第23話 本当の世界
マスラ達が屋敷内を探索しているが、少年は中々見つからなかった。
「一体どこに居るんだ? 」
手分けして探しているのだが、意外にこの屋敷は広い。
その上、所々が崩落して廊下が埋まっているので、探し回りにくいのだ。
だが、突然トルパスの声が上がる。
「あれ? この絵なんか変じゃない? 」
トルパスが壁に据え付けられた絵を見て不思議そうに首を傾げている。
全員が不思議そうに集まった。
「どうした? 」
「ほら、ここ……切り口が新しいよ? 」
壁にピンで留めてある巨大な絵の一部が不自然に四角に切り取られていた。
その形を見て首を傾げるマスラ。
「なんか見たことあるな……」
するとエミナがぽんっと手を打つ。
「これ、あの変なおじさんがメモに切り取ったんじゃない? 」
「……あーあれか……」
苦笑するマスラ。
オットーが訝し気に尋ねる。
「何の話だ? 」
「あのメモって実はおじさんに戻すように言われてたんですよ。遺跡の遺物を勝手に壊して持ってきちゃったから、元の所に戻しといてって」
「はた迷惑な……」
苦笑するオットー爺さん。
マスラはメモを開いて四角に切り取られていた場所に当てるとピッタリ当てはまった。
「何でこんなところの紙を取るんだよ……」
マスラが苦笑する。
わざわざ壁に貼っている紙の一部なら真ん中を切り取る必要が無いだろう。
「意味不明だよね」
トルパスも苦笑した。
マスラがメモを持っていたピンで軽く刺して止めておく。
「これで良しと……なんか変だと思ったらこの絵にも入ってた線なんだな」
絵には縦横に綺麗に等分された線が入っており、それに合わせてメモの裏側の世界地図を合わせるとピッタリだった。
マスラはその絵から離れて全体像を見てみる。
「結局、この絵は一体何だっ……」
途中でその言葉が止まる。
マスラは自分で見たものが信じられなかったのだ。
(……えっ? これはひょっとして……)
見た物に対して思考が追いついていない。
トルパスが不思議そうに尋ねる。
「マスラどうしたの? 」
マスラは何も言えない。
只々、呆然と絵を眺めるのみだった。
「どうしたのマスラ? 」
エミナが心配そうに前で手を振ると乱暴に振り払うマスラ。
オットーが不思議そうに呟く。
「正気のようだが、この絵がどうかしたのか? 」
オットーが不思議そうに絵を眺めてみる。
絵には不思議な形の図形がいくつも描かれていた。
規則性は無く、適当にフリーハンドで描いたような図形で、酔ってる時に書いた図形の集合体のようにオットーは見えた。
一つ一つの図形の下には何か文字が書かれてあるが、楽園時代の文字なのでオットーには何が書いてあるかわからない。
オットーは聞いた。
「なあ? この絵は一体何なんだ? 」
マスラは震える手で一つ一つを指さして言った。
「リバジルン大陸……タバレス大陸……ヤクラドグ大陸……」
「……うん? 」
オットーが不思議そうに唸る。
どれも聞いたことも無い名前だからだ。
「ランガウット大陸……ディーバゼル大陸……」
絵に書かれてある文字を一つ一つ読み上げるマスラ。
そしてトルパスもようやく気付く。
「えっ? ……『大陸』? 」
この世界には大陸は一つしかないはずだ。
自分たちが居る世界に一つしかない大陸で、一つしかないから『大陸』としか呼ばないのだ。
だが、マスラは他の大陸の名称を言っている。
そして最後にマスラが貼ったメモを指さす。
貰ったメモの右下に古代楽園文字で『虚帆』と書かれていたのはわかっていた。
だが、その言葉には続きが書かれていて、『大陸』という文字が書かれてある。
「……う……『虚帆大陸』……」
それを聞いて全員が凍り付いた。
『虚帆』は『世界』の名前である。
この場に居る全員にとって『虚帆』=『世界』なのだ。
だが、この絵にとっては『虚帆』は数ある大陸の一つに過ぎない。
それが意味することは一つである。
「ミーブの先に世界がもっと広がっているのか? 」
マスラの言葉を答える者は居なかった。
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