第21話 遺跡潜入


 穴の中はかなり狭く、大人が屈んでやっと通れる程度であった。


「やべぇぞこれ……」


 穴が埋まると絶対に出られなくなる。

 

「とりあえず子供を見つけてから外に出よう。下手すると二重遭難する」


 そう言ってマスラは先頭を屈みながら進む。


「ぐるじい……」

「大丈夫か? 」

 

 度々詰まるエミナを後ろからオットー爺さんが押してあげる。


(あいつ下手すると出られなくなるんじゃ……)


 色んな意味で連れてきたことを後悔したが先を急ぐマスラ。

 すると突然目の前に木で出来た壁と思しきものが現れた。


「これは……」


 壁には屈んで通り抜けることが出来る穴が開いており、その中に入ってみる。

 すると、中には広々とした部屋があった。


「マジでありやがった……」


 どうやら土で埋まった家屋のようで部屋の壁の所々が崩れて土が見えている。

 最初に入った部屋はどうも屋敷の主人の部屋らしく、結構豪華な部屋に天蓋付きのベッドがあった。


「本当に遺跡と繋がってたんだ……」


 トルパスも穴から這い出て驚く。

 

 屋敷は漆喰と板で囲われた壁で天井も高い。

 部屋の広さからしてかなりの金持ちの家らしい。


「ふんぬ! ふんふん! 」


 エミナだけが穴から這い出るのに苦労していた。

 実はさり気に胸以外もボリュームがある。


ズルべタン!


「ぶぎゃぁ! 」


 穴から出た勢いで一回転して壁にぶつかるエミナ。

 穴からオットー爺さんが出てきたが、疲れた声を出した。


「出るときはマスラがこの子の後ろについてくれ。何度も詰まるから大変だった」

「わかった。俺に任せろ!尻を押せば良いんだな! 」

「絶対に嫌だからね! 」


 そう言ってお尻をさするエミナ。

 修羅族も美的感覚が違うのと、人間とは子作り出来ないので、微妙に人間は性の対象外だ。


「とはいえ、本当に遺跡があったんだな」

「そうだね」


 感慨深そうに辺りを見渡すマスラ。

 部屋には古い絵画が落ちていたので見てみる。


「楽園時代みたいだな」

「わかるの? 」


 オルが不思議そうに尋ねる。


「楽園時代の絵の具を使っている。魔法時代も科学時代も無いからな。自然な塗料しか使わないんだ」


 そう言って絵画の端の絵の具を手で触って確認するマスラだが……その顔が曇る。


「……何だこの絵? 」


 絵画には『竜』が描かれており、雄々しい竜が空で咆哮をあげているようだ。


 そこまでは良い。


 問題は下の方で人間たちが竜に平伏している点だ。


「???どういう意味だ? 」


 楽園時代は唯一神『虚帆』の眷属である『天使』が治めていた時代である。

 諸説は色々あるものの、唯一神にして光の神である『虚帆』が扱い損ねたと言われるのが竜の種族で、天使は竜を嫌っている。


 実際に天使が竜を追い払っている姿は今もなお目撃されており、アルブム大聖堂も『竜は唯一神の敵』と定めている。

 

 楽園時代の人間が唯一神にして光の神である『虚帆』の敵である『竜』を拝む理由は無い。

 

「?????????????」


 不思議そうにマスラが首を傾げるとオットーが言った。


「子供探すんじゃなかったのか? 」


 言われてハッとするマスラ。

 今は雨雲が近付いており、ゆっくり確認している暇は無いのだ。

 子供だけ助けて逃げるのが先決である。


 慌てて、床に平伏すマスラ。

 小さな子供の足跡が一つ奥へと向かっていた。


「足跡が一つあっちへ向かっている。他に足跡は無いから急ぐぞ」


 そう言ってマスラ達は足跡のある方へと向かった。


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