第14話 理由
翼「おはよう、颯太くん。」
颯太「あ、おはよう、翼。」
朝8時過ぎ。結局僕は、あの後家に帰ってプリント達の続きをしていた。
葉月先輩が急に怒って帰った理由は分からぬまま、けれどどこか違和感を
「はあ」とため息を着いて、再びプリント達の処理に走る。だが、翼はそのため息を見過ごさなかった。
翼「どうしたの、ため息なんかついて。」
少し考えて、訊ねた。
颯太「翼が怒る時って、どんな時?」
翼「え? 怒る時?」
自分でも何を訊いているんだろうと思ったが、翼に聞くのが一番良いだろうと判断した。なんせ、翼は葉月先輩の妹なのだから。
訊かれるがまま、翼は目線を何処と無くやってから答えた。
翼「颯太くんには今、選択肢が二つあります。」
颯太「選択肢?」
翼「真面目に答えて欲しいか、ウケ狙いで答えて欲しいか。」
颯太「それじゃあ、真面目な答えを。」
翼「おっけー。怒る時なんて単純な話だよ。自分に嫌なことが起きた時とか自分が嫌なことされた時だよ。」
颯太「ですよね。」
予想していた解答が返ってきたため、ほんの少しだけがっかりした。まあ妥当な答えなのは本当のことで、逆の立場で聞かれたら同じような答えを言っていただろう。
颯太「ちなみに、ウケ狙いで答えたらどんな答えだったの?」
翼「昨日お姉ちゃんがものすごい顔で帰ってきたから、理由を聞いたら颯太くんのこと話してきて。」
颯太「なるほど。」
翼「お姉ちゃんから聞いた話をまとめると、颯太くんがお姉ちゃんを怒らせたってことで良いんだよね?」
颯太「いや違う。それは違うよ翼さん。」
事実が違っているので弁解することにする。一体何を話したんだあの美少女は。
翼「なるほどね〜。まあお姉ちゃんが怒りたくなる気持ちもわかるな〜。」
颯太「どうして? 僕何か悪いことでもしたかな?」
翼「颯太くんの悪いところなんて星の数ほどあるよ。」
颯太「それってちなみに?」
どんなのがあるのと聞かんばかりに疑問を投げた。
翼「まず鈍感。そして優しすぎ。勉強できる。カッコいい。性格もいい。スポーツもできる。最後に鈍感で優しい。」
颯太「鈍感と優しいが二回出てるけど。」
翼「颯太くんは本当にお人好しなんだよ。いろんな人に何隔てなく接するから、人によっては勘違いする女の子だって出てもおかしくないよ? まあ私もその一人なんだけど。」
颯太「僕翼に何かしたっけ? 全く記憶に無いんだけど。」
翼「これだから鈍感野郎は。」
颯太「や、野郎」
聞きなれない単語を聞いて、つい自分でもつぶやいてしまう。だが本当に、僕が翼に好かれるような事はしていない。そもそも身に覚えがないのだ。
翼は一息嘆息を交えて話した。
翼「分かった。それじゃあ教えてあげる。私がどうして颯太くんのこと好きになったのか。その理由も含めて。……これは先々週の話。」
颯太「なんかドラマとかによく出てきそうな導入部分だね。」
翼「鈍感主人公は黙りなさい」
颯太「は、はい」
これは翼の、恋する乙女の物語。
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