第2話

出会ってすぐの頃、2人で話し込んだことがある。



題材は生き方について。


人と会ってすぐの題材としてはあまりに不適だったそれだが、それなりに会話が弾んだ気がする。


自分自身、物事を深く考えることが好きな性分であり、誰かと何かについて議論をすることを好んだ。




その会話はどれほどつづいたのだろうか。


存外早く終わったような、丸一日かけたような、不思議な時間だった。


ただハッキリと覚えているのは自分達はよく似ている二人であり、話すうちに存在意義というものが曖昧になり、核となる部分が壊れていくのを共に感じたことだった。



駆られたことのない不安と焦燥。割れるように痛む脳。凍傷のように冷える手足。



全てを流すべく、強くもない酒を浴びるように呑んで思考を廻した。


痺れ酔い痴れ、何故か溢れ出る泪を通して見た君は、脆く儚かった。


会ってすぐにあんな話をした理由は覚えてない。



その後も色々な話をした。


しかし、深く深層まで話をしたのはあれが最初で最後だった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る