第25話 人質


 オルは首筋に刃物当てられて泣きそうな顔になっている。


「ごめん……」

 

 そんなオルの首筋に刃物を当てているのは前に襲ってきた狐耳の巨乳美人だった。

 それを見てマスラが笑う。


「車に追いついたのか? 」

「おかげさまでね。何とか取り返すことが出来たわ。部下には置いてかれたけど? 」


 そう言ってじろりと後ろを見る巨乳美人。

 前に一緒に襲ってきた機人と魔人が居心地悪そうによそを見る。


「アネサン。そう言っても俺達はそうするしか……」

「そうですよ。おれらは悪くないっす」


 機人と魔人がそれぞれ抗議の声を上げる。

 マスラが皮肉気に笑いながら言った。


「部下ともっと話をした方が良いんじゃないか? 」

「そんな暇はないわよ。そこの修羅が私を狙ってるからね」


 マスラが注意を引こうとしたのがバレていたようだ。

 巨乳美人が皮肉気に笑いながら言った。


「さあ、早くメモを渡して貰いましょうか! 」


 それを言われてきょとんとするマスラ。

 思わず隣のトルパスとオットーの方を見るがこちらもきょとんとしている。


(もしかして目の前の世界地図に気付いていない? )


 メモの重大な秘密はもう解かれている。

 今更、メモを渡しても意味が無いのだ。

 オットーが小声でささやく。


(マスラ。メモを渡してしまえ)

(じいさん……)

(どのみち何の金にもならんのだ。だったら、こいつらを満足させてやればいい)


 オットー爺さんの言う通りで、もはや渡しても問題はない。

 だが、曲がりなりにもマスラはトレジャーハンターで考古学者の端くれでもある。 

 遺物をすんなり引き渡すことに躊躇した。

 オットーがじれったく囁く。


(忘れたか! これから子供を連れて脱出もしなけりゃならんのだぞ! 雨がもうすぐ降って生き埋めになりたいか! )


 それを言われてハッとなるマスラ。

 自分達だけならまだいいが子供の命も大事だ。

 マスラが渋々、ピンでとめた地図を手に取る。


「渡したらすぐに出ていくんなら良いぞ」

「安心して。私らも生き埋めになんかなりたくないわ」


 それを聞いてメモを渡すマスラ。

 それを魔人の男が受け取り、じっくりと確認する。


「本物ですぜ姉御」

「よし! じゃあ、ずらかるわよ! 」


 そう言って三人で出ていく。

 エミナはぺたりと腰を抜かして床に座った。


「怖かったよぉ……」

「すまなかったな……」


 泣きそうなエミナを慰めるマスラ。

 トルパスもほっと胸をなでおろす。


「良かったぁ……」

「ふぇぇぇぇぇん……」


 エミナは泣き出してしまった。

 それを見て苦笑するオットー。


「しかたねぇなぁ……」


 六本腕でオルをおんぶするオットー。


「マスラ。とにかく急ぐぞ。俺たちも子供を連れて脱出するぞ」

「わかった」


 そう言って4人はさらに奥へと向かった。


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