第16話 謎の亜人


 だだだだだだだだだだッ!!!!!


 階段を駆け下りてトラックまで向かうマスラとトルパス。

 トルパスが走りながら叫ぶ!


「上手い事騙したよね! 何でそんなの持ってたの! 」

「やばい匂い漂ってたから、あらかじめ作っておいたんだよ! 」


 考古学研究用として何種類もの古紙を持っていたのが幸いした。

 似たような紙に世界地図を印刷して書き込んだのだ。


「本物は!? 」

「トラックの下の金庫だよ! 」


 物騒な世界なので金庫の隠し場所には色んな工夫がしてある。

 マスラはトラック下に金庫を隠したのだ。

 マスラはポンポンとポケットを叩く。


「ちゃんとこっちでも写真も撮ってあるから大丈夫だ! 」

「なら大丈夫! 」

 

 人でごった返す通路を上手くすり抜けながら走るマスラ達。

 すると後ろの方で声が聞こえた。


「居たぞ! 」

「やべぇ! 」


 再びダッシュで逃げる二人。

 だが、急に殺気を感じてマスラは横を見る。


ジャリリリリリ!


 先ほどの機人がローラーのついた足で壁を走っていた!


(まずい! )


 機人は右腕を前に出すとその腕から銃口が現れた!


チャキン


 ゆっくりと狙いを定める機人。

 それに気付いた一般人達が叫ぶ。


「キャアァァぁァァァ!!! 」「銃だ! 」「伏せろォォ!!! 」

 

 いきなり現れた銃に悲鳴をあげながらも伏せる一般人の方々。


「伏せろトルパス! 」


 そう言って自身も床に伏せるマスラ。


ドンドンドンドンドン!


 銃口から鉛の弾が飛び出してきて、床や壁に当たる!

 一方、マスラ達はと言えば……


「危なかった! 」

「次来たらヤバいね! 」


 伏せながら叫ぶマスラとトルパス。


機人はそのまま前へと回り込むと、急に体を伏せた!

そして、機人の背中には魔人が乗っていた!


(やばい! )


 魔法の長所として「威力を制御しやすい」という点がある。

 特に魔人の場合は魔道具などの補助を必要としないのでそのまま魔法を撃ちこむことが出来るのだが、その魔法自体は多彩で単純な攻撃魔法から体を弱体化させる攻撃など、様々な攻撃を得意とする。


「こぉぉぉぉぉ……」


 それを見たマスラは呼吸を整えて内なる『気』を高めて、右手で手刀を作って武術の準備をした。

 魔人の手の先から光球が生まれる!


(レイ・レインか! )


 小さなレーザーを無数に撃つことで相手にダメージを与える魔法である。

 一つ一つのレーザー自体は小さなやけどを負う程度だが、多く当たると痛くて動けなくなる。


 早い話が暴徒を押える鎮圧用の魔法で、こう言った場合にうってつけの魔法である。


(ならば! )


 体の中で練った『気』を手に集中させるマスラ。

 マスラの右手が鈍く光り始める。


 手に光球を掲げた魔人が叫んだ!


「レイ・レイン! 」


バシュッ!


 小さなレーザーは広範囲に広がってからマスラ達へと収束して襲い掛かる!

 だが、マスラは慌てずに手刀を振り下ろして叫んだ!


「裂波! 」 


シュバン!


 収束しつつあったレーザーがマスラの手刀によって拡散して霧散する!

 武術による気功で魔人の魔法を霧散させたのだ。


(魔法じゃ勝てねぇけど、こうやって勝つことも出来んだよ! )


 単純な魔法技術ではすぐに負けるのだが、人間は色んな応用をする。

 戦い方が豊富なのでこの世界の主要種族の地位を保っているのだ。


 だが、魔人もさるものでさらに魔法を撃とうと再び光球を手に生み出す!

その時だった!


ぶしゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


 大量の水が機人と魔人に叩きつけられて二人とも流されてしまう!


「何やってんのよ二人とも! 」


 そう言って叫んでいるのは消火用ホースを構えているエミナだった。

 実はこの世界の消火用のホースはこうやって暴れる人を抑えるためにも使われるので、割と自由に使えたりする。


「早く逃げるわよ! 」

 

 そう言ってそのまま逃げるエミナとマスラ達。

 そのまま屋内駐車場エリアへと入って、トラックへと向かうと……


「偽物を渡されるとはねぇ……」


 先ほどの狐耳の巨乳お色気美人がトラックの前に立っていた。


(なにっ!? )


 明らかにこちらの方が早かったはずだが、簡単に回り道されていたのだ。

 

「どうやって……」

「女には色んな秘密があるのよ」


 そう言って狐耳の巨乳美人が刀を抜く。

 東方のアキツ島式の刀で抜き方が様になっている。

 刀を抜いてにやりと笑う美女。


「さっ、本物を渡してちょうだい? さもないと痛い目に遭ってもらうことになるわよ? 」

「あれもコピーだから本物みたいなもんだよ! 」

「残念ながら『原本』の方が欲しいのよ」

「……何で? 本当にただの紙だったぞ? 」

「それは私にもわからないわ。依頼主の要望なの」

「何だよそれ……」


 仕方なく刀を抜くマスラ。

 狐耳の巨乳美人と対峙する。


「私の名は妖狐族の戦士くら……」


カンッ!

カララララララララララ……


 名乗りをあげようとした美人の刀が何故か横へ飛んでいった。

 それどころか見えない何かに引っ張られて高速で動いている。


「えっ? ちょっ! 私の刀ぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 」


 慌てて刀を追いかける狐耳の巨乳美人。

 それを見てトルパスが笑った。


「悠長に名乗りを上げてるからだよ」

「何やったんだ? 」

「あいつの刀に糸を飛ばして発進しかけた車に付けただけ」

「なるほどね」


 苦笑するマスラ。


ぶるるるるるる


 するといつの間にかトラックに乗ったエミナがエンジンを掛けていた。


「早く! 逃げるわよ! 」

「おう! 」


 慌てて二人はトラックに乗って脱出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る