第7話 円環の蛇『ミーブ』
アニャンゴ工房の2階と3階はアニャンゴ親子の家になっており、奥はあまざらしの空き地みたいになっている。
と言っても空き地ではなくて倉庫になっており、いくつかの建屋があり、その内の一つに入る二人。
こちらは元々従業員の寮として使っていたもので、下が簡単な倉庫になっていて、上が大き目の雑居部屋になっており、そこで二人は暮らしている。
建屋の中に入るとまず目に入るのが作業机と椅子で色んな機材の準備に使う。
そして奥には壊れた機械の残骸がある。
一見すると何なのかわからない。
円柱状に鉄板が張られて、中には謎の機械が多数。
不思議なことに『科学』と『魔法』が混在した技術のようで、何がどう作用しているのかわからない。
だが、丸い扇型の不思議な羽根が付いているところで現実世界の私たちなら、『飛行機』とわかる。
そして、彼もまたこれが飛行機と知っている。
「・・・・・・・・・・・」
飛行機を見て何となく黙り込むマスラ。
「早く『飛行機』を完成させたいよね? 」
隣にいるトルパスもぽつりと呟く。
倉庫にある冷蔵庫から冷たいビールを持ち出してプシュリと缶を開ける。
この世界には冷蔵庫もビールも存在している。
ついでに言うと二人とも成人済みでマスラは23歳でトルパスは21歳だ。
トルパスが『一万搾り』を口に付けながら、不思議そうに飛行機を眺めながら言った。
「……いつも思うけどどうやってこんなもの作ったんだろ? 」
「母親が言うには遺跡から発掘した技術を利用して作ったらしい」
「でも、それって科学時代の遺跡? 魔法時代の遺跡? 」
「案外両方かもな」
そう言ってトルパスから受け取った『スーパージュライ』を手に考え込むマスラ。
この世界には色んな技術があるが、それにも理由がある。
最初に混沌があり、そこから唯一神である光の神と闇の神が生れた。
唯一神 虚帆は世界を作り、大いなる大地と、亜神と、天使と人を作った。
その大地に天使たちを住まわせて、アルブム大聖堂より世界を治めた。
だが、闇の神の手引きによって人々が強欲になり、反抗するようになってしまったため、光の神はそれに嘆き、姿を消した。
それに追うように天使たちも姿を消した。
これを楽園時代という。
その後、魔人、機人、修羅の順番で世界を制覇したので、それを『魔法時代』『科学時代』『戦国時代』と呼んだ。
これらの時代は全て『闇の神』の生み出した『妖神』の手引きによって行われたもので、そのたびに『唯一神』が世界を滅ぼした。
だが、度重なる『闇の神』の攻撃に嫌気がさした唯一神は、邪悪な竜神『円環の蛇ミーブ』を用いて大陸を守らせるようにしたのだ。
以来、大陸の周りをぐるりと囲むように巨大な海竜がぐるぐる回っており、その長さは『本当に』大陸をぐるりと一周している。
そしてその周りには常に邪悪な『竜』が生まれており、他の種族は近寄ることも出来ないでいる。
そうして人々は皆、それを恐れてミーブには近寄ろうともしないのだが……
だが、そこを乗り越えようと言う男が遂に現れたのだ。
マスラの父親である。
マスラの父親は遺跡から手に入れた技術を用いて『飛行機』を作り、竜族を出し抜いて『円環の蛇ミーブ』を飛び越えようとしたのだったが……
結果はこの通りで、しばらく経ってから飛行機の残骸が漂着しただけであった。
トルパスが不思議そうにぼやく。
「何で親父さんはミーブを飛び越えようとしたの? 」
「実はそれもわからないんだ……ミーブを乗り越えても混沌の神の瘴気があるだけなのに……」
一説によるとミーブの体は混沌の神の瘴気を防ぐために作ったとも言われている。
世界の成り立ちは各種族で色々言われているが共通するのはミーブの外には『混沌の海』が広がっていることだ。
マスラは
この世界には太古の時代の残骸としてインターネットも携帯端末も存在しており、名前は『マイポン』である。
その端末で何度となく見た映像を開いてみてみる。
巨大な山にしか見えないものが海の先で蠢いている。
そしてその巨大な山の全貌がわかるとそれが巨大な蛇の頭であるとわかる。
その頭の周りに蠅のような物がブンブン飛んでいるが投稿者が叫んでいる。
「信じられねぇ! やっぱり本当にミーブは居るんだ! わかるか? あの頭の辺りで飛んでるのは全部でかい竜なんだぜ! なんて大きさなんだ! 」
つまり、頭だけで何kmもある蛇なのだ。
ちなみにメートルは現実世界と一緒である。
投稿者も流石にそれ以上は近寄ろうとせず、すぐに戻っている。
円環の蛇ミーブ
それは太古よりこの『世界』守る防壁である。
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