第三十七話 ゴブリン 謝罪
大聖堂の玄関へと来て見ると、悠希・・・いや、もう俺達は転生してお互い違う人生を送っているから、マティルスと呼称した方が良いだろう。
そのマティルスは、何故だか勇者と戦っている様だった。
「ふむ、おかしな事になっておるの」
「そうですね・・・」
手助けした方が良いのか迷ったが、どうやらその必要は無さそうだな。
マティルスは余裕で勇者の攻撃を躱し続けている。
しかし、俺と戦った時以上の速度で動いている様だな。
「なかなか早いの、流石は疾風の息子と言ったところかの」
「それでも私の敵では無いな!」
エルバは腕組みをして、自信満々にそう答えた。
確かに人としてはかなり早いと思うが、俺達魔族からしてみればそこまで早いとは言えないな。
体の作りが違うのだから当然の事ではあるのだが、エルバは負けず嫌いで、この前人に倒された事をかなり意識しての発言なのだろう。
それは、俺も同じだから気持ちはよく分かる。
「ベルよ、マティルスとゆっくり話したいのではないのかの?」
俺がマティルスの戦う姿を目で追っていたのに気が付いたのか、クリスティアーネが気を利かしてくれた様だ。
正直な所、ゆっくりと話をしたかった。
しかし、何を話せばいいのか分からないのも事実だ。
まさか、俺がゴブリンだと話す訳にもいかないだろうし、話したくも無かった。
誰もが、ゴブリンに転生した事を話したい奴などいる筈が無いだろう!
絶対笑われるに違いない!
今は吸血鬼と言う事に成っているが、見た目はゴブリンのままだからな。
「いえ・・・」
「にゃっ!エアリーとはゆっくり話したいニャン!
クリス様が助けたエアリーには、クリス様がいい魔族だと知ってほしいニャン!
俺が断ろうとしていた時に、エリミナが意見を差し込んで来た。
確かに、あのエアリーにはクリスティアーネの事を、魔族だから悪人だとは思ってほしくはないな。
それ以外にも、俺と一緒に助けたマリリアや、教会に居た子供達にも、クリスティアーネの事を悪く思われたくはないと思った。
エリミナは、特に子供達とよく遊んでいたからな、その気持ちが強いのだろう。
ただ、マティルスとエアリーが恋人同士の様だから、エアリーと話をする事になれば、マティルスとも話す事になるのだろう。
仕方が無い、俺の事は吸血鬼だという事にしておけばいい話だな。
「そうだな、エリーの言う通り、誤解は解いておいた方が良いだろう」
「ふむ、われは別に気にはしていないがの・・・」
クリスティアーネはそう言いつつも、嬉しそうな表情を見せている、誰しも知り合いから嫌われたくはないだろうからな。
「クリス様、私は先に戻らせて頂きます」
「うむ、魔王によろしくの」
ソフィーラムは、魔王に報告するために魔王城へと戻って行った。
そうしている内に、マティルスと勇者の戦いは、マティルスの圧倒的勝利で幕を閉じていた。
「こちらに向かって来るようですね、私達と話している所を見られるのは迷惑でしょうから、他の人達から見えない所まで下がりましょう」
「そうだの」
俺達は廊下の奥へと下がり、マティルス達が来るのを待ち構える事にした。
マティルス達がやって来たので、クリスティアーネが話し合いを提案すると、意外にもあっさり承諾してくれた。
魔族とは話したくない!と言われる可能性もそれなりにあったとは思うのだが、提案を受け入れてくれてありがたかった。
それから、クリスティアーネの転移魔法で全員で屋敷へと帰って来た。
マティルスとエアリーにとっては、転移魔法など初めての体験だったのだろう、とても驚いている様子だ。
事前に説明していなかったのが悪いのだが、あの場からすぐ移動したかったため仕方のない事だ。
俺は、戸惑うマティルスとエアリーを屋敷内に案内し、食堂へと連れて行った。
「遠慮せずに椅子に座ってくれ」
「「はい・・・」」
俺が椅子を引いてやると、二人とも遠慮がちに座ってくれた。
正面にはすでに、クリスティアーネやエリミナ達も席に着いて居る。
セレスティーヌとマリーロップの二人は、紅茶とお菓子の準備をしている所だ。
俺もクリスティアーネの隣、マティルスの正面の席に着いた。
セレスティーヌとマリーロップが、全員に紅茶とお菓子を配り終え、席に着いた所で話し合いが始まる事となった。
「今日の紅茶はいい香りがするの」
「はい、落ち付いて話をするのによろしいかと思って、花の香りの紅茶をお入れしました」
「なるほどの、お主たちも遠慮する事は無いからの」
「「はい、頂きます」」
マティルスとエアリーも紅茶のカップを手にして、ゆっくりと紅茶を飲み始めた。
「ふむ、では改めて自己紹介をするかの、われは吸血鬼の姫でクリスティアーネ、魔族の管理者を務めておる。
人の街に行った際には、クリスと名乗っておるからの、今まで通りクリスで構わぬぞ」
クリスティアーネが管理者だと名乗ったが、意外と二人は驚いている様子はなかった。
「やはりそうだったのですね・・・」
「うむ、エアリーを騙すつもりは無かったのだがの、お主を偶然見かけて放置する訳にはいかなかったゆえ、あのような場所へと預けたまでだの」
「その事に関しては私は、いえ、私達はクリス様に感謝しています」
「その感謝はわれにではなく、お前達を育てたパトリシアにしてやるとよいぞ」
「勿論パトリシアお母様にも感謝しております、ですが、私と似たような境遇の子供達を助けてくれたクリス様にも同様の感謝をしています!」
クリスティアーネは感謝していると言われて、非常に嬉しそうな表情を浮かべていた。
「ふむ、ではその感謝はありがたく受け取って置くとするかの」
「はい、クリス様が魔族だと知った今でも、その気持ちに変わりはありません。
ところで、先程の教皇様のお話は本当だったのでしょうか?
その・・・神託が嘘だったと言う・・・いまだに私には信じられなくて・・・」
「本当の事だの、だがそれを証明せよと言われても出来ぬがの、われの言葉を信じてもらうほかないの」
「そうですよね・・・分かりました、クリス様の事を信じたいと思います!」
「よいのか?われは魔族だぞ、こちらの都合がいい様に教皇に言わせたのかも知れぬぞ」
「いいえ、本当にそうなのでしたら、クリス様はそんな言葉をおっしゃらないはずです。
それに、私を助けてくれたクリス様の事を信じたいと思います!」
エアリーは、しっかりとクリスティアーネを見つめたまま、はっきりと答えていた。
「そうかそうか!」
「クリス様、良かったニャン!」
「「「クリス様、よろしかったですね」」」
クリスティアーネとエリミナは、エアリーに信じて貰えた事が非常に嬉しかったようで、二人で手を取り合って喜び合い、他の皆も同様に喜んでいた。
勿論俺も喜ばしく思うが、この席に着いてから俺の事を持って見ているマティルスの視線が気になって仕方が無かった。
このまま何も話さないと言う訳にはいかないのだろうな・・・。
「ふむ、次はベル達の話し合いかの?」
クリスティアーネにそう言われては、話さない訳にはいかないな。
俺は覚悟を決めて、マティルスの目をしっかり見据えて話をする事にした。
「分かりました、私の名はベリアベル、皆からはベルと呼ばれているのでベルで構わない。
マティルスが思っている通り、俺は広樹だ。
街では魔族としての仕事があったため、お前に答えてやる事が出来なかった、すまない」
俺はマティルスに頭を下げて謝罪した。
「兄貴、頭を上げてくれ!兄貴が魔族だと分かった今なら、あの時の対応は仕方なかったと思う!
そんな事より、兄貴がこの世界に居てくれた事が何より嬉しい!」
「そうだな、悠希、俺もまた会えて嬉しいよ!」
俺は頭をあげてマティルスを見ると、目に涙を浮かべて喜んでくれていた。
多分俺の目にも涙が浮かんでいる事だろう。
転生してからこれまで、暇があれば悠希の事は街に出掛ける度に調べていたものだ。
しかし、その悠希が観察対象だったとは思いもよらなかったものだな。
マティルスが観察対象だったため、顔を見せる事は避けて来たから、ここまで悠希に気が付かれなかったと言う、なんとも不幸な事だったな・・・。
「マティーさんのお知り合いなのですか?」
エアリーが、俺とマティルスの会話を不思議に思ったのだろう、マティルスに聞いていた。
「エアリーさんには話していませんでしたね。
俺は他の世界で死んで、記憶を持ったままこの世界に生まれ変わった転生者だったのです。
そこの兄貴、ベルとは前の世界で兄弟だったのです」
「そうだったのですね、以前の勇者が転生者でしたから、マティーさんの方が勇者に相応しかったのかも知れませんね」
「いえ、俺に勇者なんて向いてませんよ、自分の命が大事ですから、他の人のために戦うとかやりたく無いです」
「うふふ、そうですね」
エアリーは、マティルスの事を見て笑っていた。
俺達の方は、俺が転生者だという事は皆に教えているので、特に動揺したりするような事は無い。
「ふむ、ベルの弟だったとはな、なかなか面白いではないかの」
「運命の出会いニャン!」
「ベルさんの弟さんなら、挨拶しておいた方が良いのでしょうか?」
「ベル様、皆を紹介してください」
セレスティーヌとマリーロップが、紹介して欲しいと俺の事をじっと見つめて来た。
エルバは何も言わないが、同じく俺の事を見ているから紹介して欲しいのだろう。
妻が出来た事は、別に隠し立てするような事では無いので構わないだろう。
「悠希、いや、マティルスと言った方が良いだろうな。
俺の家族を紹介する、妻のセレスティーヌ、マリーロップ、エルバだ」
「マティルスさん、セレスティーヌと申します、よろしくお願いします」
「マティルス様、マリーロップです、よろしくお願いします」
「エルバだ、よろしく」
三人の妻はそれぞれマティルスに挨拶をしてくれた。
「えっ、あっ、こ、こちらこそよろしくお願いします」
マティルスは妻を紹介されて、とても驚いている様子だった。
「あ、兄貴、結婚したの!と言うか、三人も妻が居るってどうゆう事!?」
まぁ、普通驚くよな・・・。
前の世界では一夫一妻が普通だったからな・・・。
「そう言う事だ・・・」
「何それ、めちゃくちゃ羨ましいんだけど!
魔族ってモテるんだな・・・」
「いや、魔族がと言う訳では無いのだがな・・・」
正直、今でもゴブリンの俺がどうして三人の妻を娶る事が出来たのだろうかと思う時がある・・・。
三人共、俺にはもったいないくらいのいい女性達だしな。
「ベルさんは優しいですから!」
「ベル様は格好いいです!」
「ベルは強いからな!」
三人は俺の事を褒めてくれている様だが、マリーロップの格好いいと言うのは、どうかと思うぞ・・・。
「マティルスも、そちらの女性は恋人では無いのか?」
「えっ、あっ、いや、まだ?」
俺が質問すると、マティルスはエアリーの表情を見ながら曖昧に答えた。
「えっ、マティーさん!私達は恋人では無かったのですか!?」
エアリーはマティルスの答えに驚き、目に涙を浮かべて問いただしていた。
「いや、その、まだ正式に申し込んでいなかったから・・・」
「でも、一緒に治癒院を開いてくれると言ってくれたじゃないですか!」
「それは確かに言いましたけど・・・」
「ええい、煮え切らん奴だの!男ならはっきりとせぬか!」
マティルスの曖昧な返事に、何故だか、クリスティアーネが怒っていた。
あれか、エアリーは自分が助けた子供だから、親の様な気持ちになっているのだろうか?
「は、はい!えーっと、エアリーさん、僕と結婚してください!」
「はい、よろしくお願いします」
クリスティアーネに催促された勢いで、マティルスはエアリーに結婚を申し込む事となった。
エアリーはマティルスから結婚を申し込まれて、涙を流して喜んでいるな。
マティルスはエアリーの涙を拭ってやると、それから優しく抱きしめていた。
悠希にも婚約者が出来た事は自分の事の様に嬉しく思う。
「うむ、良かったの」
「おめでとニャン!」
「マティルス、おめでとう」
「お二人共、おめでとうございます」
「おめでとうございます」
「おめでとう」
「「ありがとうございます・・・」」
俺達から祝福を受けた二人は、慌てて離れて恥ずかしそうに顔を赤らめていた。
マティルスが恥ずかしさのあまり、話題を露骨に変えて来た。
「ところで、兄貴は魔族に転生したんだよな?
俺達と変わらないように見えるが、どの種族になったのか教えてくれないか?」
出来れば触れて欲しくなかった事なのだが、答えない訳にはいかないだろう・・・。
「吸血鬼だ」
「えっ、吸血鬼って、人を襲って血を吸ったりするあれか?」
「マティルスが想像したような吸血鬼とは違うぞ」
「うむ、われら吸血鬼一族は人を襲ったりせぬぞ」
クリスティアーネは人を襲うと言われて少し不機嫌になり、慌てて訂正をしていた。
「それに、ベルは吸血鬼だが転生した際はゴ・・・」
「クリス様!」
俺は慌ててクリスティアーネの口を塞いだ。
危うく俺がゴブリンだと話されてしまう事だった。
『何をする、これでは話せないでは無いか!』
『クリス様、俺はマティルスと戦っています、ですから、話さないで頂けたら・・・』
「ベルはゴブリンに転生したニャン!」
俺がそこまでクリスティアーネに説明した所で、エリミナが暴露しやがった・・・。
「えっ、兄貴、ゴブリンって・・・あのゴブリンに転生したのか!?」
「・・・」
俺はどの様に誤魔化したらいいか、必死に考えた・・・。
しかし、考えが纏まらないうちに、クリスティアーネの口を塞いでいた手を強引に跳ね除けられてしまった。
「ええい、いい加減離さぬか!
いずれ分かる事だからの、今の内に教えて置いた方がよかろう!」
クリスティアーネにそう言われて、俺も渋々承諾するしかなかった。
「・・・分かりました。
マティルス、驚かないで欲しいが、俺はゴブリンに転生した・・・。
それから色々あって、今はクリス様の眷族として、吸血鬼になっている」
「そ、そうなんだ・・・しかし、吸血鬼になった事で見た目も変わったんだな、兄貴良かったな!」
マティルスから励まされてしまったが、その言葉は非常に辛い物だな・・・。
誤魔化しても、またエリミナから何か言われそうだから、自分から話す事にしよう・・・。
「いや、それがな・・・今は変装していて見た目は変わっている。
それから、マティルスには謝らなければならない。
この前お前の腕を斬り落としたのは俺だ!
すまなかった!」
俺はマティルスに、深々と頭を下げて謝罪した。
「えっ、この前戦ったって、あの黒いゴブリン!
あれが兄貴だったって言うのか!?」
「そうだ・・・」
「でも、あの時剣で刺されて死んだのでは・・・」
俺が頭をあげてマティルスを見ると、驚きと共に、信じられない物を見る様な視線を向けられていた。
「信じられないかも知れないが、俺は吸血鬼となった事で不老不死になっている。
あれくらいでは死なないそうだ・・・」
「不老不死!兄貴、凄いじゃないか!
三人の妻を持っているだけでも羨ましいのに、不老不死だなんて凄すぎるだろ!」
マティルスは不老不死と言う言葉に、大興奮していた。
しかし、見た目がゴブリンだとそんなに良い物では無いと思うのだが・・・。
まぁ、今となっては、俺はゴブリン顔に自信・・・と言うか、気に入ってはいるのだがな。
「今から変装を解いてみせるが、抑えている魔力が解放されるので、驚かないで欲しい。
特にそちらのエアリーさんには、少々きついかも知れないので」
「分かった、エアリーさん大丈夫ですよね?」
「はい・・・」
マティルスがエアリーに確認すると、エアリーは気合を入れるかのように力を込めていた。
「では変装を解除する」
俺は変装を解き、いつものゴブリン顔へと戻って行った。
マティルスとエアリーには、事前に言っていたため、そこまで驚いてはいない様子で良かった。
エアリーも、俺の魔力には耐えられているので安心した。
「本当に黒いゴブリンなんだな・・・」
「驚きです・・・」
「あぁ、吸血鬼となった今でも、見た目は変わる事は無かった」
「と言う事は、他の人達も変装しているって事ですか?」
「そうだ、だが、今全員が変装を解くと、そちらのエアリーさんが耐えられないだろう」
「そうだね・・・」
エアリーは、俺だけだから何とか耐えられているが、他が変装を解くと恐らく耐えられなくて気絶してしまうだろう。
「兄貴、一つだけ聞いても構わないか?」
「なんだ?」
「兄貴はゴブリンに転生してから、人を殺したのか?」
マティルスが、真剣な表情で俺を問いただして来た。
だから俺も真剣に嘘偽りなく答える必要があるだろう。
もしそれで、マティルスに嫌われたり、軽蔑されたりするかもしれないが、嘘をつくよりましだろう。
「あぁ、何人も殺した!
俺はゴブリンだ、冒険者から見るとカモに見えるのだろう?
それに、仲間も沢山殺されたからな、襲って来た者達は全て返り討ちにしてやったよ」
「そうか・・・」
マティルスは俯いてしまった。
やはり、俺が人を殺してしまった事は衝撃的だったのかも知れないな。
生前では人を守る立場の警察官だった訳だ、それが人を殺めたとあっては、マティルスからすれば許されない事なのかもしれない。
そう思ったのだが、マティルスが伏せていた顔をあげると、そこには晴れやかな笑顔があった。
「いや、兄貴は悪く無いな!
俺も冒険者として、魔物を沢山殺して来た!
俺が逆の立場だったとしても、兄貴と同じように人を殺していただろう!
いや、俺がゴブリンに転生していたら、生きていなかったかも知れないな!
俺は兄貴の様に、剣道で鍛えていた訳では無かったからな!」
「そうだな、剣道をしていたお陰で、ゴブリンでも生き抜く事が出来たのは間違いないだろう」
マティルスは笑顔で俺の事を受け入れてくれた様だ。
「うむ、われら魔族は無意味に人を殺めたりはせぬからの、だが、今回の様に攻め込んでると言うのであれば、ベルの弟と言えども容赦はせぬぞ」
「は、はい!もう二度とあのような事はしません!」
「クリス様、私もお約束します!」
クリスティアーネは厳しい事を言ってはいるが、表情は笑顔だ。
二人が魔族の管理地を襲う事が無いという事は、分かっている様だからな。
「うむ、よろしい!
さて、ゆっくり過ごしてゆくがよい、と言いたい所なのだが、残念ながらわれらが魔力を抑えて生活するのは少々厳しいでの。
送って行くでの、許せよ」
「いえ、お気遣いありがとうございます」
「クリス様、またお会いできますよね?」
「うむ、街には遊びに行っておるからの、そのうち会う事もあるであろう」
「はい、またお会いできる日を楽しみにしております」
「マティルス、元気でな」
「兄貴も元気で」
俺達はマティルスとエアリーを送り出すため、外へとやって来た。
「何処に送ればよいかの?」
「そうですね・・・ところで、この場所はどの辺りになるのでしょうか?」
「ふむ、お主の実家の近くだの」
「えっ、そうなんですか!?
そう言えば、確かに実家の近くに管理者の住む場所があるとは教えられていて、決して近づくなと言われていましたが・・・」
「恐らくそこで合っておるぞ」
「それならば、飛行の魔道具がありますので、飛んで帰る事にします」
「ふむ、それならそうしてくれ」
「はい、兄貴、またな」
「マティルス、またな」
「エアリーさん、行きましょう」
「はい、クリス様、さようなら」
マティルスとエアリーは、手を繋いで飛んで行ってしまった。
「ベル、行かせて良かったかの?」
「はい、幸せそうにしていますし、無理に魔族にする必要は無いでしょう」
「それもそうだの」
クリスティアーネに頼めば、マティルスとエアリーを眷族にして一緒に暮らす事も出来ただろう。
しかし、二人で幸せそうにしているのに、俺が一緒に暮らしたいと言うわがままで、無理やり魔族にする訳にはいかないからな。
二度と会えない訳では無いからな、たまに街に出掛けた際に顔を見に行けばいいだけの話だ。
「さて、問題はすべて無事解決しましたので、今日は豪華な夕食にしましょう!」
「そうだの」
「ベル、いっぱい美味しい料理を作ってニャン!」
「分かった、セレスとマリー、手伝ってくれ」
「分かりました、美味しい料理を作りましょう」
「ベル様と一緒に料理が出来るなんて久しぶりで嬉しいです!」
俺はセレスティーヌとマリーロップと共に、厨房に入って夕食の準備に取り掛かる事にした・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます