第20話 イサナ村
翌朝、地下道を通ってマスラ達はイサナ村へとたどり着いた。
マスラ達はイサナ村に入って呆然とする。
「……普通の田舎村……」
「……何にも無いねぇ……」
エミナとトルパスが呆然と見渡す。
三人の乗ったトラックとオットー爺さんのバイクはのんびりとした田園風景の中にある舗装されていない道路を走っていた。
見渡す限りの田園風景で特筆すべきことは無い。
しいて言えば米、麦、豆、芋の4大主食が生産されていることで、田畑が綺麗に纏まっているだけである。
一部は輪栽農業の関係で牧畜などが行われているが、それだけである。
『何にもねぇだろ? 』
フロントに立て掛けた端末からオットー爺さんの声が聞こえる。
運転用の自動チャットで運転しながらでも話せる。
「本当になんも無いですねぇ……」
『もう少しで地図にあった崖崩れのポイントだ。アレだな』
オットー爺さんが指さした先では山の一部が崩れていた。
マスラが辺りを見渡してみる。
「追手は来てないようだな」
「さすがに見失ったんじゃない? 」
「それにしたって、どこに行くかは知ってるんだろう? 待ち伏せしててもおかしくないだろう? 」
不思議そうなマスラ。
明らかにメモを狙っていたし、行き先も検討が付いている様子だった。
ついでに言えば偽物とはいえ、コピーはもう渡してあるので絶対に知っているだろう。
「爺さん。気を付けてくれ。待ち伏せの可能性もある」
『わかってるよ』
そう言ってバイクを吹かして先行するオットー爺さん。
まだ面が割れているとは言い難いオットー爺さんが先行した方が良いだろう。
先行した爺さんが速度を落とす。
『何人かいるな』
がけ崩れの現場には数名の大人が困った顔で話をしていた。
山の斜面が崩れたがけ崩れで、地滑りと言った方が良い具合である。
土砂でなだらかになっているその場所の一部にぽっかりと穴が開いており、その前に数人の大人がたむろしていたが、服装からして村人だろう。
オットー爺さんが村人たちの前に行くとたむろしてた人たちが慌てて止めた。
「おい! あんたらどうするつもりだ? 」
困り顔で尋ねる村人たち。
オットーは普通に答えた。
「これからその洞窟に入るつもりなんだが? 」
「危ないから止めとけ! いつ穴が崩れるかわからないんだぞ! 」
そう言って引き留める村人。
マスラ達も端末で話を聞いていたので、トラックから降りて尋ねる。
「でもその中に遺跡があるんだろ? 」
「誰がそんなこと言ってるんだ? そんな話は知らないぞ? 誰か聞いたか? 」
「いや? 」
「いつの間にそんな噂が……」
口々に不思議がる男たち。
その様子を見て訝しむマスラ。
(村人たちは知らない? 噂だけが独り歩きしているのか? )
不思議そうな村人たちの様子にマスラは首を傾げる。
「今も子供が一人入って困ってるんだ、これ以上危ない真似はよしてくれ」
迷惑がる村人。
そこでマスラもピンときた。
(要は子供が入ったけどどうしようか迷ってんだな)
状況を理解したマスラはにやりと笑う。
「それなら俺たちが入って子供たちを助けてくるよ」
「本当かい? 助かるよ。おい! この人たちが助けに入ってくれるってよ! 」
男がそう言うと道を開けてくれた。
これで問題なく探検が出来る。
「その穴から入っていったんだ」
穴は成人が一人やっと入れる程度の大きさでお世辞に言っても大きいとは言えない。
マスラ達が入ろうとする村人が言った。
「早くしてくれ。もうすぐ雨が来るみたいなんだ」
そう言って村人が指す方角には曇り空が広がっていた。
「もう一雨来ると今度は穴も埋まるかもしれない。急いでくれ」
「わかった」
マスラ達は急いで穴の中に入った。
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