第4話 魔獣族は色々便利
とりあえず、二人はユニコーンを木に逆さ吊りした。
ザシュッ! ブシャァァァァ……
捕らえたバサシユニコーンの首に傷を入れて血抜きをするマスラ。
ジタバタ
まだ生きているので雁字搦めになった糸の中で暴れるユニコーン。
こうすると効率よく血が抜けるのだ。
残酷なようだが、これも自然の摂理である。
マスラは着ていた服が血で汚れたので川で洗う。
ここからは血が抜けるまでほっておいて、顔や体を洗う二人。
「ふぅ……」
「スッキリした……」
一休みする二人。
マスラは道具を整備しながら獲物が取られないように見張って、トルパスは昼寝を始める。
すると、道具を整備していたマスラの顔が曇った。
「……また、刃が欠けたか……」
気になって刀身を細かく見てみると、ゆるく曲がっていた。
「……エミナに頼まねーと」
金を溜めているマスラにとっては不要な道具の整備は痛い出費である。
仏頂面になってふと気づくと、ユニコーンからはもう血が出ていない。
完全に屍となっていたのでトルパスを揺り動かして起こすマスラ。
「おい、起きろトルパス。そろそろ行くぞ? 」
「むにゃ……終わった? 」
大きなあくびをして伸びをするトルパス。
着ていた着流しの帯を取って脱ぎ、全裸になってから服を綺麗に畳んで帯で包む。
こうすると、コンパクトに収容して持てるのだ。
トルパスはその着物をマスラに渡し、すっと目を閉じる。
メキメキ
トルパスの体がいびつに膨れ上がり、大きくなっていき……
ズシン
体長が3mもある大蜘蛛になった。
魔獣族は基盤となっている生き物に変身することが出来る。
蜘蛛型なら蜘蛛に、兎なら兎に、植物なら植物に変身できる。
大体は3m前後の大きさに変わることが出来るので、人や荷物を載せて動くことも出来るのだ。
『よいしょっと』
ユニコーンの死体を持ち上げて背中に乗せるトルパス。
ついでにマスラがトルパスの上に乗って言った。
「さあ! 帰ろうぜ! 」
『お前は降りろよ! 重いんだよ! 』
トルパスが本気の声で怒ったのでマスラは降りた。
ガシャガシャ
蜘蛛の足を器用に使って歩くトルパスと道なき道を歩くマスラ。
程なくしてちょっとした要塞に辿り着く。
タルマキア山にある『サルガングス要塞』と呼ばれる場所でこの山に来る者はここまでは車で来て、ここから歩く。
この世界には普通に車が存在するが、道路の敷設にはお金がかかるので山の中までは無い。
原生動物の他に『怪物』と呼ばれる魔法も使う混沌由来の獣も居るので、山の中まで道路を作るには途方もない金がかかるのだ。
この要塞も元をただすと、50年前に起きた『魔王大戦』の際に怪物の侵略に備えて作られた要塞で、今は自由都市オブニーコスが管理する山への玄関と化している。
『よいしょっと』
トルパスがバサシユニコーンを4tトラックに乗せると、マスラが玉掛(たまがけ)して固定する。
ちなみに玉掛とは荷物を輸送する際に縛ることを言うのだが、現実世界ではこれの免許がないと輸送をやってはいけない。
ちなみにこの世界でもライセンスが必要とされ、二人とも免許を取っている。
メキメキ
トルパスが変身を解いて、元通りに着流しを着る。
こういうことがあるから魔獣族のように変身する種族は着流しを着ることが多い。
また、人間と違って裸はエロいという感性も無いのだが、普通に防寒や体の防御の為にも服を着るので、こういった変身をする種族は着流しを着ることが多い。
「ふぅ……」
トルパスが着流しを着るのとマスラが玉掛を終えるのはほぼ同時だった。
二人ともそのままトラックに乗る。
トラックに乗るとマスラはエンジンをかけて、持っていた端末をセットして音楽を流した。
流した曲は『冒険へ行こう!』
昔のアニメの曲だが、この曲がマスラのお気に入りだった。
マスラはふんふんと鼻歌を歌いながら言った。
「さ、帰るか」
「そうだね」
二人はタルマキア山を後にした。
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