第15話 図中
入学式の日。私は道に迷っていた。
翼「あれ、こっちかな?」
右往左往してたと思う。初めての場所でどっちに行ったらいいか分からなかった。そんな時。
颯太「あの、大丈夫ですか?」
翼「あ。」
彼が現れた。
颯太「もしかして、道に迷っちゃいました?」
翼「は、はい。」
颯太「……実は僕も道に迷っちゃって。」
翼「あなたも?」
颯太「だから、同じ人がいて助かりました。あの、一緒に行きませんか?」
翼「え?」
颯太「新しいクラス。僕もここは初めてなので。2人で協力すればたどり着くはずです。」
翼「そ、そうですね。それじゃあ……。」
その人はとても優しかった。今思えば、どうしてあんな嘘ついたんだろうって思った。
『実は自分も道に迷っちゃって』
私のために嘘をついて、クラスまで探してくれて。まあ結局同じクラスだって知った時は驚いて、お互い笑っちゃったけど。
颯太「これからもよろしくお願いします。翼さん。」
翼「は、はい。お願いします。」
笑った顔や優しさに、私は多分好きになったんだと思う。
それが私の、恋する乙女の始まり。
○○○
颯太「…………。」
翼「…………。」
颯太「え、終わり?」
翼「うん。終わり」
颯太「今のどこに好きになる要素があった?」
翼「グワシッ」
颯太「ひっ!?」
翼は躊躇いもなく千枚通しを僕の首にあてた。
翼「これでも分からないのかな? 鈍感主人公君は」
颯太「ものすごく分かりやすい説明で助かってますありがとうございました」
翼「なら良し。」
いつもの事ながら、翼は一体どこからその
話を続ける。
颯太「つまり、翼は入学式の日、僕に助けられたから好きになったってことでいいのかな?」
翼「ザッツライト」
颯太「……ねぇ翼」
翼「なにかな?」
颯太「女の子ってそんなにチョロいの?」
翼「うーん。みんながみんな、簡単に好きになるってわけじゃないけど、颯太くんみたいに誰でも優しくしてたら好きになっちゃうよ」
颯太「そう、なんだ」
翼「現に春香ちゃんも颯太くんのこと好きだし。まあ私の方が颯太くんを好きなのは分かりきったことだけどね。」
颯太「…………。」
翼「分かりきったことだけどね!」
颯太「聞こえてるから2度も言わなくていい」
むぅっと膨れる翼を尻目に僕は少し考える。
まさか、葉月先輩も翼や春香と同じように僕のことを……?
いや、無いな。
自問自答の末、この問題は解決された。
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