第10話 2位

 颯太「ど、どうして君が僕のことを?」


 翼「どうして?」


 颯太「だって、僕は君に好かれるようなことなんて何一つしていないし、好かれる理由が何一つ思い浮かばないんだけど。」


 翼「私、ずっと見てたよ。」


 颯太「…………。」


 翼「放課後、1人教室に残ってひたすら勉強してる颯太くん、ものすごくかっこよかった。私も勉強しようって思えてきて、それから勉強し始めたんだよ?」


 颯太「…………。」


 翼「席は少し離れてたけど、それでも颯太くんに追いつけるように、私も図書館で勉強したり、本屋で参考書も買ったりして。」


 颯太「…………。」


 翼「そしてテストの順位表が張り出された時、1番上に颯太くんの名前があって、その下に私の名前があってその時はとても嬉しかったなあ。やっと、これで颯太くんに見て貰えるって思ったらとてもドキドキして、その日は寝ようにも寝付けなかったんだよ?」


 颯太「……え?」


 翼「……え?」


 颯太「……翼さんってもしかして、ずっと2位だったり?」


 翼「…………。」


 プツン


 颯太「あ。」


 翼「颯太くん、もしかして知らなかった? 知らなかったなんて言わないよね?」


 颯太「いや、あの。」


 翼「私ずっと2位をキープしてたんだよ? 颯太くんに振り向いて貰えるように、興味を持って貰えるようにひたすら勉強を頑張ったんだよ?」


 颯太「えっとですね、翼さん?」


 翼「この前初めて声掛けた時はとても緊張したけど、颯太くんは気さくに返事してくれて、私とても嬉しかったのに。」


 颯太「……一つ質問してもいいですか?」


 翼「うん? 何かな?」


 颯太「その右手にあるものはなんですか?」


 翼「千枚通しだよ?」


 颯太「いやぁあぁぁああ!!」


 翼「こらー! 逃げるなー!!」


 ◇◇◇


 校舎内・廊下にて。


 颯太「ちょっと翼さんっ、そんな物騒な物投げちゃいけませんっ!!」


 翼「だったらなんで私の事ちゃんと見てくれないのぉおぉおおお!!」


 シュッーー。


 颯太「ってえっ!! 今頬掠めた!!」


 翼「もう少しだったのに。」


 颯太「なんなんだこの姉妹はぁぁぁああ!!」


 その後、偶然居合わせた葉月先輩に助けを懇願したが、完全無視され、結局僕は翼さんの拷問の餌食となりました。


 翼「さあ颯太くん、私のこと受け入れてくれるよね? もちろんイヤとは言わせないけど。」


 颯太「イヤぁあぁあああぁああっ!!!」

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