第28話 竜人

 

ボゴォッ!


 マスラ達が入ってきた穴が突然爆発して辺りが土煙に覆われてしまう!


「なんだ!? 」


 オットーが子供をかばって土煙から逃れる。


「げほげほ……」

「一体……」


 エミナもトルパスもむせながら砂煙の奥を見ようと頑張る。

 すると、一人の女が砂煙の奥から現れた。


「げほげほ……」

「……お前何やってんだ? 」


 先ほどの狐耳の巨乳美人が現れたことで呆れるマスラ。

 だが、女はむせながら言った。


「良いから! 全員早く隠れて! 」


 巨乳美人のその言葉にマスラの第六感が働いた!


「トルパス! 爺さん! 」

「うん! 」

「わかった! 」


 トルパスはエミナを掴んで隠れ、オットーは子供を抱きかかえたまま隠れる。


「お前はこっちだ! 」

「あわわわ!! 」


 巨乳美人を抱きかかえてその辺の檻の中に入るマスラ。

 ベッドらしきものの下に入り込んで様子を窺う。

 すると、のしのしと半透明の龍の頭をした怪人が廊下を歩き回っていた。


『どこへ行った?……』

 

 その姿を見て凍り付くマスラ。


(ありゃ竜人の死霊じゃねぇか! どういうことだよ! )

(あたしが聞きたいわよ! )


 巨乳美人と小声で囁き合う二人。

 巨乳美人がジト目で言った。


(ちょっと……股間の辺りが膨らんでるんだけど? )

(不可抗力だ。それよりもあいつの事の方が大事だ! )


 色々と不便が強いられている二人だが、今は流石にそれどころではない。

 マスラが尋ねる。


(一緒に居た二人はどうした? )

(何とか逃げたみたい。あたしが奥に引き付けるって言って、二人を先に逃がしたから)


 どうやら他の二人は先に逃げたようだ。


(にしたってどうすんだよこれ……)

(どうしよう? )


 困り果てる二人。

 困ったことに竜人はうろうろと廊下を行ったり来たりしている。


(竜人か……)


 マスラは竜人の事を思い出す。


 この大陸の最強の種族で円環の蛇ミーブの眷属である。

 竜は寿命が無く、様々な状況に対応して自身を進化させる種族で、大陸の状況に応じてその都度進化してきた種族である。


 元から強靭な体と膨大な魔力を持ち合わせていたが、それをさらに進化させた大陸最強の一族でもある。


 そんな竜だが、人型になると竜の頭をした怪人のような姿になる。

 本来の姿よりは弱いのだが、それでも他の種族を圧倒するほど強い。


(元々、他の種族が大陸を制覇した理由が『竜の進化』よりも早く進化したからだって話だからな……)


 強いと言うことは対策を取られる要因となる。

 竜族は強い代わりに進化の新陳代謝が遅い。

 進化するよりも先に大陸を制覇されたと言うのが正しい。

 

 だが、それはあくまで種族としての弱点であって、現状に役に立つのか言われれば……


(だからといって倒せるわけじゃねぇ! )


 ここが町中なら十分対策は取れただろう。

 だが如何せん、ここは洞窟の奥で準備も一切ない。

 元から簡単に倒せない上に、こんな洞窟の奥ではどうしようもない。


(どうすれば……)


 そんなことを考えていると叫び声が上がった。


「うわぁぁぁぁぁ!!! 」


 子供が恐怖に耐えきれずに走って逃げてしまった!

 それを聞いて竜人がぐるりと少年の方へと向いてしまう。


(まずい! )


 慌てて飛び出すマスラ。

 刀を取り出してすぐに気を纏わせる。


「食らえぇ! 」


 そう叫んで竜人の首へ刀を振り下ろした!


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