第12話 青春
朝8時・登校中ーー。
ふぁ〜。 結局昨日は眠れなかったな。まあ、あれだけのプリントをやるとなると、相当な時間がかかるのは目に見えていたし。
おかげでいつもより遅い時間に家を出てしまった。まあ、たまにはこういう日もいいだろう。気分転換には丁度いい。それに一限目は数学で小テストがあったし。
それにしても、同じ道を歩いていても、時間が違うとこうも感じ方が違うものなのか。
って、あれは……。
春香「どうしよう。こんな時に限って……。」
颯太「どうしたの、春香さん?」
春香「あ、颯太くん。おはよう。」
颯太「おはよう。それで、何か困ってるようだったけど、何かあったの?」
春香「うん。実は、今日の一限目、数学あるでしょ? その小テストのテスト範囲のプリントを忘れてしまって。」
颯太「プリントを? 春香さんがまた珍しいですね。」
春香「昨日徹夜で中間テストの勉強してて、寝不足で。」
颯太「中間テストの勉強? 一ヶ月先の話じゃないですか。」
春香「うん、そうなんだけどね。でもやっぱり成績は高い方がいいでしょ? 颯太くんもそう思うでしょ?」
颯太「まあ、僕も一位を取ってる身としては成績は良い方がいいですよね。将来のためにも、自分を高めておくのもいいかもしれませんし。」
春香「ふふ。」
颯太「……? 何かおかしいですか?」
春香「ああごめんね。颯太くんの方が成績が上なのに、どうして私なんかに敬語を使うのかなって思って。」
颯太「春香さんも成績は良いですよね?」
春香「でも、颯太くんに比べたら私なんて全然……。」
颯太「何言ってるんですか春香さん、僕なんて全然ですよ。まだまだこれからなんですから。」
春香「ふふ、そうだね。」
颯太「それよりも、早く学校に行きましょ? 少しでも時間があるうちに勉強して満点取れるようにしましょう。」
春香「そうだね。それじゃあ歩きながら勉強しようよ。その方が少しでも時間が取れるから。」
颯太「は、はい。」
うぉおお!? 春香さん、そんな急に密着されると心の準備が……!
春香「どうしたの? もっとこっちに寄ってよ。」
ちょちょ、春香さんそんなにくっつかれると柔らかいものが当たってます!!
春香「…………。」
ふふ。
◇◇◇
教室にてーー。
はぁああぁあ。やばかった。とにかくやばかった。
春香さん、素晴らしいものをお持ちで。もうほんとありがとうございます……!
春香「ん? どうしたの、颯太くん?」
颯太「い、いえ、なんでもありません。」
春香「そっか。それじゃあ一限までの残り時間も一緒に勉強しよ? 颯太くんのおかげである程度内容把握出来たから、後は颯太くんに出そうなところをピックアップしてもらいたいな。」
颯太「りょ、了解しました。それじゃあ早速……。」
翼「…………。」
◇◇◇
一限休み時間ーー。
春香「颯太くん、本当にありがとう!」
颯太「え? あ、もしかしてさっきの数学の小テストのことですか?」
春香「そうそう! 颯太くんのおかげで満点取れたよ。本当にありがとう!」
颯太「いえいえ、僕は別に何も。春香さんの実力ですよ。」
春香「ふふ、颯太くんて優しいんだね。」
颯太「いえ、そんなことは。」
翼「…………。」
◇◇◇
お昼休みーー。
春香「ねぇねぇ颯太くん、この後時間ある?」
颯太「え? まあ、この後は屋上でお昼食べて英単語の暗記をするつもりですけど。」
春香「それじゃあ私と一緒にお昼食べない? 実はさっきの授業で分からないところがあって。」
颯太「分かりました。それなら一緒に行きましょう。」
翼「…………。」
放課後・教室にてーー。
春香「それでね、ここの問題なんだけど。」
颯太「ここはこの公式とこの式を掛け合わせると解けますよ。」
春香「あ、ほんとだ。颯太くんって本当に頭良いんだね。羨ましい。」
颯太「いや、そんな。僕なんてただ勉強してるだけですから。」
春香「ふふ。」
颯太「ん? 何か顔についてますか?」
春香「ううん。颯太くんて本当にいい人だなあって思って。」
颯太「そうでも無いですよ? 勉強しかしないただの高校生です。」
春香「でも私が質問したらちゃんと言葉選んで答えてくれるでしょ? それって簡単に出来ることじゃないよ。」
颯太「春香さんが真剣に勉強に向き合ってるなら、僕も真剣に向き合うって話だけですよ。それに僕は元からこういう性格なので、言ってしまえば素なんです。これが。」
春香「……素、なんだ。」
颯太「はい。これが素ですよ。」
春香「…………。」
颯太「……春香さん? どうしました?」
春香「あの、颯太くん。」
颯太「はい、なんですか?」
春香「一つお願いがあるんだけど、良いかな?」
颯太「はい。なんですか?」
春香「私にも、敬語じゃなくて普通に会話して欲しいの。」
颯太「え?」
春香「ほら、颯太くんて私にいつも敬語でしょ? そういうのは無しで、もっとこう、普通に会話して欲しいって言うか。」
颯太「タメ口OKってことですか?」
春香「そうそう! 私にもそれ、お願いしたいなあって思ってて。ダメかな?」
颯太「分かりました。それじゃあこれからはそうしますね。」
春香「だから、敬語じゃなくて……。」
颯太「ああ、そうか。えっと。」
春香「…………。」
颯太「春香さん。これからもよろしくね。」
春香「…………。」
颯太「あれ? 何かおかしかったですか?」
春香「その、さん付けも無し。」
颯太「え、さん付けも?」
春香「うん。お願い。」
颯太「……春香?」
春香「……もう1回呼んで。」
颯太「…春香。」
春香「……もう1回。」
颯太「春香。」
春香「うん。」
颯太「これからも、よろしく。」
春香「私こそ、よろしくね。颯太くん。」
颯太「はは。」
春香「ふふ。」
颯太「あはは。」
春香「ふふふ、」
翼「ちょっと待ったァァァァァァァァァァァぁぁぁぁぁあああああ!!」
颯太「わぁ、翼さん? いたの?」
翼「いたの? じゃない!! 何このものすごく青春してるって雰囲気!! 羨ましすぎていつ千枚通し投げようか迷ったくらいだよ!!」
春香「せ、千枚通し?」
翼「だいたい春香ちゃん、どうしちゃったの? 颯太くんに恋でもしちゃったの?」
春香「こ、恋!?」
翼「どっからどう見ても恋する乙女してるよ!! 絶対に颯太くんのこと好きだよね!! これで好きじゃなかったら私殴るよ!!」
颯太「な、殴る!? ちなみに誰を?」
翼「そんなの颯太くんに決まってるでしょ?」
颯太「僕ぅう!?」
翼「そんなことより!! 春香ちゃん、私負けないからね!! 春香ちゃんには渡さない!!」
春香「え、えっと、その、私は……。」
翼「そんなに顔を赤らめても無駄だよ!! もう既に春香ちゃんの心は颯太くんに奪われたも同然なの!! もちろん私の方が颯太くんに沢山奪われちゃってるけれども!!」
颯太「…………。」
翼「奪われちゃってるけれども!!」
颯太「2回も言わなくても大丈夫だから。」
翼「うるさぁあぁい!!」
颯太「…………。」
翼「春香ちゃんも私のライバルになったからにはもう容赦しないからね!!」
これから僕、どうなるの?
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