うわさ
お外は危険だから、がっきーのママはがっきーをおうちからお外に出したくないって、こんなキケンな場所にうちの子を置いてはおけないって先生たちに向かってでっかい声で騒いでるの見た。学校の廊下で。みっちゃんとがっきーはママ同士の仲が良かったからそのせいかもしんない。がっきーを見たのはその日が最後で、ママの後ろで恥ずかしそうにしてたのが頭に残ってる。
みっちゃんが入院していなくなって、がっきーが学校に来なくなっちゃったから、けーたくんとばっかり遊ぶようになった。
男の子の遊びってちょっと危険でドキドキする。もくもくしてるショウキャクロを見に行ったり、はいひん回収置き場で秘密基地ごっこしたりした。校舎裏の小道から道路を眺めたりした。
休み時間に秘密の抜け道から抜け出して、一緒にさんさろの死体を見に行ったりもした。そこには首の折れたハトがぐったり寝てて、黒いシミはもうなかったけど、ここに置いといたらかわいそうだから放課後になったら、どこかに埋めてあげようって約束したりした。
学校が終わってから、コンビニでお菓子を買った袋を持ってさんさろのとこに行ったらハトはいなくなってた。せっかく来たのにね。へんなの。大人が片付けちゃったのかな。
「ここに来るとさ、なんかよくわかんねえんだけど、楽しいんだよな。おもしろいものがいっぱい落ちてて、おれ観察するの好きだからかな。みっちゃんもさ、夜に家抜け出すくらいだからきっとなにか見に来てたんだ。じゃなきゃこんななんもないとこ来ないだろ?」
「けーたくん、こわいよ。さんさろのおまじないした子たちが言ってたよ。おまじないした子たちが消えてるって」
「消えてるってなんだよ、事故ったり引っ越したり、板垣んとこみたいに休んだりしてるだけだろ?」
「そうだけど、みんなさんさろの呪いだって言ってたよ」
「梶原はばかだなあ。呪いなんてある訳ないじゃん。板垣だってそのうちまた学校くるよ。板垣の母ちゃんがおかしいのは今に始まったことじゃないしさ」
さんさろのおまじないはクラスだけじゃなく他のクラスやほかの学年まで広がって、学校で知らない子はいないくらい。誰も彼もがうわさした。みっちゃんが事故にあったのも誰かがおまじないしたせいだって聞いたし、友達の友達のおまじないした子はゆくえふめいなんだって。こわいね。こわいね。だけどみんな占いとかおまじないとか不思議なことって大好きだから、みんながみんなこわいと思わないんじゃないかなあ。妖精さんはきっといるんだ。
───おまじないのやりかた───
よなかの3時15分、さんさろのカーブミラーの前で3回呪文を唱える。
「パパ、こども、妖精さんのいうとおり」
「お願い事は■■■■」
お願いごとを言って待っていると、妖精さんが3回ノックしてお返事してくれるんだって。
次にがっきーと会えたのは、がっきーのママのお葬式だった。
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