最終章を

 しばらくすると頭痛が消え、どうにか母が仕事に行くところの見送りはできた。朝食を口に運びながら考える。今日は二十三日で、もう夏休みもあと二日しかない。新学期が始まればあの頭のおかしい三人組とも顔を合わせなければならない。授業は前にいた学校よりも明らかにレベルが低いし進行が遅い。この程度なら学校に行くよりも断然ハグミットで錬金術を教わるほうがためになる。ここバルツを含む九つの国たちが結んだ『ツーガイ同盟』における共通の法律には優秀な生徒の飛び級を推奨するとある。その条件は覚えていないが、もっと勉学に励めばこの違和感や苦痛は消えるのだろうか。


 箸を握る手が止まる。口の中から米粒が消えたところで我に返り、首を振った。だめだ、どれだけ考えてもあと二日しかないんだ。それよりも前向きに考えよう。もしかすると自分の態度に悪いところがあったのかもしれないのだから、もう一度思い返してみよう。


 お茶碗を流しにおいて水につけ、タンスから取り出した靴下を履く。いつものポシェットを肩にかけようと持ち上げると、中から例の日記がこぼれ落ちた。折角だからと出かける前に新しいページに今朝の出来事を書き留め、パタリと日記を閉じた。


「よし、行こう。」




 日記に書いてあるのはここまでだった。ここから先の話は偉大なる魔術師、トバリのみが知り得ること。しかしこのたび、彼自身が開発し禁術として封じたとある魔術の改良によって、全ての真実を知ることができることになった。成功するかは不確かだがここで筆を止めるわけには行かないのだ。間違いなくこの作品は私の最高傑作となる。さあ行こう、あの日の少年の記憶の中へーーー

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