第8話

『怖い』





送ろうとした言葉が彼から届く。


そう、怖い。




間違っていると思うと。


もしかしたらと思うと。


なにか嘘だったかもしれないと思うと。





『私から言うね。お願いだから引かないで』



手はもう凍傷のようだ。


足先も冷たい。


音がぼやけて聞こえる。


頭がクラクラする。




『多分、その人の誕生日一月二六日だよ』




彼の誕生日。


すぐに返信はきた。



『俺は忘れたよ、君の誕生日。ごめんね』





叩きながら渡り終えた橋。


橋の向こう岸には彼がいた。


未だに手が震えている。


彼も、声が震えていた。





「俺は雨宮里桜、君が好きです。付き合って下さい」







とっくに太陽が沈んだ空。


漆黒。


星が、零れ落ちて彼女の頬を伝い、彼女の足元に染みを作った。







「好きな人の誕生日ぐらい、覚えててよ」





先を行く真奈美と大河が遠くから私達を呼んでいた。

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石橋をたたいて渡らない Ley @Ley0421

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