第27話 奴隷小屋の亡霊
一方、マスラ達はと言えば……
「何だここは? 」
「奴隷小屋みたいだね……」
オットーの言葉にトルパスが答える。
鉄の檻がいくつもある小屋の中でうろうろしている。
マスラが穴を潜り抜けた先は奴隷小屋だったらしい。
「さてと。どこへ向かったのやら……」
そう言ってマスラが足跡を探すと足跡の先に別の足があった。
「???」
不思議そうにマスラが見あげると一人の男が居た。
痩せぎすの青年で見るからに奴隷の恰好をしている。
そして何よりも体が透けていた。
「死霊か……」
おもわずドキリとしたがマスラは慌てずに立ち上がった。
「死霊が居たのか……」
オットーも険しい顔で呟く。
「!!!!!!!!!!!!」
「静かに」
泣き叫びそうなエミナの口を押えるトルパス。
死霊は生前と同じ能力を持つがきちんと倒さないとすぐに復活する。
そしてもう一つ重要な点として……
(死霊は必ずしも敵対するものとは限らない……)
口先三寸で誤魔化せる相手でもある。
アリトーをしている以上、死霊と出合う機会は多く、この場でエミナ以外は何度も死霊と遭遇しているのだ。
マスラは落ち着いて尋ねた。
「何か用か? 」
「君たちは何しに来たんだい? 」
痩せぎすな死霊が不思議そうに尋ねた。
「子供が迷い込んだんで助けに来た」
「そうなんだ。君たちは良い人だね」
そう言ってにっこり笑う。
どうやら危険な死霊ではないようだ。
死霊は感慨深げに呟く。
「世の中が君たちみたいな良い人だらけだったら良いのに……」
「……うん? 」
それを聞いて訝しむマスラ。
(楽園時代は人がみんな幸せに暮らしていたんじゃ……というか、そうなるとこの奴隷小屋はなんだ? )
魔人時代は人間が奴隷にされたという記述もあるぐらいだ。
だが、そうなると楽園時代も人間が奴隷にされていたことになる。
(何で『楽園』時代なんだ? )
名前から考えれば幸せな時代なはずだ。
なのに人間が奴隷にされている。
死霊が悲しそうに言った。
「ここは奴隷小屋でね。何人もの人間の奴隷が過酷な仕打ちに耐え兼ねて死んでいったよ……」
悲しそうな言葉に訝しむマスラ。
(どういうことだ? )
歴史の教本とのあまりの食い違いに混乱するマスラをよそに男は言った。
「この大陸では僕たち人間はみんな過酷な奴隷として使役されている。だから僕は立ち上がって奴隷たちを逃がしたんだ……この身は犠牲になったけど、みんな逃げられたから良かったと思う」
ポワァン
青年は感慨深げにそう言うと消え去った。
後に残されたマスラ達が訝し気に首を捻る。
「何から何まで変な遺跡だな。一体何なんだこれは? 」
もはやマスラにとってこの遺跡は歴史を覆すとんでもない遺跡と化している。
(こいつは大発見になるかもしれないな……)
考えを巡らせるマスラ。
だが、その思考を中断させる出来事があった。
「おい見つけたぞ! 子供だ! 」
オットーが子供抱きかかえて飛んできた。
どうやらすぐに探して回ったらしい。
「ひくっ……ひくっ……」
オットーの六本腕の中で泣きじゃくる子供。
「もう大丈夫よ」
慌てて慰めるエミナ。
それを見てマスラは言った。
「とりあえず、すぐに出よう。このまま雨降ると溺死しかねん」
意外かもしれないが遺跡発掘や洞窟探検の最大の死因は溺死である。
逃げ場のない洞窟では水は危険なのだ。
ぽちゃん……ぽちゃん……
突然、水が落ちる音が聞こえ始める。
それを聞いて顔を蒼白にするマスラ。
「まずい……もう雨が降ってる! 」
急がないとこのまま生き埋めの可能性もある。
「早く行くぞ! 」
そう言ってマスラが元来た穴に入ろうとしたその時だった!
「ダメだよ! 向こうにはあいつが居る! 」
「……あいつ? 」
その言葉を聞いて立ち止まるマスラ。
「あいつとは一体……」
マスラがそれを訪ねようとしたその時だった!
ボゴォッ
元来た穴が突然爆発した!
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