第十四話 ゴブリン 愛する人の為に

「いいか!掃除は上からやって行って、端も綺麗にするんだぞ!」

「分かったニャン!」

奴隷市場の調査を終えた俺は、屋敷に戻ってからずっとエリミナに掃除の指導をしていた。

何故なら俺は三日後、龍族の所に修行に行く事になっている。

修行は最低でも一年・・・状況次第ではそれ以上いる事になるだろう。

俺がいない間の屋敷の管理は、エリミナの役目だ。

しかし、一年も俺が戻って来ないとなると、俺が来た時の様に埃まみれになっている事が目に見えている・・・。

せっかく俺が綺麗に維持して来たのに、また埃まみれにされてはたまらないから、こうして指導している訳だが・・・。

エリミナの返事はいいのだが、いざやらせて見ると全然掃除が出来ていない・・・。

それで、一から俺がやって見せている訳だが、やる気が無い者にやる気を出させるのはとても難しい・・・。

「エリミナ、俺が修行を終えて戻って来た時、屋敷がこのように綺麗な状態だったら、またパフェを好きなだけ食べさせてやるぞ!」

「ニャッ!?約束ニャン!お掃除頑張るニャン!」

エリミナは喜び、真面目に掃除をしてくれるようになった。

本当は物で釣るような真似をしたく無かったのだが、仕方が無い・・・。

俺がいない間、屋敷を綺麗な状態を維持して貰えるのなら、安い物だろう。

次は、クリスティアーネに洗濯の指導だ。

洗濯もエリミナにやらせないといけないのだが、水を嫌って最初から全くやる気が無いからな。

主のクリスティアーネに、洗濯をやらせるつもりは無かったのだが、クリスティアーネ自ら進んでやってくれると言ってくれた。

それはいいのだが・・・。

「クリス様、その様に力を込め過ぎては、服が破れてしまいます」

「ふむ、なかなか難しい物だの」

クリスティアーネは服を水に付けて洗うたびに、ビリビリと服が破れる音がする・・・。

「この様に優しく服の上から軽く押す程度で構いません」

「そうか」

クリスティアーネは俺がやったようにしてみる物の、やはり服が破れる音が聞こえて来る。

「クリス様、変装して魔力を抑えてやって見てはいかがでしょう?」

「それは良い案だの、早速やって見る事にしよう」

クリスティアーネは変装して、魔力を抑えた状態で洗濯を始めた。

「上手く行きましたね!」

「うむ、最初からこうしておけばよかったの」

「では次に、濡れた服を軽く絞ります」

俺が服を絞って見せ、クリスティアーネも同じ様に服を絞る事が出来た。

「クリス様、よく出来ました!」

「うむ、もう失敗はせぬぞ!」

クリスティアーネは自慢げに胸を張っていた。

「では服を干しますので、外へ行きましょう」

「うむ」

俺とクリスティアーネは屋敷の外に出て、洗濯物を干して行った。

「後は、夕方に取り込んで、綺麗に畳んでしまってください」

「うむ、分かった」

「それと、天気が良い日は、なるべく洗濯してください。

一週間分まとめてとかは、しないで下さいね!」

「分かった・・・」

多分まとめてやるんだろうな・・・毎日少しずつやった方が楽なんだが、それでも一度着てから燃やしてしまうよりかはましだろう。

服屋としてはその方が儲かるだろうが、服を作っている職人さんには申し訳ないから、その様な事はして欲しくない。

本当なら俺が毎日帰って来てやりたいのだが、クリスティアーネにそれは駄目だと言われた。

俺が修行に集中出来ない為だろうと思ったのだが、龍族に家事もまともに出来ないと思われるのが嫌なのだそうだ・・・。

まぁいい機会だし、少しずつ覚えて行って貰う事にするか。

三日間、家事の指導をして、いよいよ龍族の所に修行に行く事となった。

「ではしっかり修行して、クリス様のお役に立てるようになってまいります!」

「うむ、頑張って来るのだぞ」

「行ってらっしゃいニャン!」

俺は一人で空に飛びあがり、北の方角にある龍族が住む地へと向かって行った。

俺は次にこの屋敷に戻って来る時には、しっかりクリスティアーネを守れる存在になる事を心に誓った。


「行ってしまったの・・・」

「寂しくなるニャン!」

「そうだの、ではわれらは、街を見に行くとするかの」

「ご飯が食べたいニャン!」

「うむ、美味い物を食べに行くかの」

われとエリミナは、以前と同じように街へと繰り出して行った。

「こうしてエリーと二人で街を歩くのは久しぶりだの、あーっはっはっはっ!」

「そうだニャン、でも、ベルがいないと面倒ごとが増えそうで嫌ニャン・・・」

「ふむ、そうかもしれんの、あーっはっはっはっ!」

エリーの言う通り、面倒ごとは全てベルが引き受けてくれていたからの、少し注意して行動するとしよう。

エリーと甘い物を食べた後、冒険者ギルドへやって来た。

魔王城に行ってから、われの担当するネイナハル王国の街に来たのは、久しぶりの事だの。

「クリス様!エリー様!お元気でしたか!」

「元気だったぞ、あーっはっはっはっ!」

「元気ニャン!」

冒険者ギルドに入ると、受付の女性からいきなり声を掛けられた、名前は確かマリアーネだったか・・・。

以前はこのような事は無かったのだが、どうかしたのかの?

「このところ、お顔を見ませんでしたので心配しておりました!」

「ふむ、仕事で他所の国に行っておったからの、心配かけたのならすまなかったの、あーっはっはっはっ!」

「いえ、私が心配していただけですので、気にしないでください。

・・・あの~、所でベルさんがいらっしゃらないようですが・・・彼も元気にしているのでしょうか?」

マリアーネが、恐る恐る訪ねて来た。

「うむ、元気にしておるぞ、あーはっはっはっ!」

「そうですか!」

マリアーネは喜びの表情を見せていた。

なるほど、彼女はベリアベルの事を心配しておったのだな。

われは色恋沙汰に疎いので気がつかなんだが、ソフィーラムがベリアベルは女性にモテると言っておったのを思い出した。

どれ、一つ確認してみるかの。

「しかし、ベルは当分の間ここに来る事は無いぞ、あーはっはっはっ!」

「そうなのですか・・・」

マリアーネは、とても落ち込んでしまった。

ふむ、どうやらベリアベルに恋しておるようだの・・・罪作りな奴だ。

しかし、どうしたものかの・・・。

『エリー、彼女はベルに恋しておると思うかの?』

『そう思うニャン、以前私がベルと付き合っているか聞かれた事があるニャン!』

『ふむ、しかし、ベルはゴブリンだ、それを知った彼女は失望するのでは無いかの?』

『それは分からないニャン、クリス様はあの女性を眷族にするつもりかニャ?』

『それは彼女次第かの・・・』

『眷族にして、掃除と洗濯をやって貰うニャン!』

『そうなるのが一番いいがの・・・』

ベルから洗濯の手ほどきを受けたが、毎日やるのは大変だし、面倒だからの・・・。

エリミナも真面目に掃除をやるとは思えぬし、それに、ベルを眷族にしてから時間も経った。

そろそろ、次の眷族を増やしてもいい頃合いだからの。

さて、落ち込ませたままでは可哀そうだからの。

「ベルはここに来る事は出来ないが、言伝をしてやっても良いぞ、あーはっはっはっ!」

「本当ですか!あっ・・・でも・・・」

マリアーネは、一度は喜びの表情を見せたが、真剣な表情へと変わり考え込んでいる様だった。

「・・・あの!、もしよろしければ、私をクリス様の屋敷で働かせては貰えないでしょうか!」

マリアーネの提案に、少し驚いてしまった。

われの方から屋敷で働いて貰える様、頼むつもりだったからの。

「それは構わぬが・・・条件があるぞ。

二度とこの地に戻って来る事は出来ぬし、お主の両親や親しい人達を会う事も出来ぬようになるぞ。

それでも良いのかの?あーはっはっはっ!」

われの言った条件を聞き、真剣な表情で考え込んでいた。

「まぁ、今すぐにという事では無いからの、一週間後、われがまたここを訪れた時に答えを聞かせてくれればよいぞ、あーはっはっはっ!」

「・・・分かりました、ゆっくり考えて結論を出したいと思います」

「ではまたの、あーはっはっはっ!」

「またニャン!」

われとエリミナは受付を離れ、魔石を買い取って貰った後は、また食事をして屋敷に帰って来た。


久々に、ソプデアスの冒険者ギルドに姿を見せたクリス様にお話を聞く事が出来て、彼の安否を確認する事が出来ました。

しかし、彼が私の所に来ることは無いとの事でした。

彼は元々お屋敷で働く執事で、冒険者とは違いますから当然の事ですね。

クリス様が、言伝をしてくれると言って下さった時、これまで書き溜めた手紙を渡して貰おうかと考えましたが、やはりこれは自分の手で渡したいと思います。

そして、以前から考えていた、クリス様のお屋敷で働かせて貰えないかと尋ねた所、快く許可して下さいました。

しかし、貴族様のお屋敷で働くという事は、自由に行動できなくなる上に、両親や親しい人達とも会う事は出来ません。

それに、彼と結婚出来なくても、一生そこで働かなければならないのです。

私は真剣に悩みました・・・。

彼と同じ職場で働ければそれで満足なのかと・・・。

いえ、違いますね、彼と結婚出来て初めて私は満足するのでしょう。

では、彼が再びこの地に現れるのを待って、お手紙を手渡して告白するのが良いのでしょうか?

・・・いつ来るか分からない彼を待ち続けるのには、私の心が持ちそうにありません。

既に、書き溜めた手紙は十通を超えています・・・。

日増しに彼への思いが募っていて、それに私の年齢もそろそろ限界です・・・。

決めました!

クリス様のお屋敷で働かせて貰う事にしましょう!

彼との結婚は勝ち取ればいいのです、いえ、絶対に勝ち取るのです!

そうと決まれば、ギルドマスターに退職願いを言わなければなりませんね。

仕事が終わった後、ギルドマスターの部屋に向かいました。

「マリアーネです」

私は少しドキドキしながらノックをしました。

後輩が辞めて行く時もこんな感じだったのでしょうか?

「入っていいぞ」

「失礼します」

部屋に入ると、ギルドマスターは机の椅子に座り、書類に目を通している所でした。

「ルンドベルさん、私は受付嬢を辞めさせて貰います」

「ようやくか、遅かったがおめでとう」

ギルドマスターは私が結婚するのだと思って祝福してくれました。

殆どの受付嬢が結婚を理由に辞めて行くのですから、ギルドマスターとしては当然の対応なのでしょう。

でもここで、違うと言えば恥をかくのは私ですので、黙って置く事にします。

「ありがとうございます、それで六日後には辞めたいのですが、よろしいでしょうか?」

「急な話だがこちらは構わない、今まで長い間ありがとう」

「こちらこそ、ありがとうございました」

私は深く頭を下げ、部屋を出て行きました。

さて、これから準備で忙しくなります。

冒険者ギルド内にある自室に戻り、部屋のかたずけをしなければなりません。

持っていく物は着替えと、生活に必要な最低限の物だけにしなければならないですね。

それ以外の不用品は、全て売ってしまいましょう。

大したお金にはならないでしょうが、お金はあって困る様な物ではありませんからね。

今まで少しづつ貯めていたお金は、金板二枚と金貨三枚あります。

収納の魔道具を買えば、ここにあるすべての物を持って行く事は可能ですが・・・。

いえ、やはり不要な物は処分しましょう。

お屋敷で働くと決めた以上、不要な物を持って行く訳には行きませんからね。

それと両親に手紙を書かないといけませんね。

内容はどうしましょうか・・・正直に書けば心配されること間違いなしです。

年に一度、休暇を頂いて実家に帰った時も、毎回結婚は何時するのかと、心配しておりましたから。

ここはやはり、お屋敷に努める執事と結婚する事になり、そこで一緒に働く事になったと書いた方がいいですね。

実家には戻れなくなりますが、心配しないで下さいっと、これで良いでしょう!

子供が出来たら見せに行きますって、そんな事は書けないですね・・・。

クリス様は両親と会う事が出来なくなると、おっしゃってましたから。

まぁ私が会いに行かなくても、他の兄弟がいるので大丈夫でしょう。

そう言えば、クリス様のお屋敷はどちらにあるのでしょうか?

聞いた事はありませんし、他の人に話していた事もありませんね。

これから働きに行くお屋敷の場所も、そして、クリス様の正式なお名前も知りません。

クリス様達は、何時も飛行魔法及び、飛行の魔道具で移動されている様で、近くに住んではいないとの事でした。

貴族の御子息、御息女が、本名を伏せて冒険者として活動する事は珍しい事ではありませんので、余り気にしていませんでした。

これでは、両親に送る手紙に、どこのお屋敷でお勤めするのか書く事が出来ません。

それは、勤め出してから再度出せばいい事ですね。

後は・・・メイド服とか用意した方が良いのでしょうか?

自慢ではありませんが、私は他の人より胸が大きいです。

男性にモテる、と言う点においては優位に立てますが、服を選ぶ際には好きな服を自由に選べません。

今着ている服も、サイズを測って貰ってのオーダーメイドです。

貴族の方々は、皆さんオーダーメイドだと思いますが、一般庶民は売ってある服を買って、多少のサイズは自分で手直しして着る物です。

ですが、私の場合それすら出来ないので、高くても作って貰うしか無いのです。

メイド服を自前で用意して行けば、すぐさまお屋敷で働く事が出来るでしょう。

家事は小さい頃よりやって来ましたし、受付嬢として働いている間も、自分で料理を作って食べていましたから問題無く働けます。

でも・・・服も用意出来ない様な家柄だと私が思っていたのかと、勘違いされてしまうかも知れません。

もしかしたらそれが原因で、他の使用人達からいじめられたりするのかも・・・。

それは嫌ですので、メイド服を用意して行くのは無しですね。

さて、今日はこれくらいにして、お風呂に入って夕食を食べて、寝なければなりません。

まだ受付嬢としての仕事はあるのですから。

辞める日まで手を抜かず、しっかりと冒険者達の手助けをする事にしましょう。


私が冒険者ギルドの受付嬢を辞めると決めた日から今日までは、仕事と準備に追われて、あっという間に過ぎて行きました。

昨夜は、冒険者ギルドの職員によって、お別れ会もして頂けましたし、ここで働いて来て本当に良かったと思います。

まだ、彼との結婚は決まった訳ではありませんが、それはこれから努力して行けばいい事です。

冒険者ギルドの椅子に腰かけて、クリス様が来るのを待ちます。

今日は普段着に、大きな鞄を一つ持っている状態なので、冒険者の人達から様々な声を掛けられます。

私が昨日で受付嬢を辞めた事は、ギルドに努めている人達しか知りません。

ですので、声を掛けて来た人達には、非番を貰って実家に帰る所だと言っています。

・・・しかし遅いですね。

冒険者の皆さん達は既に冒険に出掛けられて、いつもの様に静かな時間が訪れています。

受付嬢の人達が、私を憐れむような目で見ています・・・。

「来て貰えなかった?」

「男に逃げられた?」

等と、小声で話すのも静かなので聞こえてきます・・・。

クリス様が一週間後と言っていましたので、今日来てくれるのだと思いますが、時刻までは言っていなかったように思います。

なので、クリス様が来るのをじっと待ちます・・・。

・・・・・・。

・・・。

一時間、二時間と時間が進むにつれ、不安になって来ます。

クリス様とは口約束だけで、書面でやり取りした訳ではありません。

しかし、クリス様が約束を破る様な方には思えませんし、今日一日待っているしかありません。

時刻はお昼になり、受付嬢たちも交代でお昼を食べに行っています。

私もお腹が空いて来ましたが、お昼を食べに行っている時にクリス様が来て、入れ違いになっては困りますので、我慢するしかありません。

全ての受付嬢が食事を終えた事、冒険者ギルドに聞きなれた笑い声が響き渡りました。

「あーはっはっはっはっ!すまんの、寝坊してしまっての」

「ごめんニャン!」

クリス様とエリー様が、私の所に来て謝罪してくださいました。

「いえ、時間を決めておりませんでしたので、問題ありません」

「ふむ、その出で立ちと言う事は、答えは決まっておるのだな?あーはっはっはっ!」

「はい!」

「では行くとするかの、どれ、荷物を預かろう、あーはっはっはっ!」

「あっ、自分で運びますので・・・」

私がそう言う間も無く、クリス様に鞄を取られて収納されてしまった。

クリス様とエリー様は、すぐさま冒険者ギルドから出て行かれた。

私は一度、皆に向けお辞儀をし、クリス様達の後を追いかけました。

「さてマリアーネ、これから屋敷で生活するのに必要な物があれば買いに行こうと思うが、何か欲しい物があるかの?あーはっはっはっ!」

「そうですね・・・もしよろしければメイド服を買って頂けないでしょうか?」

「メイド服なら、屋敷にあるニャン!」

私は以前から気になってたメイド服を買って貰おうと思ったのだが、エリー様にあると言われてしまった・・・。

エリー様も失礼ですが、胸は普通の大きさですね。

身長はエリー様と同じくらいですので、大丈夫だと思いますが、やはり胸の部分が私には着れそうにありません。

「えっとですね・・・私は胸がその・・・入らないかも知れないので・・・」

「ふむ、確かにエリーが着ているメイド服では破れてしまいそうだの、あーはっはっはっ!」

クリス様は、私の胸とエリー様の胸をじっと見比べそう言ってくださいました。

「はい・・・ですので買って頂けると、助かります・・・」

「では、服を買いに行くとするかの、あーはっはっはっ!」

「その前に、ご飯食べたいニャン!」

エリー様がそう言うと、私もお腹が空いているのを思い出し、お腹が「くぅ~」と鳴り恥ずかしくなりました。

「ふむ、では食べに行くとするかの、あーはっはっはっ!」

クリス様の笑い声は私の事を笑っているのでは無く、口癖だと知っているのですが、この場合は素直に笑われたのだと思い、顔が恥ずかしさのあまり火照って来ました。

私は火照った顔を手で隠すようにしながら、二人の後に着いて行きました。

「あそこにするニャン!」

エリー様が向かって行った先は、この街では人気の定食屋さんです。

私もたまに食べたくなった時には、通ってました。

私達は席に着き、迷わず注文をします。

「オムライスをお願いします」

私はいつもの様に、オムライスを注文しました。

卵を使っているので少々お高いのですが、ふわっふわの卵が掛ったオムライスは、一度食べると病みつきになってしまいます。

「われもオムライスを頼む、あーはっはっはっ!」

「私もオムライス大盛りニャン!」

私が注文したのを見て、二人共同じオムライスを注文していました。

オムライスが来るまでの時間、少し話を聞いて見ましょう。

「クリス様、少し質問をしてもよろしいでしょうか?」

「うむ、構わぬぞ、何でも聞くとよい、あーはっはっはっ!」

「では、クリス様のお屋敷に行く訳ですが、私は飛行する事が出来ませんし、魔道具も持っておりませんが、大丈夫でしょうか?」

「それについては心配する事は無いぞ、われがきちんと送って行くからの、あーはっはっはっ!」

「そうですか、では、両親に会えなくなるとおっしゃいましたが、手紙は出しても構わないのでしょうか?」

「ふむ、手紙を出す事は構わんぞ、しかし、二度とマリアーネとして両親に会う事は出来ぬ、考え直すなら今の内だぞ!あーはっはっはっ!」

クリス様は笑っていらっしゃいますが、目は笑っていません。

本当に両親とは、二度と会う事が出来ないと思った方が良いのでしょう。

それでも、彼と結婚するためなら構いません、それに職場も辞めて来ていますし、後戻りは出来ません。

「いえ、クリス様のお屋敷で働かせて頂く気持ちに変わりはありません!」

そこでオムライスが運ばれてきました。

「お待たせしました~」

「では頂くかの、あーはっはっはっ!」

「頂くニャン!」

「頂きます」

クリス様はお行儀よく食事をしているので、これ以上話す事は出来ませんね。

まぁオムライスを味わって食べる事にしましょう。

私達は食事を終え、店を出て高級な服屋に向かい、そこで私のメイド服を注文して貰いました。

このお店には、今まで一度も入った事がありませんでした。

何時も外から可愛らしい服を眺めるだけでした。

ここの服一着で、私が普段作って貰っている服が十着は買えますからね・・・。

クリス様がいつも着ていらっしゃる、可愛らしい服も、エリー様が着ているメイド服もこのお店で買っているとの事でした。

それに彼の執事服もこのお店という事で、おそろいですね!

この後、市場に食材を買いに行きました。

その際の買い物は全て私に任されました。

いつも彼にすべて任せていたので、お二人は分からないとの事でしたから・・・。

私もお屋敷で使う料理の材料とか分かりません・・・いつも自分で作るような材料を買い込んだのですが良かったのでしょうか?

お二人が何も言わなかったので、良い事にしましょう。

私達はソプデアスの街を出て、街道脇へと来ました。

「では、われの屋敷に帰るとするかの、あーはっはっはっ!」

「帰るニャン!」

「はい、よろしくお願いします」

私はお二人に運ばれて空を飛んで行くのでしょうか?

そんな事を考えていると、次の瞬間景色が変わり、大きなお屋敷の前に私はいました・・・。

「えっ?」

私は周囲を見回しました・・・確かにソプデアスを出てすぐの場所にいたのに、今は周囲を気に囲われたお屋敷の前にいます。

「ここが、われの屋敷だ、中に入って話す事にしよう」

「分かりました・・・」

どうして一瞬でここに来たのか聞きたいですが、クリス様とエリー様がお屋敷の中に入って行ったので、私も遅れないよう着いて行きました。

お屋敷の中は、掃除が行き届いていて、とても綺麗な所でした。

クリス様達は食堂まで行き、そこで席に座るように言われました。

エリー様と私が席に着くと、クリス様がお茶を入れてくださいました。

「さて、マリアーネ、この屋敷には今いる三人しかおらぬ、本来であればベルを入れて四人なのだが、今は修行に出て行っておって、一年以上戻っては来ないからの。

それで、マリアーネにはここで家事をやって貰いたいが、構わぬか?」

大きなお屋敷なのに、人数が少ないのには驚きました。

クリス様には家族がいないのでしょうか・・・。

「はい、この様なお屋敷で働いた経験はありませんが、一生懸命頑張りたいと思います!」

私は立ち上がり、お辞儀をしました。

「ふむ、分かった、ではこれからマリアーネを、われの家族と認めよう!」

私は頭を上げ、クリス様の顔を見ると、クリス様の目が赤く光っており、私は体が一切動かなくなってしまいました。

「!?」

声も出す事が出来ません!

そんな私にクリス様が、ゆっくりと歩いて近づいてきます。

「マリアーネ、そこに跪け!」

クリス様の言葉で、今まで動かなかった私の体が勝手に動いて跪きました。

そしてクリス様の顔が私の首筋に近づき、かぷっと噛みつかれました!

一瞬痛みを感じましたが、すぐに痛みは取れ、何だが体が温かくなってきました。

そして心臓の鼓動が、早くなっていきます。

クリス様が私から離れると、今まで動かなかった私の体は自由になりました。

「クリス様、今のは?」

私は何が起こったのか、クリス様に尋ねようと、クリス様を見ると。

クリス様の髪が、金髪から美しい黒髪へと変わっていました。

「えっ!」

更に驚いたのは、エリー様に耳が生えていたのです!

「これでマリアーネは、われの眷族となった」

「仲間ニャン!」

眷族?仲間?意味が分かりません・・・。

もしかして、エリー様は、この大陸の北の地方にいると言われる獣人なのでしょうか?

「改めて自己紹介しよう、われは誇り高き吸血鬼の姫、クリスティアーネだ!」

「えぇぇぇぇぇぇっ、吸血鬼!!」

私はとても驚きました!

吸血鬼と言えば、私の住むネイナハル王国の南にある、魔族の領地の管理者です。

その地はとても狂暴な魔物が住む地を言われ、Bランク以上のパーティでしか入る事は許されていません。

そして、その地に踏み入れた冒険者の半数以上が、無事戻って来る事はありません。

冒険者ギルドでは、Aランク指定に変更しようと何度か検討されていましたが、冒険者達からの反発で実現して来ていませんでした。

冒険者側からすれば、一獲千金を狙える場所として、人気が高いのです。

そして、その地の管理者である吸血鬼は、ほとんど姿を見せた事は無かったのです。

その管理者が、まさかこのような可愛らしい少女で、街に冒険者として来ていたとは誰も思わないでしょう・・・。

「私はエリミナ、エリーと呼んでニャン!」

私が驚いていると、今度はエリー様が自己紹介してくれました。

しかし、あの可愛らしいポーズは何なのでしょう。

思わずギュッと抱きしめたくなりますね。

ゆらゆら揺れている尻尾を、触ってはいけないでしょうか・・・。

いつもニャンニャン言ってたのは、本物の獣人だったからなのですね。

取り合えずそれは置いておいて・・・先程クリス様が眷族となったとおっしゃってましたよね。

もしかして、私も魔族になったのでしょうか・・・。

猫耳が生えていないか、頭を触って確認してみましたが、残念な事に生えてはいませんでした・・・。

しかし、今まで金髪だった私の髪の色が、クリス様と同じ黒髪へと変わっていました。

「クリス様、私も吸血鬼になったのでしょうか?」

「うむ、そうだぞ、だが、元々弱かったからの、強さは今までと変わっておらぬ」

「そうですか・・・」

やはり私は魔族になってしまったようです・・・なるほど、両親に会いには行けませんね。

と言うか、人に見つかっては魔族として殺されてしまいます。

そして、元々戦う力も無かったのですから、吸血鬼となってもそれは変わって無く、冒険者に勝てる要素は全くありません。

あっ、でも、クリス様達は普通に街に来ていましたね、何か方法があるのでしょう。

少し希望が見えてきました。

この歳で死にたくはありませんからね。

「ところで、マリアーネに新しい名前を決めてやらねばならぬの」

「新しい名前ですか?」

「うむ、吸血鬼として生まれ変わったのだ、今までの名前は使えまい」

「そうですね・・・」

マリアーネと言う名前は両親に付けて貰った大事な物ですが、魔族となった今ではこの名前を使う事は出来ませんね。

とは言えすぐにいい名前は思い浮かびませんが・・・。

せっかくですから、強そうな名前にしたいですね!

「ふむ、われが名前を付けてやろうか?」

「いえ、自分で決めたいと思います!」

私が悩んでいると、クリス様が名前を付けてくださると言ってくれましたが、一生付き合う名前ですからね、後悔しないように自分で付けたいです。

そのおかげで、クリス様が残念そうな表情を見せていましたが、こればかりは譲れません。

強い女性と言えば有名な冒険者だった、炎滅のシャルティーヌが思い浮かびましたが、そのまま自分の名前として付けるわけにはいきませんね。

では、ティーヌを頂いて・・・セレス、セレスティーヌ!

良い響きですね、これに決めましょう!

「決めました、今から私はセレスティーヌと名乗ります!」

「ふむ、良い名前だの、セレス、これからよろしく頼む」

「セレス、よろしくニャン!」

「はい、よろしくお願いします」

名前も決まり、私の魔族としての生活が始まるのだなと、改めて思いました。

「セレスには、先ほども言った様にこの屋敷の家事を担当して貰うが、問題無いか?」

「はい、問題ありません」

「ふむ、食事は作っても作らなくても構わないからの、われらは食事をせずとも生きていけるからの」

「そうなのですか?」

「うむ、吸血鬼は周囲から魔力を吸収して生きておるからの、食べなくても問題なく生きていけるぞ」

「便利ですね、ですが、今まで食事を摂っていたので、しばらくの間作っても構いませんか?」

「うむ、われもエリーも食事を摂る事は好きだからの」

「美味しいの作って欲しいニャン!」

「分かりました、美味しく出来るか分かりませんが、頑張って作りたいと思います」

いつお嫁に行っても構わない様に、料理の腕を上げてきたつもりです、美味しい料理を作る事にしましょう。

しかし、ベルさんに作って差し上げられないのは残念な事ですが、一年間の辛抱です。

それまで今まで以上に美味しい料理を作れるように、頑張って行きましょう。

「後はそうだの、魔法の訓練と魔族語を覚えて貰わないといけないの」

「えっ、魔法!私にも使えるようになるのですか!?」

私は子供の事に受けた職業判定で、魔法の才能は無いと出たので、普通に働く道を選んだのですが・・・。

魔法使えるのだとしたら、とても嬉しい事です!

「うむ、セレスは吸血鬼になったのだからの、魔法も使えるし、空を飛ぶ事も可能になったぞ」

「本当ですか!」

魔法だけでは無く、空も飛べるなんて!

私、吸血鬼にして貰って良かったです!

「本当だぞ、だが、しばらく訓練しないと駄目だの・・・それとある程度強くなるまでは、街に連れて行く事は出来ないからの、我慢してくれよ」

「はい、頑張って訓練しますので、よろしくお願いします」

街に行けないのは当然ですね、まだ私は冒険者に襲われて死にたくはありませんので・・・。

「エリー、セレスに屋敷内を案内してやってくれ」

「分かったニャン!」

クリス様から預かって貰っていた荷物を受け取り、エリー様、いえ、家族になったのですからエリミナですね。

エリミナに屋敷内を案内して貰いました。

自分の部屋は、ベルさんの部屋の隣でした。

「部屋の鍵は掛かって無いニャン、だらかすべての部屋の掃除を頼んだニャン!」

「分かりました、それはベルさんの部屋もでしょうか?」

「そうニャン、ベルは綺麗好きニャン、汚していると怒られるニャン!」

ベルさんは綺麗好きと・・・少し、いえ、かなりドキドキしますが、ベルさんの部屋も掃除しておかないといけませんね!

その後、全ての部屋を案内して貰い、屋敷の間取りは把握しました。

四人しか住んでいないので、ほとんど空き部屋でしたが、どの部屋も綺麗に掃除されていて、これを維持するのはかなり大変だなと思いました。

しかし、ベルさんにいい印象を持ってもらうためには、頑張らないといけませんね。

「掃除は明日からでいいニャン、それより、ご飯作って欲しいニャン!」

エリミナにそう言われて、私は食堂へと向かいました。

食堂に置かれている道具は、全て魔導具ですね。

使い方は、冒険者ギルドの寮にもありましたので、問題は無いのですが、私には魔力が無く、他の人に魔力を補充して貰わないと使えません。

しかし、すでに魔力は補充されている様ですね。

助かりました。

冷蔵の魔道具の中を見て、材料を適当に取り出して行き、下ごしらえをしていきます。

調味料は・・・ほとんど揃っていますね。

これなら美味しい料理を作れます!

いつもの様に、ササっと料理を作り上げていきます。

時間をかけて料理を作れるような環境では無かったですからね。

「エリー、もう直ぐ夕食が出来ますので、クリス様を呼んで来てもらえませんか?」

「分かったニャン!」

食堂の席に座っていたエリミナに声を掛けると、勢い良く呼びに行ってくれた。

さて、仕上げをして盛り付ければ完成です。

エリミナに呼ばれて、クリス様も食堂の席についてくださいました。

出来上がった料理をテーブルに並べて、私も席に着きました。

「頂くとするかの」

「頂くニャン!」

「頂きます」

クリス様とエリミナは黙々と食べてくれています。

「あの、お味はいかがでしょうか?」

「うむ、ベルとは違った味付けだが、美味いぞ」

「美味しいニャン!」

「それは良かったです!」

二人とも私の料理を気に入ってくれたようで、安心しました。

不味い~とか、ベルさんの方が美味しかったと言われたら自信を無くしてしまう所でした。

食事を終え、食器を洗っていると、クリス様から声がかかりました。

「今日はセレスが家族になった記念日だからの、一緒に風呂に入るぞ!」

「それはいいですね、着替えを取ってまいりますので、少しお待ちください」

食器を洗い終え、部屋に着替えを取りに行ってお風呂に向かうと、クリス様に引きずられているエリミナがいました。

「風呂は嫌いニャー!」

「風呂には毎日入ると決めたであろう、さっさと来い!」

脱衣所で服を脱いで、三人でお風呂に入ります。

こうして誰かとお風呂に入るのは、実家を出てから初めての事ですね。

私が体を洗っていると、横からクリス様がじっと私の体を見つめて来ています。

「どうすればどんなに大きく育つのかの?」

「さぁ、普通に育って来ましたから、私からは何とも言えませんね・・・」

良く皆からも聞かれるのですが、特別何かしたわけでは無く、気が付いたらここまで大きく育ってしまっていましたからね。

「触っても良いかの?」

「どうぞ」

クリス様は私の胸を、持ち上げる様に触って来ました。

「柔らかいが、重いのぉ・・・」

「はい、結構重くて疲れるんですよ・・・」

「ふむ、大きすぎるのも考え物だの・・・」

「全くです」

私も出来る事なら普通のサイズの胸でよかったのですが、今更どうする事も出来ませんしね。

エリミナはお風呂に入ってからは、観念したのか大人しくしています。

体を洗い終え、三人で湯船につかりました。

「広いお風呂で、気持ちいいです」

「そうであろう!」

「早く上がりたいニャ・・・」

ゆっくり湯船に浸かってからお風呂から上がり、就寝する事となりました。


翌朝、いつもの様に夜明けと共に目覚めました。

「さて、今日から新たな生活の始まりです!」

私はベッドから起きて普段着に着替え、部屋を出てお掃除を始めます。

廊下から階段を掃除して行き、各部屋のお掃除を始めました。

クリス様とエリミナの部屋は、お二人が起きてからですね。

さて、いよいよベルさんのお部屋のお掃除です。

「失礼しまーす」

ベルさんがいない事は分かっているのですが、はやり無言で入るのは失礼ですよね・・・。

ベルさんの部屋はとても綺麗に整頓されていて、几帳面な方だと言うのが分かります。

あまり見てはいけないと思いつつも、じっくりと部屋を観察してしまいました。

机の上には本が立てて並べてあり、その一つを取って読んでみました。

・・・。

「読めません・・・」

魔族語で書かれているのか、私にはまったく理解する事が出来ませんでした。

せっかくベルさんが、どのような本を読んでいるのか知る機会でしたのに残念です。

私は本を元の位置に戻し、部屋の掃除を始めました。

一通り掃除を終えましたが、お二人はまだ起きて来ません。

仕方が無いので、お洗濯をしましょう。

お風呂場に洗濯物が溜まっていましたからね。

腕まくりをして、じゃぶじゃぶと洗濯物を洗って行きます。

ササっと洗い終え、外に干して洗濯は終了です。

そろそろお二人を起こした方がよろしいでしょうか?

少し遅いですが、朝食の準備をしてから起こす事にしましょう。

私が台所に行き、朝食の準備をしていると、エリミナが起きてきました。

「エリー、おはようございます」

「おはようだニャン!」

「すみませんが、クリス様を起こして来て貰えませんか?」

「行って来るニャン!」

エリミナはクリス様を起こしに行ってくれて、しばらくすると二人で食堂に来てくれました。

「クリス様、おはようございます」

「うむ、セレス、おはよう」

三人で朝食を食べ、私はお二人の部屋の掃除に行きました。

それが終わった後、お昼まで魔族語をクリス様より教わりました。

文法にそこまでの違いは無い様なのですが、単語の発音が独特で、かなり苦労をしそうです。

昼食を食べた後は、お庭で魔法の訓練です。

魔法の訓練・・・昨日クリス様から魔法が使えるようになったと聞いた時から、とても楽しみにしてきました。

「まず手本を見せるからの、この様に蝙蝠の翼を出して見てくれ」

クリス様の背中に、黒くて美しい蝙蝠の翼が現れました。

私にも同じように蝙蝠の翼を出せと言われましたが、全く出てくる感じはしません。

「うーん・・・翼よ出でよ!」

言葉に出してみましたが無理でした・・・。

「ふむ、上手く魔力を感じる事が出来ぬようだの」

「はい・・・申し訳ありません」

才能が無い私を恨みました・・・。

「どれ、われが出させてやるから、体の中を通る魔力を感じ取るのだぞ!」

「分かりました、頑張ります」

私は自分の体の中に意識を集中しました。

クリス様が私の体に触れると、そこから何か温かい物が私の中に流れて来て、それが徐々に背中に集まり、それが一気に背中から外に出て行く様な感じがしました。

「翼が出たぞ」

クリス様に言われて、背中を確認すると、私にも蝙蝠の翼が生えていました。

「凄いです!これで飛ぶ事が出来るのですね!」

私は喜び、少し浮いて見ようと思い、翼を羽ばたかせようとしましたが、全く動いてくれませんでした。

「残念だが、その翼で飛ぶのでは無いぞ?」

「そうなのですね・・・」

私の心を読み取ったのか、クリス様が教えて下さいました。

「われら吸血鬼の翼は、魔力を集めるための物で、羽ばたく物では無い・・・背中から魔力が集まって来るのを感じ取れるか?」

クリス様に言われて、再び体に集中すると、先程クリス様から暖かな物が入って来た時の様に、それが背中の翼から流れて来るのが分かります。

「はい、私の中に入って来るものが分かりました!」

「そうか、では今日は、その翼の出し入れが出来る様になる所までやるとするかの」

「はい、頑張ります」

私は翼を消そうと努力しましたが、全く消えてくれません・・・。

「そうでは無い、翼が出た時とは逆に、一気に背中の魔力を体内に入れる様な感じでやるのだ」

「なるほど・・・」

私は言われた通りに、背中にある暖かな魔力を一気に体内にいれる様にしてみました。

「うむ、上手く行ったの!」

「はい、出来ました!」

私の背中から蝙蝠の翼は消えていて、思わず飛び上がって喜びました。

「これから毎日訓練を続けるからの、そうしないとベルが帰って来た時、一緒に街に行く事は出来ぬからの」

「はい、頑張ります」

ベルさんと街に出掛けられるようになれるのなら、どんな厳しい訓練にも耐えて見せます!

こうして私の魔族生活が始まって行く事になりました・・・。

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