第6話

 「その人は体育館部活?」


 「それを言うと絞られるからノーコメントで。俺からは、球技部かどうかで」


 「えぇ、しょうがないな、球技部だよ」




帰りの質問は行きよりもずっと慎重だった。


ケータイで当てはまらない人を除外していく。


もう三択だった。


自分を含めてみても。


逆もまた然り。


その前に、一つ聞きたいことがあった。




 「質問しないから、一個聞かせて」


 「いいよ」

 





彼は橋を渡るのだろうか。




「仮にその人が君の事が好きだとして、君はその人に告白する?」




彼は答えず首を横に振った。


静かな否定。


反して彼女の耳に届く音は五月蠅い。


手にべっとり汗をかいている。


躰は暑いのに、手先は氷のように冷たい。


彼女は橋を叩く、叩く、叩く……。


砕け、壊れるほどに。

 





「You are excessively cautious with everything」


直訳は、君はすべてに過度に慎重である。


英語で輝かしい成績をよく残す秀才の彼なら理解できるだろう。





諺にすると、石橋を叩いて渡る。

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