれどころではない。
やがて息が続かなかったのか炎が収まった。
それを見てマスラは刀を抜いて竜人へと向かう。
「マスラ止めろ! 」
オットーが止める声が聞こえるがマスラは構わず刀を振るった!
斬!
竜人はあっけなく切られて霧散する。
(解放者の力は強き者を倒す。すなわち敵が強くても攻撃できるようになる)
心静かに刀を納めるマスラ。
慌てて駆け寄るトルパス。
「マスラ! どうやって! 」
「話はあとだ。それよりも脱出を……」
「脱出は無理だ」
オットーが悲しそうに指をさす。
マスラ達が入ってきた穴が塞がっていた。
「あいつがいきなり現れて攻撃を受けてな。それで塞がってしまった……」
「そんな……」
絶望するトルパス。
だが、マスラは冷静に両手を掲げた。
すると……
ピカぁ!
眩い光が生まれて、目のまえに謎の扉が生まれた。
(解放者はあらゆる束縛から開放する。閉じ込めた牢獄からも脱出させる)
すなわち、出口を作る能力だ。
扉が音もなく開いたのでマスラは叫んだ。
「早く通るんだ! 」
「うん! 」
「お、おう! 」
トルパスとオットーが戸惑いながらも先に入ってからマスラは扉へと入ろうとする。
だが、何の気なしに振り返ってみた。
そこには死霊青年が嬉し気な笑顔で立っていた。
「ありがとう……」
死霊だった青年が笑顔でお礼を言って消えていく。
「・・・・・・・・・・・・・」
何も言わずにマスラは一礼してから扉をくぐった!
ゴガシャァ!
ドゴゴゴゴゴゴゴゴガグラグシャゴガバシャァ!!!!
マスラが扉をくぐって消えるのと同時に屋敷は完全に崩れ落ち、元の地下へと戻っていった。
こうしてイサナ村の遺跡を巡る冒険は終わりを告げたのだ。
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